コンサルタントのコラム

「顧客区分の作り方」 – Jリーグクラブの担当者になったつもりで

こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの田代です。

今日は顧客区分(顧客セグメンテーション)のコトをお話ししたいと思います。

まず【顧客区分】について簡単に説明します。世の中には状況や嗜好、属性が異なるお客様が存在します。なるべく同じお客様の塊(かたまり)を作ってコミュニケーションしたほうが効率もあがる。そんな考え方が顧客区分の前提となります。ダイレクトマーケティングでは比較的基本的な考え方です。お客様とのコミュニケーションを紙媒体、郵送でおこなっていた時代と比べると今はデジタルでコミュニケーションができますので、大変なのはさておき、お客様の塊=顧客区分=顧客セグメンテーションをすることがより一層しやすい環境にあると言えます。

では、顧客区分を考えていきましょう。
顧客セグメンテーションと聞くと「○○が好き」のような嗜好による分類をイメージされる方も多いかもしれませんが、ジェネシスでは多くの場合、顧客の行動プロセスを区分=セグメントするところから考えることが多いです。

さて。マーケティング用語に「アクイジション」と「リテンション」という言葉があります。ご存知の方も多いかと思います。

「アクイジション」:新規顧客の獲得
「リテンション」 :既存顧客の維持・囲い込み

を指す言葉になります。世の中に存在するおそらくすべての商材・サービスにあてはまる概念と言えます。

お客様側の立場に置き換えてみると

新規顧客=これからその商材を買う/使う(つまり、まだ買ってない/使ってない)人
既存顧客=一度はその商材を買った/使ったことがある人

と定義することもできます。

先ほどの図をもう少し細かくしたものが以下の図になります。

アクイジションを【見込客】と【顧客】に分け、リテンションの箇所も【再購入顧客】と【ロイヤル顧客】に分けています。そして枠外に【潜在客】を置きました。

少し話がそれてしまいますが、【潜在客】と【見込客】の差は、個人を特定できる情報を得ているか/いないかの違いになります。漠然とTVやインターネット広告を見て興味をもっただけの人は、個人を特定できていないので【潜在客】と定義され、まだ購入には至っていないがメールアドレスや住所情報などを取得できている方は【見込客】と定義されます。

最近では、インターネットブラウザのcookie情報でネットの閲覧行動を追うことができる時代になりつつあります。そのため、cookie情報は取得しているが、メールアドレス、名前や住所は分からない人も【見込客】と定義しても良いかもしれません。

Jリーグクラブの担当者になったつもりで顧客区分を考える

さて、ようやくここからが本題に入るわけですが、自分はスポーツ観戦が好きなので、スポーツを題材にした例で説明していきましょう。この間はベイスターズの話をしたのでJリーグにしようと思います。

Jリーグクラブの担当者になったつもりで、顧客区分を考えていきたいと思います。

こうした際に自分が大事にしていることは、なるべく自分の経験に立ち戻って考えてみるということです。「あの時自分はどうだったかな」であるとか「そういえばこんなことしたな」という経験ですね。自分が経験したことがない業界の場合は、会社の同僚や友人・知人にヒアリングをするなどして設計をしていくことが多いです。

「アクイジションの顧客区分」を考える

まずは、まったくJリーグを見たことがない人です。【潜在客】にあたる人です。この方たちがネットのニュースなりTVなどのメディアなり、知人との会話の中で興味を持ってゆく流れを作りたいわけです。

インターネットの場合、どうしても自分の興味に近い情報に触れやすい傾向があります。そのためサッカーに興味がない人はなかなかサッカーの情報に触れることがないという循環が生まれてしまうわけです。そのため、広くアプローチする手段を考える必要がありそうです。こうなると1サッカークラブの取り組みというよりは、Jリーグ全体やサッカー協会の仕事かもしれません。

そのため各クラブの規模でできる範囲となると、自クラブのWEBサイトやソーシャルメディアを使った情報発信になります。サッカーの試合結果はもちろん、サッカーそのもの以外にも「楽しそうだ!」という情報をいかに発信できるかがカギとなるでしょう。Jリーグのクラブでも、LINEやinstagram、twitter、Facebookなどのソーシャルメディアに力を入れているように見えます。また、地域密着をうたっているJリーグですから地元地域の商店街などでのイベントなども積極的に行っていますね。「まずは知ってもらい、興味を持ってもらう」段階です。先行しているクラブですと、DMPを使ったネット広告に取り組んでいるクラブも見られます。一度でも自クラブに近いサッカーの情報にアクセスをしたことがある人に対して広告を展開する。こうした取り組みを始めているクラブがもうあるわけです。

ここがうまくいくと、「一度スタジアムで見てみたい」となる(なってくれると良いのですが)わけです。が、初めてのタイミングで「自分で情報を調べてチケットを買う」という行動を取ることができる方は少数派ではないでしょうか。Jリーグをよく見ている知人に話を聞き、チケットの購入を頼んだり、地元や学校・会社でもらった招待券が「行ってみるきっかけ」の中心ではないでしょうか。

そうして「なんとか一度スタジアムにたどり着けた」とします。スポーツ興業は、試合の結果や天候などに大きく左右されてしまうのですが、「楽しい」試合を観戦できたとします。「楽しい」経験ができたとなると次は、「自らチケットを買ってスタジアムにたどり着く」フェーズに移ってもらうことになります。「初めては誘われてだったから、次は自分で行ってみよう。」こう育ってくれることを信じたいところです。ここまでが新規顧客獲得フェーズ=アクイジションフェーズとなります。

多くのクラブを見ると、自らチケットを買って来場した点を新規顧客獲得とせずに、招待券での来場を新規顧客としてしまっているように思えます。自分のお財布で来てもらえるかそうでないかは大きな壁があるように考えますがどうでしょうか。そのためにも招待券を単純にバラまくのではなく、個人情報との引き換えで用意する。そのデータを次に活かすということとセットで考えたいところです。

スポーツを含めた興業の場合、チケット販売店に個人情報が渡ってしまうというのも大きな課題でしょうか。チケットpiaやe+、ローソンチケットのようなチケット販売会社に依存していると、誰がチケットを買っているか分からなくなる=顔が見えなくなるということもあり得ます。このあたりは小売りをされている会社で自社サイトで買ってもらいたいが、楽天やYahoo!、アマゾンなどのモールで多く買われてしまうという課題に似ているような気がします。なるべくなら顧客属性が分かる自社で買っていただけるように誘導をしたいところです。

「リテンションの顧客区分」を考える

「なんとか自分でチケットを買ってスタジアムに足を運んだ」。こうなると、もうファンと呼んでも良いかもしれません。この人たちに次に期待するのは、同じシーズンで2回目の来場を促すことではないでしょうか。「自分で買ったチケットで1度行ってみた。でも負けてしまった。大敗だった。おまけに雨も降ってて寒かった。だから2回目は行かない」そんなこともあるかもしれません。スポーツ興業は試合の結果や天候に左右されます。誰しもが万全な状態で楽しめた!という環境を作ることが難しいわけです。だからこそ、初めて購入した人に次にまた来てもらうことが大事ではないでしょうか。一度は来てくれたわけです。まったく来たことがない人よりは2度目の来場を促しやすいと思います。

無事2度目も来場してくれた。3度目、4度目と足を運ぼうと思われている方には「ファンクラブ会員」を訴求する。もしくは一足飛びに「年間チケット」を訴求する。また、選手と同じユニフォームやグッズを買いたいという欲求が出てくるかもしれません。併せて「グッズ購入」を訴求することができるかもしれません。

ユニフォームを毎年毎年購入してくれる方、限定と名が付くグッズにはものすごく反応する方、色々な方がいらっしゃるわけです。そうしたセグメントもグッズ売上の面では大事でしょうし、晴れて「年間チケット」を購入いただいたのであれば、ファンごころをくすぐるような仕掛けをおこなっても良いのかもしれません。また、就職や結婚、出産など人生の転機で足を運ばなくなってしまった方もいるでしょう。こうした方へのアプローチも考えることができますね。

リテンションフェーズでは、顧客になった方に対してどのようにコミュニケーションしたら継続的にお金を使い続けてもらえるか、好きでいてもらえるかという視点が区分上は大事になることでしょう。

単純化してみると以下のような流れになるわけです。

実際にはもっと細かく顧客区分を分けることができると思います。昨今マーケティングの世界ではやっている「ユーザージャーニー」の解説本でもできるだけ細かくしましょうと書かれているものがあります。

ですが、ここで大事なことが2つあります。1つは、机上で考えた顧客区分を実際の顧客データに照らし合わせた際、ちゃんと区分することができ、その区分に応じた施策を投入することができるかという点です。実際の顧客データで分けることができない、机上のジャーニーでしか区分できないものはその後の施策に繋がらないからです。

Jリーグクラブの例でいえば、誰が初回訪問で誰が2度目の訪問になるのかをきちんとデータで区分できるようになることがまず大事なわけです。実際にお客さんに話を聞くと区分はありそうだが、データ上分類できていないのだとすると、最初に取り組む施策は、どのようにしたらデータ上その区分を作れるかということになります。

2つ目は、作成した顧客区分に応じたコミュニケーションをおこなうことで、次の区分に移ってもらえるようになっているかという点になります。

Jリーグの例ではないですが、資料請求と来店というタッチポイントがあったとすると、資料請求をした方へコミュニケーションすることで来店を促すことになるかということになります。次の区分、次の区分と移動することで購入に繋がるのであれば、ここがビジネス上のゴールと結びつくかは大事な視点となるわけです。

一度に完璧な顧客区分ができなくても構わないと考えています。メールマガジンの配信リストの記事ではダメと書きましたが、顧客区分はそれこそラーメン屋の秘伝のタレのように継ぎ足し継ぎ足していけば良いものではないでしょうか。

ジェネシスではデータを活用した顧客区分を検討する際に便利なシートをご用意しております。
ご興味を持たれた方はぜひダウンロードしてみてください。

成果が出る!データ活用プロジェクトの始め方(PDF)ダウンロードフォーム



執筆者:田代靖和
株式会社ジェネシスコミュニケーション
マーケティングコンサルタント


 

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