相手があってのコミュニケーション!「コミュニケーションコスト」とは何か?
「コミュニケーションコスト」という言葉を耳にしますが、コミュニケーションコストとは一体、どういうことでしょうか? ここでは主にビジネスの現場で、コミュニケーションコストがかからず、誰もが円滑に仕事ができることについて、考えてみましょう!
- 田代 靖和株式会社ジェネシスコミュニケーション シニアプロデューサー
「マーケの強化書」編集長 - 担当T株式会社ジェネシスコミュニケーション
「個としての?」「チームとしての?」コミュニケーション
T
今回は、ビジネス環境におけるコミュニケーションについて考えてみたいです。というのも、マーケの強化書編集部ではここ数カ月の間、時間があれば話し合ってきたトピックがこれでした。
田代
Web上には、本当にたくさんのコミュニケーションコストを扱うコンテンツがあるよね。働く人たち全般にかかわることだし、誰にとってもちょっとは気になることだからかな? 例えば、世代間の違いにフォーカスした切り口とか。
その中でも多くの記事を見ていて気づいたのが、個人同士のコミュニケーションの話と(各種ツールを駆使した)チームや組織としてのコミュニケーションの話が混在しているコンテンツが多いかな、ということ。
T
「コミュニケーション」と聞いて、思い浮かぶことが多岐に渡るので、僕なんかも無意識にごちゃごちゃとなって考えているかもしれません。
田代
「マーケの強化書」ですから、ここでは仕事の現場における「コミュニケーション」を考えてみたいです。仕事の現場となると、まずは個人かチーム(組織)か、といった分け方ができます。そこをきちんと分けて考えた方がいいでしょう。この場では個人のコミュニケーションのあり方に焦点を当てて、改めて考えてみましょう。
T
個人としてのコミュニケーションがあって、その延長線上にチーム内のコミュニケーションを考えていくとよさそうですね。
田代
コミュニケーションコストとは、「自分にとって求めている答えを引き出す負担」と言えば、多くの人たちにも共感されやすいと思う。言い換えるなら、自分が次のアクションに向けて行うための負担。そのために、相手の状況やタイミングにあわせて、相手から必要な情報を引き出せるか? もしくは相手に対して、自分が過不足のない伝え方をすれば、相手が負担なく「次に何をすればいいか」が伝わると理想的です。
究極は個人の能力や個人の裁量?
田代
相手にコミュケーションコストをかけないためには、相手への配慮を尽くすこと。そこで浮かびやすいのが、5W1H(When:いつ、Where:どこで、Who:誰が、What:何を、Why:なぜ+How:どのように)を踏まえた内容を伝えられるか、だったりすると思う。
じゃあ、「相手への配慮」とは何? と考えると、相手との前提条件を踏まえたコミュニケーションとなる。前提条件には、それまでの互いのやり取りの共有事項に加えて、最低限の礼儀、例えば敬語を用いてやり取りする、みたいな基本的なことも含みます。
T
それらができてない状態が、「コミュニケーションコストがかかっている」と。
田代
裏返すと、できていれば解決かと言うと、実際は言い切れなかったりするけどね(笑)。
例えば、前提条件を踏まえて相手にきちんと物事を伝えようとすると、その結果が相手に負荷のかかるコミュニケーションになりかねない。だって、きちんと伝えるためには、テキストの分量が自ずと増えます。増えた分、相手には負担がかかる。
T
前提ありきで、端的すぎてわからない場面がある一方で、長くなっても誤解や誤読のリスクが増えそうで。長くてくどいメールが来たら、ちゃんと読めていないかも(苦笑)。
田代
そう、十分すぎるほどの情報をそのまま伝えるのは問題なわけです。相手とどの状況を共有していて、伝えなくても大丈夫なことを判断して、適切なボリュームに再構成して送ってこそ、相手が気持ちよくメッセージを受け取ってくれるのだし。
つまり、気の利いた解決策が存在するわけではなくて、究極は個人の能力や裁量に委ねることが正解となってしまう。元も子もない言い方だよね。でも最終的には、これまでの経験、もしくは個人の能力も含めたバランス感覚や配慮のあるやり取りができるかどうかが、問われることになる。
T
このテーマでずっとモヤモヤしていた原因が、このあたりにありそうです。
田代
あとは先入観もあるだろうし。「この人はこういう人だな」と、無意識に頭の中が支配されて、その頭で相手とコミュニケーションしたら、先入観に引っ張られる部分は出てくるよ。そこを払拭して最適に意思疎通できるかどうか、だよね。
社内のコミュニケーションから見えてくること
田代
ここからは実務で直面する場面を例に、具体的に考えてみましょう。
例えば、社内の同じチームに属する上長のAさんに伝えなければならないことがあるとします。Aさんは今、席にいません。
伝えたい相手:社内の同じチームの上長(=Aさん)
相手の状況:上長Aさんは出張中(移動中の可能性あり)
連絡内容:明後日予定のクライアントとの打ち合わせについて
緊急度:明日の夕方までに確認してもらえたらOK
T
チーム内でクライアントとの打ち合わせの件が共有されていれば、最低限の要件さえ伝わればOK、という状況でしょう。
田代
今Tさんが言ったような状況把握を、パッとできるか、だと思うんだよね。この状況把握をしないままに勢いで連絡を入れてしまうと、ダラダラ長いメールを受け取ったAさんが困惑するか、怒るか(笑)。
T
こうして考えると、コミュニケーションにおける行き違いポイントというか、分岐点が2段階で設けられていると感じます。連絡する最初の段階と、連絡する瞬間の状況把握の段階との2つに。
田代
この場合、「明後日の打ち合わせ」と言っておけば、おそらく別の打ち合わせを想像しないだろうと。その時点でおおよその状況が共有されていて、細部の説明はいらないとなり、余計な言葉を足さずに要件を伝えればいいと判断していく流れかな。
しかも確認が明日の夕方まででいいなら、少なくとも「今すぐ」どうにかしてほしい状況じゃない。返信が急ぎでなくて大丈夫。ひとまず今日いっぱいは様子を見ておける見通しが立っているので、相手が出張中でリアルタイムにメールを確認できない可能性があっても心配無用になる。
T
ひとまずメールをしておけば、その日は返信を催促する必要がなさそうです。
田代
他にあるとすれば、出先での移動中を見越して、メールのみで端的に伝えるのか、詳細はPDFファイルを用意して添付しておくか。仮に添付ファイルを確認できなくても大丈夫なように、最低限の要件はメールに記す配慮も怠らない……といった感じでしょう。
社外のコミュニケーションから見えてくること
田代
もう1つ、別の例でも考えてみましょう。X社が手がけたクライアントY社のコーポレートサイトについて、問い合わせがあったとします。Y社から、Webサイトの管理者権限の設定変更の相談が入りました。
管理者権限は、X社が実装担当を任せたZ社が管理しているため、X社が別途Z社に権限変更のための依頼をかける必要があったとします。
T
相談が入った時点では、X社の立場は「急いで対応しておきたい!」となりそう。
田代
この時点で、先ほどと同じ項目を書き連ねてみます。
伝えたい相手:実装を担当したZ社(※Y社とZ社は直接つながっていない)
依頼主(Y社)の状況:?(書かれていないが、急いでいるのかも?)
実装会社(Z社)の状況:?
連絡内容:Y社サイトの管理者権限の設定変更依頼
緊急度:?
田代
ここでの「?」は、相談時点で明文化されていないという意味です。でも、やり取り中の依頼のトーンから、期限を伝えられていないけれど急いで進めた方がいいだろうと判断できれば、相談されたX社は無理してでも早めにZ社に変更依頼をかけると思います。
おかげで、翌日には変更対応が完了したので、Y社にそのことを伝えると、Y社から「今月いっぱいまでにやっておいてくれればよかったのに」なんて言われたら?
T
いや〜、最初に言ってほしい(苦笑)。
田代
うん、そうだよね(笑)。無理してやらなかったのに、と。X社からすると、もっと自社の都合やタイミングで負荷なく進められたところ、無駄に焦って動いたことになる。
T
Y社にしても、急いでやってもらったことに気づまりを感じるかもしれませんね。
田代
そうならないためには、Y社がX社への相談段階で明確に期限を伝えるべきだったし、X社も期限の確認をするべきだったとなる。けれど、仕事の現場ではよくありがちじゃない? 流れの中で進めていけば、いちいち確認しないことって。
T
流れを遮りたくないですからね。それもまたコミュニケーションコスト。わざわざ確認するのか、と思われたくないですし。
田代
最初の例もそうですが、最終的には「相手への配慮を忘れないコミュニケーションの実践」に尽きます。普遍的にどのケースにもこれで大丈夫、といった言い方ができない点では、結論らしいことを言えないけれど。ビジネスコミュニケーション上のすれ違いや、うまくいかない感じの根源が、こういう部分にあるのだと思う。
T
気をつけていても、うまくいかないことがありますからね。
田代
ここまでとりとめのない話になってしまったし、答えがない話だと思うけれど、コミュニケーションを行う際はいつでも相手への配慮とバランス感について意識的でいたいです。それらを忘れず意識できていると、うまくいかなかった時のリカバリーが早くなる気がします。