【ジェネシス・マーケター会議】メール開封率・クリック率を向上させる会議
企業が顧客へアプローチするとき、メール配信はとても効果的な手段の1つです。マーケティングオートメーションなどのテクノロジーによってパーソナライズが誰でもできるようになり施策の幅も広がりました。メールを上手に活用することができればコンバージョンに貢献できるはずですが、上手に使いこなしている企業はまだ少ないのが現状でしょう。
そこで今回、メール施策について多くの知見を持つコンサルタントが、メール配信において企業が抱える課題とその解決策について議論しました。メール配信で成果を出すためにはどうすれば良いのか?少しでも参考になれば幸いです。
- 田代靖和株式会社ジェネシスコミュニケーション シニアプロデューサー
- 赤沼悠介株式会社ジェネシスコミュニケーション プロデューサー
開封率を高めるためには「タイトル以外の施策」も重要
- 赤沼
- 今回は、社内でもメール配信についての知見が豊富な田代さんに参加して頂きました。メール施策で課題となることが多いのは、やはり「開封率、クリック率が向上しない」「運用が大変」といったところでしょうか。
- 田代
- そうですね。どちらも重要な課題ですね。まず「開封率」についてですが、一般論として「開封率」を高めるためには「タイトル」が重要と言われています。それは間違いないことで、多くのマーケティング系のサイトでも取り上げられていることかと。なのでここであえて話すことはないよね。ただ、「開封率」を高めるために必要な要素は「タイトル」だけじゃないんだよね。「タイトル」をいくら工夫して試行錯誤しても、そもそもの「リストの質が悪ければ開封率は低い」まま。ここを見落としている、というか、気づいているけど対策をしていない企業が意外と多いなと感じています。
- 赤沼
- 確かに、受信する人と送信されるメールがミスマッチしていれば努力は報われないですね。
- 田代
- 自分の過去の経験上、タイトルは日々考え工夫しているクライアントさんは多いと思います。これはメールマーケティングがはじまって15年くらい経つのかな?その中で徹底されつつあると。ただ、リストを改善する施策はできていないクライアントさんが多いですね。自分は「リストは生もの」だと思ってます。時間が経過すればするほど開封率は下がって当然と考えています。ジブンゴト化して考えてみても、最初の興味関心の高さを何年も何年も継続なんてできないからね。なので、登録して3か月程度しか経過していない人と、5年以上前に登録した人では開封率に違いが出るのは当然だと思うんです。
仮に、リストの数はとても多いクライアントさんがいたとして、中身はほとんどが5年以上前にメールアドレスを入れてくれた人ばかりという状態を考えた際に、「開封率を上げたい」という施策としてやるべきことはタイトルの試行錯誤やメールマガジンの内容の吟味ではなく、「メールアドレスの整理」や「新規メールアドレスの獲得」をすべきかなと。タイトルやメールの中身を工夫してもリストが古ければ開封率が上がるとは思えません。
また、ある程度メールの開封率が良いクライアントさんがいたとして、今の状態(=高い開封率)を保ちたいとするのであれば、常に新しいアドレスを獲得し続ける施策も考える必要がありますね。新規アドレスの獲得が減れば、しばらく時間が経過することで開封率は下がり始めますから。リストに常に新しいメールアドレスを取り込むという循環を継続できれば開封率を継続できる可能性は高いはずです。
- 赤沼
- しかし、何年もかけて集めたリストへメール送信しないのはもったいないような気がするのですが。もしかすると、再度検討することになったという人もいるかもしれませんよね?
- 田代
- 確かにそうだね。過去の経験でいくと配信数をKPIとしてしまっているクライアントさんもとても多く、「リストから削除する?とんでもない!」と思ってしまっているのも事実かな。このあたりはクライアントさんとの良好な関係を築かなければ難しいのかもしれないですが、注力すべきなは可能性の高い人であるはずで、メール配信という作業時間を可能性の低い人たちに使うのか、可能性の高い人たちに使うのかで考えればおのずと答えは出ているのですが、丹念に納得してもらう必要がありますね。もちろん、古いリストの方にメールを送るなということではないんです。メールを送るにしても違いを出すべきだということです。
例えば、自社製品の平均的な検討期間が3ヶ月間とすると開封する可能性が高いのは3か月以内の人でしょう。こういう人には、積極的にメール送信すべきだと思いますし、コンテンツも時間とコストをかけて取り組むべきです。一方、5年以上前の人についても3カ月以内の人と同じ期待を持って良いのかということですね。配信コスト的には送りっぱなしにしても大した差が出ないかもしれません。ただ、コンテンツは3か月以内の人と同じ時間とコストをかける必要はないでしょうし、別の製品サービスや企業イメージを向上させるようなコンテンツの方が良いかもしれません。紹介してもらうように施策を打った方が効果的だったということもあり得るかもしれませんよね。
- 赤沼
- なるほど。自社製品の検討期間や登録時期・サイトへのアクセス状況・メール開封状況をもとに検討中かどうかを見極めてから、配信する頻度とコンテンツを変えていけば効率的ですね。単純に全配信したメールの開封率を見ているよりも賢いやり方だと思います。
- 田代
- メール配信は誰でもいいから開封してもらえれば良いわけではありません。目的はコンバージョンが向上することですから、コンバージョンする可能性の高い人に開封してもらうことを目指すべきです。それはクリックにしても同じです。コンバージョンする可能性の高い人にクリックしてもらうことを意識して施策を考えることがとても重要なんです。開封率100%、クリック率も100%であってもコンバージョンが「0」なら意味がないですよね?
- 赤沼
- メール配信で効果を得るのはとても難しいですね。開封率は、メール配信の複数ある中間指標の1つですが、開封率が上がったと言ってもすぐに喜べないわけですね。そのあとのクリック率やコンバージョン率に変化がないのであれば、コンバージョンしない人に開封してもらっただけということですから。一つの指標ばかり気にするのではなくその前後というかメール配信全体の流れが向上しているかを見るべきだということですね。
- 田代
- そうですね。なので、メール配信をしてない会社さんの方が少なくなっているこのご時世、一度メール配信について配信リストの視点でチェックしても良いのかなと思います。配信リストには有効期限があるわけで、一定期間が過ぎれば反応は減っていきます。だからフレッシュなうちに出来る限りのことをやっておくべきだし、常にフレッシュなアドレスを獲得し続けるべきなんです。その施策が開封率・クリック率に影響するのかなと。
運用上の課題を解決する
- 赤沼
- 次に、運用面で課題を持っている会社はありますか?具体的にどんな課題があってどう解決すべきなんでしょうか?
- 田代
- 一言で言うと、PDCAのDoの業務に追われ、新しいことに挑戦できないという状況のクライアントさんが多いかな。口で言うのは簡単なのだけど意外と新しいことをやり続けるのは難しいということですね。また、メール配信を例に挙げると、担当者が変わってしまうケースもあるわけで、何年も継続されている案件で担当者も何人も変わっていたりすると、立ち上げた人の熱意は失われてしまって、黙々とメール配信という作業をしてしまっているなんてこともあります。大きな企業であれば数年でジョブローテーションがあったり、中小企業でも転職などで途中から関わる人もいますし。
あとは、最近はテクノロジーが進化したおかけで、パーソナライズだったり色んなことが出来るようになって、コンテンツもこれまでよりもたくさん作らなければならない。テストや確認業務も増えるし複雑になってとても大変です。結果、決められた日時までにやるべきことをやるだけで精一杯で大切な分析やプランニングといった部分がなおざりにされてしまうんです。最初は、うちみたいな会社が入って成果を出すことが出来ても、それが続かなくなるなんてケースも良く聞きますね。
- 赤沼
- そんな企業はどうすればいいのでしょうか?ジョブローテーションも転職も避けることは事実上難しいのではないですか?
- 田代
- 確かに難しいね。理想論になってしまうかもだけれど、配信担当者や配信担当部署以外にもフィードバックをしてくれる人や会社を入れて、「新しい気づき」を得られる仕組みを運用に組み込むなんてことができると良いのだけれど。MAも日々進化していますから、日々の業務をしながら最新機能を学び使いこなすのは難しいです。それに新しい事例や手法を蓄えることもできないでしょう。しかし、そのような新しい情報がなければ施策の向上に結びつきにくくなります。以前と変わらない考え方と知識で運用を続けても成長のスピードは期待できませんから。
もう一つは、外部業者を上手く使うことですね。自社の環境によってはどうしても社内ではできないことや外部に委託したほうが良いことが必ずあります。その外部業者と協力して知識と経験を蓄えていくことだと思います。 - 赤沼
- 私自身もジェネシスのメール配信を担当しているので、やることが多くてとても分析や企画まで回らないのはよく分かります。最近は残業に対して厳しい会社も多くなったので、さらに大変になったかもしれません。でも、そんな環境でもメールの担当者は、配信ミスは許されませんよね。それは本当に大変だと思います。環境が厳しくなってもミスなくこれまで以上の成果を期待されるわけですから。私もメール配信のミスをしたことがありますが、本当に精神的につらいです。。。そんな時間的制約の中で高度なツールを使い複雑な施策を実施しなければならないメール配信担当者を当社としても引き続きサポートしていきたいですね。
- 田代
- そうですね。まずは相談していただければ、どんな風にお役に立てるかご提案できると思います。
- 赤沼
- 本日はありがとうございました。
- 田代
- ありがとうございました。