「活用できるデータがない?」質の高いデータをマーケティング施策によって獲得できる。
マーケティング施策を行う前に、現状のデータ分析を行われている人も多いと思います。しかし、「分析するデータがない「「分析するほど意味のあるデータがない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか?そこで、今回は、2017年12月に開催されたMarketing Special DAYの事例をご紹介したいと思います。『顧客から意味のあるデータを得る』というプロセスは、上記のようなお悩みを持ったマーケティング担当者にとってとても役に立つ事例になると思います。
講演のテーマは、『ダイレクトマーケティングにおける効果的なターゲティング手法とは?「効率的なセグメンテーションのためのキラークエスチョン」』です。講演者のディー・キュービック株式会社齊藤氏は現在、データ分析力とコンタクトセンター運用力を駆使し、年間180社以上のCRM活動を支援されているそうです。今回の講演では、コールセンターにおける単品販売(基礎化粧品)の通販において、アンケートをターゲティングするための有益な材料にするまでの、独自手法のお話でした。
属性によるターゲティングは、販売増につながらない!
性別・年代別などのデモグラフィックデータを分析しても大きな差がないとお悩みのマーケティング担当者も多いのではないでしょうか?それなのに製品開発時に「この製品のターゲットは○○代の女性だ!」「この製品は●●代の女性にうけるはずだ!」と決めつけて、マーケティングを行っていないでしょうか?
齊藤氏も「属性でターゲットを絞り、定期購入の依頼の電話をかけてみたことがあるそうですが、興味のない人ばかりで効率が悪い」と言われています。デモグラフィックデータは「自社の商品をどんな人が買っているのか?」という疑問には答えてくれますが、『今後も継続して自社の商品を買ってくれる人はどんな人か?』というマーケターの疑問には答えてくれないようです。
テストコールの結果データから購入の可能性を予測する。
属性別にセグメントしても良い結果が得られないのなら、どうすればよいのでしょうか?その手法として、教科書的にはRFM分析(購入時期、購入頻度、購入額)を思いつくかもしれません。しかしながら、RFM分析は過去のデータから現時点での優良顧客・非優良顧客等の分類をするだけであり、将来的に購入してくれるかどうかまでは分かりません。
そこで、齊藤氏は将来購入してくれそうな顧客を見つけ出すために、これまで自社で利用していた「デモグラフィックデータ」「購買データ」「初回購入データ」の3つのデータに加えて、「テストコールの結果データ」も購入しそうな顧客を見つけるためのデータとして活用したのです。
どういうことか説明します。まず、一部のお客様に対して「定期購入しませんか?」という質問を電話で実施します。そして、この質問に「Yes」と回答した人にどんな特徴があるのかを分析したのです。つまり、「Yes」と回答した人の特徴(属性データだけでなく、流入経路、購入理由、広告で魅了に感じた表現等様々なデータ)を、その他すべてのお客様に当てはめることで、どの人が今後も購入してくれそうなのかをあぶり出したのです。
このように、既に持っているデータだけを活用するだけではなく、お客様とコミュニケーションすることで得られたお客様の反応データを活用することで、購入してくれそうな人を見つけ出したのです。
『お客様が購入した本当の理由』が精度の高いターゲティングを実現する。
最近はデータ分析手法も様々で、AIが分析してくれたりと、マーケター自身が計算式を知らなくても分析結果を手にすることが出来ます。しかしながら、お金をかけた高度な分析手法を選ぶことが、本当に効果的なマーケティングにつながるのでしょうか?
齊藤氏は、ターゲティングの重要性を語った上で、「精度の高いターゲティングを行う上で最も重要なのは、高度な分析手法ではなく、『お客様が購入した本当の理由』である」と言っています。
『お客様が購入した本当の理由』は、顕在化したものだけでなく、お客様自身も気づかない、小さな気持ちの変化や、潜在意識の中に追いやられたコンプレックスなども含みます。その商品を購入した理由を探し当てるために、斎藤氏は下記のような施策を実施しています。
「(一部の)定期購入しているお客様」と「(一部の)1回のみ購入したお客様」それぞれに対して電話調査を実施。電話調査では、トークスクリプトは用意したものの、お客様の回答内容によって「なぜそう思ったのか?」など、理由を深堀するような質問を追加しました。
そして、お客様が回答したテキストを分類・分析(テキストマイニング)することにより、「定期購入者」にはどのような共通の言葉が頻出するのか?一方、「1回のみ購入者」にはどのような言葉が多いのか?「定期購入者」と「1回のみ購入者」の違いは何かを分析していったのです。
この電話調査の結果、「定期購入者」は広告表現の「ハリ・ツヤ」というキーワードに反応して購入に至っていたのに対して、「1回のみ購入者」は、特別価格だったから購入しているということが分かったそうです。
こうした施策を実施することで、今後も購入してくれそうな人と購入してくれそうもない人を区分することが出来るようになるのはもちろん、今後の販促施策にもにも活用することが可能だと考えられます。
斎藤氏によると、このデータを活用することで最終的に購入率18%UP、単価辺りコストが約1000円減となったそうです。
データを待つのではなく、質の高いデータを取りに行く姿勢が大切
目の前にあるデータに捉われるのではなく、どのようなコミュニケーション施策を打ったら、質の高いデータを獲得することができるのか?質の高い分析を行うのには、どのようなデータが必要で、そのデータを入手する為にはどんなコミュニケーションが必要なのか?
データ分析者には留まらない、マーケターとしてのリサーチスキルも問われる部分だと思います。今、手元にないデータもマーケティング施策によって作っていくことができる!そして、そのデータを次の施策に役立てることができる!そのように考えてみることで、実施できることは増えていくのではないでしょうか?