Webサイトにおける適切なゴール設定とは?KGIやKPIを設定するコツ【後編】
ビジネス上の目的への達成度合いを測る指標、KGI(重要目標達成指標)やKPI(重要業績評価指標)について、どうすれば適切に設定できるでしょうか?
前回はそのための基礎知識を解説しました。今回は、ユーザー行動を集客→(Webサイトへの)アクセス→検討→コンバージョンというルートで考えた場合、それぞれの行動にあわせた詳細を見ていきます。
- 田代 靖和株式会社ジェネシスコミュニケーション シニアプロデューサー
「マーケの強化書」編集長
「認知・啓発」フェーズの注意点
対象となるWebサイト(BtoBサイトを前提としましょう)に対して、適切なKGIやKPIの設定について考えてきました。前回は、Webサイトにおける役割を分解した際、最初のフェーズにあたる認知や啓発の段階までを説明しました。
田代:今回は、「認知・啓発」フェーズの注意点から話を始めます。前回、「一度のWebサイト訪問ではコンバージョンにつながらない」というお話をさせていただきました。古くから言われてきたことですが、例えば、保険や自動車、高級ブランド商品などの高関与商材、B2Bの商材がそれに当たります。
一方で、スマートフォン時代の今、「まとめサイト」などの充実により、BtoCに限らずBtoBでも、商材やサービスに対して一覧で比較できるサイトが存在しているため、企業サイトに訪れる前に、ある程度の絞り込みができてしまいます。
ーメーカーや商品/サービスごとに横断して比較しやすく、比較の面では企業サイトよりも使いやすいため、ご覧になっているユーザーも多いと思います。
田代:取り扱う商材について、まとめサイトだけでどこまで深く検討できるのかという問題はあります。ただ「まとめサイト」で多くのユーザーが絞り込んでいる現実があり、中には企業サイトには初回一度だけの来訪(アクション)でコンバージョンに至る、というユーザーも少なくありません。
ー何度も来訪しない「現実」があるわけですね。
田代:「一度の来訪で完結するユーザー」「Webサイト内を回遊するユーザー」という一見矛盾する視点を踏まえてWebサイトを作る必要があります。自社サイトはどちらのユーザーが多いのかといった状況に合わせてサイトへの分析や評価をしてほしいです。
「どこで何をしているのか」に着目
ー次に「興味喚起」のフェーズで考えておきたいことをうかがいます。
田代:最初の「認知・啓発」では「誰がどこから来たのか」に着目しましたが、「興味喚起」では「どこで何をしているのか」に着目すると、考えやすいです。先ほどの話では、「Webサイト内を回遊するユーザー」がどこで何を見ているのかということになります。
ゴールを意識して、特に2つのポイントを踏まえましょう。
1 (興味喚起のために用意した)各コンテンツが見られているのかどうか?
2 コンバージョン(CV)に寄与しているかどうか?
現状のWebサイトが100ページあるなら、どのページがどれほど読まれているのか? ランディングページの長い1ページなら、どの箇所がどれくらい読まれているのかを確認します。
ーまさしく「どこで何をしているのか」という視点ですね。
田代:サービスサイトであれば、サービス内容や価格、事例などで構成されたページのうち、どのコンテンツがどれくらい読まれているか? わかりやすい指標(PVやUU、セッション数など)だけでなく、特によく読まれているページの滞在率や直帰率、読了率(スクロール率)などを細かく見ていきます。
後は、肝煎りのページに関するデータをしっかりと見てほしいです。会社が予算を投じて作ったコンテンツが、仮説に基づいた結果が出ているかを確認します。えてして、そうしたページは見てくれていないことがあります。よく読まれているページと肝煎りのページが一致するとは限りません。
この点は、冒頭の話ともリンクします。自社ページへ辿りつく前にユーザーがまとめサイトなどで必要な情報を把握していれば、自社が力を入れて用意した機能や価格などに関するコンテンツに訪問する必要がありません。
ーコンテンツ(トップページ以外のページ)で、見るべきことは何でしょうか?
田代:コンテンツは、コンバージョンに寄与しているかが重要です。どの入口からどのコンテンツを経由してコンバージョンに至ることが多いのか、少ないのかを確認します。加えて、前回も伝えた通りコンバージョンから逆引きする視点で、コンバージョンから入口へと辿った時、中身のコンテンツがどれほど実際に読まれているのか? 読まれずに通り越されているのか? どの入口からだと読まれやすいかなど、すべての項目を見ようとせず、目的に沿った要所を重点的に見ます。
それがランディングページであれば、長いページ構造の中でどのコンテンツが読まれ、いつまで滞在してくれていて、ゴールに向かってくれているかを確認すればいいのです。
ー他にも、やっておきたいことは何でしょうか?
田代:並行して、「興味喚起」フェーズに向けたコンテンツが、マーケティングファネルのどこに該当するかを確認しておきたいというのもありますね。これは直接的に数値の検証にはつながりませんが、投入した施策の確認の際に有効です。どの段階を目指したコンテンツが興味を持たれていて、そのコンテンツが想定した役割通りに機能しているのか or していないのかを確認します。
歩留まり率に要注意
ー「コンバージョン」(以下CV)のフェーズでは、何に気をつけるべきでしょうか?
田代:ここは端的に「ちゃんとCVしていますか?」という視点です。特に「歩留まり」を確認します。
例えば、「フォーム」ページ→「確認」ページ→「完了」ページと用意されている場合です。大事なのは、「フォーム」ページまで来たユーザーが「何人完了したか?」です。100人フォームの入口に来てくださっても、完了が10人=10%だと正直厳しいわけです。
歩留まり率を増減させる理由はいくつかありますが、フォームの項目数の要素は大きな理由の1つです。目的がメールアドレスさえ取得できればOKならば、名前とメールアドレスだけの項目を用意しておけばいいはずです。他に、郵便番号から住所、電話番号、細かな属性に関する質問が加われば加わるほど、ユーザーからすれば煩わしい項目が増えるだけです。
ー完了率が悪い(歩留まり率が低い)場合は「フォームの項目数が多くないか?」を見直したいですね。
田代:最近の傾向を言うと、トップページにフォームを用意しているケースが増えています。「大事そう」「必要そう」と感じるユーザーは、Webサイト内で回遊せずとも申し込んでくれるという設計です。名前とメールアドレスだけのフォームを用意しておけば、ユーザーからしても申し込みやすいでしょう。
フォームで気をつけたいのが「電話番号」です。不要なら真っ先に外したい項目です。入力必須だと、「営業電話がかかってくるかも」とユーザーは登録を敬遠したくなります。もちろん、SFA(営業支援システム)を導入しているなど、理由があるならそのままでも構いませんが、理由がなければ外します。数字的な裏付けは出せないのですが、LINEなどメッセージアプリでのコミュニケーションが増えていることに伴い、営業電話への拒否反応といいますか、拒絶反応はかなり大きくなっています。コールセンターでのアウトバウンドなどをしていないのであれば、初期段階のコンバージョンでは外してしまってもよいかもしれません。
浅いコンバージョンと深いコンバージョン
田代:もう1つ考えておきたいのは、CVが1つでなく、複数のCV、例えば「資料のダウンロード(DL)」「資料請求」「問い合わせ」「利用の申し込み」を用意しているケース合です。
「マーケの強化書」を運営するジェネシスコミュニケーションのことを話すと、メールマガジンの登録やピンポイントのメール配信希望、資料DLなどは「浅いコンバージョン」とし、問い合わせや申し込みを「深いコンバージョン」と設定しています。「浅いCV」と「深いCV」とは同じCVとして扱いません。「とりあえず資料申し込みをしよう」というユーザーと、「申し込みを決めた!」というユーザーには、明らかな違いがあるからです。
田代:複数のCVポイントがある場合、事前の意図に沿った数字が得られているかを確認しましょう。資料DL→資料請求→問い合わせ→申し込みという順番でユーザーの関心が深くなると考えるなら、左から右に行くにつれて数字が下がるはず。
例えば、100件の資料DLがあっても、問い合わせ段階で5件を切る数字に落ち込んでいれば問題でしょう。その場合、4つも用意していたCVポイントを3つに減らしたり、各フェーズの導線や中身を改善して数字の質を高め、それぞれのCVポイントが機能するようにします。
ーありがとうございます。前回の内容も踏まえながら、みなさんを取り巻く事業で適切なKGIやKPIを設定するヒントにしてほしいです。