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AIのマーケティング活用の「可能性と限界」& AI検討のチェック項目

AIをマーケティングでも活用できないか?そう考えているマーケティング担当者も多いのではないでしょうか?「Hot顧客の発見」「退会しそうな会員の早期発見」など、AIを使って色んな事が出来そうだ!そんなことを考えていると思います。私自身もAIをマーケティングにどう活用することが出来るのか日々勉強しています。

しかし、情報を集めていくとAIの可能性ばかりでなく、限界もよく見えてくるのもまた事実です。私自身情報を収集していて一番大きな収穫は、AIを活用するためには一定の条件を満たす必要があることが分かったことです。どんな企業でも無条件にAIを活用できるのではなく、AI導入のスタートラインにも立てない企業のほうが多いと推測されるのです。そこで、今回はAIの可能性と限界について記述した上で、自社でAIを活用することが出来るのか簡単なチェック項目を用意しました。あくまで簡易的なものなので条件に当てはまらなければ絶対にAI導入は無理だとは言いませんが、参考になるかと思います。

目次

AIをマーケティングで活用した場合の可能性は非常に高い

AIのマーケティング活用の可能性について記述する前に、現時点でどのようなデータをマーケティングに活用しているのかについて述べたいと思います。ほとんどの企業は、次の4つの種類のデータを軸としてマーケティング活動をしていると思います。

  1. 属性データ(年代、性別、住所など)
  2. 意向データ(アンケート回答の内容など)
  3. 行動データ(購入履歴、購入頻度、サイトアクセス履歴など)
  4. 上記3の情報を統計分析したデータ(主成分分析、クラスター分析など)

一般的には(1)(2)(3)のデータを用いてマーケティングに活用する企業が多いでしょう。なかには、社内に統計分析専門の社員がいるような一部の企業においては(4)の統計分析をしたデータをもとにマーケティングをしている企業もあると思います。

基本的に『AIをマーケティングに活用するとは』これらのデータからパターンや特徴を見出すことを指します。今、MAやCRMなどのツールにAIを搭載することで、優良見込顧客やHot顧客を見つけ出すことに活用しようとする動きがあります。これは、MAやCRMに入力された属性データ・意向データ・行動データなどをAIが分析することで優良見込顧客・Hot顧客を見つけ出そうとする試みです。AIによって、これまで人間では出来なかった「大量のデータの中から『成約まで至る顧客』のパターンや特徴を見つけ出すこと」が可能になるかもしれないのです。

MAやCRMによって顧客や見込顧客のデータを蓄積する企業はとても増えました。しかし、それら大量のデータから優良見込顧客やHot顧客を発見するまでには至っていない企業がほとんどではないでしょうか?管理できるようにはなったが、そこから新しい価値を生み出せるようにはそう簡単にはできないのが現実ではないでしょうか。現時点では、優秀なマーケティング担当者とデータ分析者がないければ、それら蓄積したデータから新しい価値を生み出すことは難しいのです。しかし、AIによって優秀なマーケティング担当者がいなくても可能になるかもしれないというのは、マーケターにとっては非常に興味深くそして危機感すら感じてしまいます。

AIのマーケティング活用の限界

しかし、そのような「夢物語」にももちろん限界があります。何でも出来るわけではありません。

AIは大きく分けて「ディープラーニング」と「機械学習」に分けることが出来ます。簡単に説明すると、「機械学習」は、教師データを必要とし、その教師データをもとに学習するAIです。一方、「ディープラーニング」とは、教師データを必要とせず、AI自身で教師データを作成し学習していくAIです。

MAやCRMベンダーがどちらのAIを開発しているのかは現時点で詳細は知りませんが、現実的に考えると実装されるのは「機械学習」のAIであると考えられます。というのも、「ディープラーニング」は、高い精度を出すために「ビックデータ」と呼ばれる大量なデータが必要とされるからです。最低でも5,000万レコードはないとディープラーニングは高い精度を出すことが出来ないと言われています。これはつまり、ほとんどの企業では「ディープラーニング」を活用することが出来ないということになります。特にBtoB企業などのデータが多くても数十万しかないような企業においては、マーケティングで「ディープラーニング」を活用するシーンは考えにくいのが現状です。

そのため、現実的に考えると「機械学習」をマーケティングに活用することになります。しかし、「機械学習」は前述のように「教師データ」が必要となります。分かりやすく言えば、自社の優良見込顧客やHot顧客に共通するパターンや特徴量をあらかじめ知っていなければならないということです。この点についても「機械学習」を活用する上での高いハードルになることが考えられます。優良見込顧客やHot顧客を見分けるデータが既にあるのならこんなにも苦労していません。また、さらにハードルになると考えられるのが教師データとなるデータを既存のデータベースから抽出し、高い精度を出すためのチューニングをする人材が必要となること。また、そもそも精度の高いデータ(優良見込顧客のデータが豊富にあるデータベース)がなければ実現するることは難しいということです。

少し分かりにくくなってきたかもしれませんので、事例を使って説明します。

AI活用の事例から

例えば、大手メガネチェーンのJINSでは、下記のようにAIを活用しています。

約200タイプのメガネを数百人が装着した画像、計6万点をクラウド上に用意し、国内300超の店舗に所属するJINSスタッフ約3000人が「似合う」「似合わない」と評価。日頃店頭で”お似合い”のメガネを薦めているスタッフの目利き力を結集させた膨大な画像評価データを、コンピューターが機械学習することで、JINSオリジナルAIによるレコメンドサービスが完成した。

(出典:日経デジタルマーケティング2017年4月号)

これは、JINSスタッフの「似合う」「似合わない」という評価を「教師データ」として機械学習させた例です。社内に教師データになるものがない場合などは、このようなやり方によってAIを導入することが可能になるはずです。

また、新生銀行では、AIを活用して顧客ごとに商品別購入予測確率(誰が購入しそうか)と最適のチャネルを算出し、それに基づいてマーケティングを進める取り組みを行っています。

社内で保有する約300万人の顧客データから30万人の過去5年分のデータを抽出し、AIに学習させた。利用したデータは、生年月日や職業といった個人属性、Webサイト上の行動履歴、口座の入出金やATMの利用時刻などだ。(中略)これらのデータを分析して独自アルゴリズムを考案し、AIモデルを開発した。

(出典:日経デジタルマーケティング2017年4月号)

おそらくですが、この抽出した30万人分のデータが新生銀行が狙う「優良見込顧客」だと思われます。そのデータを教師データとして機械学習させることでAIモデルを構築したものと考えられます。

このように、AIと言っても条件によって活用できる出来ないが明確になります。「ディープラーニング」は一般的な企業で活用するシーンはほとんどないと思われます。現時点でも「ディープラーニング」を活用できるのは天気予報などの膨大なデータを処理するような場合に限られます。また「機械学習」でも、社内に精度の高いデータとそのデータを抽出しチューニングする専門人材が必要になるためそう簡単に導入できるものではありません。

【AIを活用する際の課題まとめ】
●答えを導いてくれる「ディープラーニング」は大量なデータが必要(最低でも5,000万レコード)。
●「機械学習」には教師データが必要になる。
●教師データがあってもデータの精度が低ければ、AIの精度は低くなる。
●データのチューニングする専門知識を有した人材が必要になる。

AIを検討する前のチェック項目

自社でAIは活用出来るのか?簡易的にチェックできるフローを用意しましたので、確認してみてください。

AIを導入し、成果を出すためには一定の条件が整っている必要があります。そして、その条件が整ってもAIの投資分のリターンを期待することが出来るのか?を現実的に検討することも大切です。改善することはするけど、投資分を回収するまでには至らないようであればAIは導入すること意味はありません。

この記事がAI導入の参考になれば幸いです。

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株式会社ジェネシスコミュニケーション

ジェネシスのマーケティングプロフェッショナルが編集を担当。独自の視点で厳選した実践的ナレッジをお届けいたします。

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