DX推進の一歩目にふさわしい業務【法務編】「デジタル・トランスフォーメーション入門」#8
自社で実際にDXを推進するにあたって、前回は人事部門を取り上げました。今回は法務部門について、データやテクノロジーの活用によってどのように業務効率化が図れるのかを考えます。
広まり出しているリーガルテック
法務部門のDXを考える場合、契約書の作成やレビューなど非定型業務が多いです。専門知識に基づいて、文章を読んで理解し業務を遂行することがメインのため、テクノロジーのハードルが高く導入が進んできませんでした。
しかし近年はAI、特に自然言語処理分野における技術革新によって「リーガルテック」と呼ばれる法務領域における問題について、テクノロジーの活用によって解決するサービスが広まっています。
リーガルテックは、訴訟社会と言われるアメリカで始まり、現在は大きなマーケットを形成しています。日本でも、近年リーガルテック企業が登場し、電子署名や契約書のレビュー、フォレンジック(法的証拠を見つけるための鑑識調査や情報解析に伴う技術や手順)など、さまざまなサービスが提供され始めています。
リーガルテックその①_「契約書レビュー」
具体的に、法務部門でリーガルテックがもっとも力を発揮しているのが「契約書レビュー」です。
契約内容に間違いがないか、自社に不利な契約になっていないかなどの契約締結前レビューは非常に重要です。例えば、何百ページにもおよぶ契約書の中にある何万もの大量の契約条項について、過去の事例と比較し、さらに違いを見つける場合を想像しましょう。人間が行えば、膨大な時間を費やすことになりますし、人力ですから見落としやミスの可能性が怖いです。
そこでAI契約書レビューサービスを使うと、条文の抜け漏れや修正提案を行ったり、過去に作成した契約書から必要な条文を検索してレコメンドしたり、レビューを誰がいつどのように行ったかを可視化することなどが可能です。
リーガルテックその②_「電子契約」
新型コロナウイルスの流行もあって、大きな注目を集めているのが「電子契約」です。
契約時には、紙の契約書に署名と押印をして、相手方からも署名・押印した契約書を戻してもらい、紙の原本を双方で保管するのが一般的です。こうした紙の書面での契約で要する手間を削減できるのが電子契約です。電子契約は、PDFファイルなどで契約書面を作成し、電子署名や電子サインによって締結するので、効率化やコスト削減につながります。
保管を考えても、紙の契約書だと必要に応じて保管しているキャビネットなどから取り出し、探す手間がかかります。電子契約であれば、データ管理ですので必要な時に素早くアクセスしやすく、原本の紛失や盗難といったリスクを減らすことも期待できます。
DXの恩恵が伝わりやすいリーガルテック
法務部門の所管領域が増大する中でも、リーガルテックを活用することで効率的な業務の遂行が可能です。法務のようなバックオフィス業務はテクノロジーとの親和性が高く、業務効率化とともに新しい付加価値を生み出せるので、DX推進の第1歩に適した領域と考えていいでしょう。
次回は・・・
経理部門におけるDXについて解説します。
野澤 智朝(のざわ ともお)
現役マーケター。「ニテンイチリュウ」運営者。デジタルクリエイティブ、デジタルマーケティングに関するメディアで連載を担当してきたほか、各種記事の寄稿多数。