ジェネシスの仕事の進め方を大解剖!お客様に自社の位置づけを変えてもらう【vol.02】
「マーケの強化書」を運営するジェネシスコミュニケーション(以下ジェネシス)が、どのような仕事の進め方をするのか? 編集部メンバーが対談しながら明らかにしていく連載の第3弾です。本シリーズでは、課題の深さや課題への取り組み方に対して、段階別で異なるアプローチについて解説。今回はUSPやユーザー目線のポジショニングについて説明しています。
- 田代 靖和株式会社ジェネシスコミュニケーション シニアプロデューサー
「マーケの強化書」編集長 - 佐藤 直美株式会社ジェネシスコミュニケーション ディレクター
「マーケの強化書」編集スタッフ
STPの次にUSP、「独自の売り」を考える
前回、過去に会社案内などのコンテンツをハンドアウトで用意してほしい、という案件について、段階別のアプローチの一歩目がSTP(セグメント/ターゲット/ポジショニング)と説明がありました。
成熟した市場ほど競合他社も似た特徴を持っているものです。STPを整理しただけで競合他社との違いを打ち出せるのは難しく、もう一押し、二押しと踏み込んだ検討が必要です。
そこで次の段階が、USP(ユニーク・セリング・プロポジション)、「独自の売り」を考えるフェーズという話でした。
他社にはない自社の強みが言えると、大きな武器ですよね。わかりやすい例では、稲葉製作所の「イナバ物置」。「やっぱりイナバ、100人乗っても大丈夫!」のテレビCMは、30歳代後半以降の世代には特に見覚え、聞き覚えがあると思います。「丈夫な物置」という「独自の売り」を提案しています。丈夫という売りが伝わっていますが、価格はわかりませんよね?
いくらかはわからないけれど、丈夫という強みに気持ちが引かれて、価格が気にならない面もあります。
この場合、人の耳に残るコピーにもなっている点も優れている点ですね。イナバ物置の例では、サービスにおける機能的価値(主にサービス項目)と情緒的価値(そのサービスを受けることで得やすいプラスの感情)を、わかりやすい表現でお客様に伝えています。
ユーザー目線で「ポジショニング」を考える
USPだけで戦えるケースもなかなかなくなっているのが現実です。市場が成熟するほど、各社が提供するサービス内容は横並びになりがちだからです。そうなると、もっと踏み込んだ対策が必要です。
それが次の段階にあたる「ポジショニング」ですね。企業目線、市場におけるポジショニングではなくて、お客様・ユーザー目線でのポジショニングを考えるというフェーズでしょうか。
突出した価値=USPで訴求するのが難しいなら、「お客様の頭の中にでき上がった基準や軸を変えてもらおう」ということです。
自社のサービスや商品について、「他社とは異なる位置づけが何か」を探すわけです。サービスや商品に対して、ユーザー目線でニーズを汲み取っていき、競合他社がポジショニングできていない位置づけを見出します。
整理すべき3項目を挙げます。
- 顧客ニーズの把握(存在)
- お客様のアタマの中での位置づけ
- 競合との相対的違い
お客様・ユーザーに「BやC(他社)でなくA(自社)を選んだほうが、何となく良さそう」というイメージを持ってもらいやすくなるポイントを見つけるわけです。
ユーザー目線のポジショニングを実現した例
例えば、イギリスメーカーのdyson(ダイソン)の掃除機が、国内で強く訴求し出した当初は、使い続けても吸引力が落ちない(耐久性+強力な吸引力)という軸を明示して、今に至っています。軽くて掃除がしやすい、収納がしやすいといった、従来の掃除機の訴求軸を変えて、「吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機。」というコピーとともに、ユーザーに掃除機を選ぶ基準を変えることに成功しました。
新機軸がきちんと伝わると、サービスや商品の異なる特徴の不利な点が気にならなくなるのかもしれませんね。
静かで手軽に掃除したいというユーザーには響きづらくても、新機軸によって(お客様側の基準や軸を変えたことで)、静かで手軽に掃除ができても「汚れが落ちなければ意味がない」ということが訴求できたわけですね。
実際に「ポジショニング」を検討した場合のステップについて紹介しようと思います。4つのステップを踏みながら、企画化を進めました。
(1)自社・競合他社の機能的価値・情緒的価値を把握する
(2)顧客ニーズを汲み取る
(3)ポジショニングの軸を検討する
(4)自社・競合他社をマッピングする
(1)は、以前の対談で取り上げたブランド作りの工程と通じていますね。
ブランド作りでは表現やコピーへと収斂させていきますが、ポジショニングは顧客ニーズを汲み取るための手順として、きちんと向き合うフェーズです。
どう顧客ニーズを汲み取るべきか?
ポジショニングの検討で欠かせない肝が②(顧客ニーズを汲み取る)の段階です。理想は、お客様へのヒアリングですが、このプロジェクトではサービスの特性やスケジュールの都合で、直接お客様へのヒアリングが難しかったので、当時はお客様と接点を持つ営業部隊の社員、サービス開拓を担当する社員にヒアリングを行いました。
社内のみなさんへのヒアリングだと、どうしても企業目線にならないでしょうか?
そうですね。それを回避するために、エースの営業パーソンへ我々をお客様だと思って営業してもらうといったヒアリングの方法を取りました。
エースと呼ばれるような営業のみなさんは、自分流の資料を持っていたりします。企業側で用意する資料があっても使いません。自分たちが現場でお客様と折衝し、実際にお客様の気持ちが動いた場面や、感情が揺さぶれたと確認できた言葉などの知見(=ユーザー目線を汲み取った要素)を、自前の資料に反映。そうした資料の内容や折衝時に用いる言葉をヒアリングして、そこからユーザーのニーズにつながるエッセンスを抽出します。
(2)が、(3)や(4)の根拠、裏づけになるわけですね。
そういうことです。ここまでできると、他社との差別化について光明が見えてきます。
次回は・・・
ユーザー側でできあがったサービス・商品への評価軸を変えるために、必要な方法について解説します。サービスや商品に関する資料、ヒアリングに基づく分析などから、有力な訴求軸を見つけるためのアプローチ(ポジショニングマップ)を説明します。