未経験からスタート!マーケティングツール運用のために知っておきたいポイント
今まで触ったことがないマーケティングツールの担当となり、運用に悩んでいる人はいらっしゃいませんか? 未経験のツールを前にして、新任担当者はどう状況を乗り越えるといいでしょうか? ここでは、「マーケの強化書」を運営するジェネシスコミュニケーション(以下ジェネシス)でマーケティングツール全般の運用担当者と対話しながら、新任担当者が円滑にモチベーション高くツールを運用できることについて、考えていきます。
- 田代 靖和株式会社ジェネシスコミュニケーション シニアプロデューサー
「マーケの強化書」編集長 - 担当T株式会社ジェネシスコミュニケーション
「マーケの強化書」編集部 マーケティングツール担当者
未経験からのスタート
田代
Tさんは、HubSpot(ハブスポット)をはじめマーケティングツール全般をジェネシスで運用してもらっている1人です。担当になった当初、Tさんはツールの経験があまりなかった記憶があるのですが。
T
はい。マーケティングツールは未経験でした。今ではマーケティングオートメーション(以下、MA)だとHubSpotを中心に、それなりに運用できていると思います。
田代
今日はそんなTさんがどのようにツールについてのスキルを習得していったかを聞きたいです。まずは、Tさんがどういったキャリアを築いていたかを教えてください。
T
ずっとマーケティングリサーチャーの領域で業務に携わっていましたので、いわゆるマーケティングツールに触れる機会はありませんでした。
マーケティングについては知っていることも多かったと思いますが、リサーチの範囲に閉じていた印象を今では持ちますね。マーケティング実務になるとリサーチ以外はほとんど詳しくありませんでした。
田代
なるほど。ツールについてはジェネシスに来て、1からというより0から学んでいったわけですね。
T
そうです。自分自身について遡ると、理数系の出身で、パソコンやOfficeソフトの操作に関して特に問題を感じたことがなく、2000年代のキャリア初期はHTMLでアンケートを作ったりしていました。
その際の経験もあって、未知のデジタルツールにはあまり抵抗感を持たないほうです。「どういうツール? とりあえず触って試してみよう!」と思うタイプかもしれません。
以前のリサーチャー時代でも、集計から解析ツールまで会社にあるソフトウェアはいろいろと試していましたよ。
田代
じゃあ、適性はあったのかもしれませんね。とはいえ、実際にマーケティングツールに触れ出すと戸惑うことも多かったのではないでしょうか。次から具体的にうかがっていきます。
1人じゃない! コミュニティ活用のススメ
田代
ツールを触り出した頃は、最初に何をしましたか?
T
ジェネシスに入って、最初に触ったツールはMAツールのSATORI(サトリ)でした。「クリエティブや原稿はちゃんと用意するから、TさんはSATORIで組んでくれればいいから」と言われて。
リサーチャー時代から、「もっとマーケティングの上流のことを知りたい」とは思っていました。2014〜2015年頃ですが、国内企業でもMAツールを導入される企業が増え始め、マーケティングを理解し推進していくにはMAも使いこなせるべきでは?と感じていました。
それからどんどんMAにハマっていったのをよく覚えています(笑)。
田代
前向きでいいですね。ところで、最初につまずいたというか困ったことはなんでしょう? 操作とか? 概念とかどっちだろう。
T
社内にMAのマニュアルがなかったので、何をどうすればいいのかが本当によくわからなかったです。ひたすら触りながら覚えるしかない状態でした。幸い、周りにMAに長けた人がいて、その人のやり方を見たり直接質問できたりしたので、そこは恵まれていました。
田代
逆に言えば、社内に詳しい人がいないと相当つらいですよね。社内にいない場合はどうしたらいいでしょうか?
T
コミュニティの活用は、ぜひ考えてみるといいですね。私がよく使うHubSpotもユーザーコミュニティがあって、私も覗きにいきます。会社は違うけれど、自分と似たような境遇の人たちがたくさんいることにも気づけました。「ああ、自分だけじゃないんだ」と思える。わからないことを聞きたい、みたいな使い方だけでなく、自分と似た存在を感じられるだけでも、励みや支えにつながります。
「現場での失敗」が責められない環境作り
田代
ジェネシスでは本格的に運用の中心を担ってくれています。今まで続けてこられた背景、今の環境で良かった点を挙げると、どうですか?
T
先ほど話した通り、使いこなせる先輩社員の存在は大きいです。直接教えてもらわなくても、その人のやりようを見られるので。
当時の先輩社員からは、「自分で悩まなければ、成長しない」と言われて育ったので(笑)。
田代
対応が“昭和”だなあ(苦笑)。
T
でも本質をついていました。ツールは、実際に触っては壁にぶつかり、悩みながら自分で解決方法を探す中で、徐々に使いこなせる場面が増えていくものです。
T
私が「浮かんだ疑問をそのままにしておきたくない」性分で、自分であれこれ調べるのも好きで。
例えば、サポートサイトを使えば、国産ツールでない限り翻訳が逐語訳でこなれていなかったりするとはいえ、訳を読めば手がかりがつかめます。調べたり、探したりして疑問点を解消する作業が苦じゃないんです。
田代
手取り足取り教えられる環境が提供できれば別ですが、多くの会社がそこまでできないのでは、とも思います。
新任担当者にとっては、戸惑いながらも自分で調べようと思えて、実際に行動できるかが鍵ですね。Tさんと違って、普通は嫌になる人が多いはずなので(笑)。
だからこそ、上長や経営層は「なかなかできないことをやってくれている」と理解する気持ちが必要かもしれないね。
T
後は、失敗があっても現場が責められなかったことです。
過去に一度、HubSpotの設定を誤ったままメールを配信してしまったことがありました。あの時、もし現場が責められていたら、完全に萎縮したと思います。
でも、「人はそもそも失敗するのだから、常に挑戦を止めてはいけない。失敗を失敗のままにせず、その後に活かすことがもっと大事」と言ってもらえて、気持ちがとても楽になりました。
田代
ああ思い出しました。ありましたね。
ジェネシスでは、担当者にある程度の権限を渡しているよね。結果のフィードバックを約束してくれれば、企画や施策などは比較的自由にやれる環境というか。挑戦しやすい環境とセットで、失敗を1人で背負わせずみんなでリカバリーする体制を提供できるか、は大事かもしれないですね。
メール配信やWeb施策などは、すぐ訂正できるし、当然謝らないといけないわけだけど 、それこそ紙媒体やTV広告しかない、一度世に出てしまうと修正が効きにくい施策に比べればはるかにリカバリーしやすい。
失敗や誤送信はもちろん少ない方がいいけれど、それ以上に委縮して新しいことにチャレンジしないほうが損、という考えはあるかもしれないですね(まぁ、ジェネシスくらいの規模なので、ミスもそれほど致命的なものになりにくいというのもありますが……)。
能動的かつ本質的な動きを引き出せるか?
田代
最後に現状についてうかがいます。HubSpotの稼働状況はどうですか?
T
定期配信用や更新のお知らせなどのメールを、毎月2〜3通のペースで作成して、HubSpotで展開しています。
サイト上からフォームなど確認ができる形では、メルマガ登録やダウンロードコンテンツなど20程度のシナリオは常時稼働しています。
それ以外にも、複数ダウンロードコンテンツ用のシナリオや、登録時バウンス者への対応、Webサイト来訪クライアントのお知らせメール、名刺交換時のメール配信フォームなど内部的なシナリオや、セミナー開催やキャンペーン対応で一時的なシナリオなど、30程度のシナリオを稼働させたりしている状況です。
田代
未経験の状態から年月を重ねて、かなりのボリュームを使いこなしていますよね。
T
こうして担当者として継続できたのは、基本的には日単位や週単位でガチガチにノルマが設定され、締め切りに追われていないからです。そのおかげで、「マーケの強化書」というメディアとして、本質的に大事なことは何かを考え、改善案を検討し、手段としてHubSpotで実行するサイクルが作れています。
日々の締め切りに追い回される運用環境だと、業務の本質に目を向ける余裕が持てず、早々にしんどくなっていたと思います。
田代
話を聞いていると、Tさんの資質でうまくいっているところはあるけれど、どの組織でも普遍的に取り入れやすいエッセンスもあったと思います。
つまり、成果一辺倒ではツールの運用自体が先細りになるし、担当者の精神的な負担を過度に招きます。ノルマ先行の運用になっていないかは、担当者を保護する上でも重要点検項目の1つですね。
田代
では最後に、今後の課題を教えてください。
T
コロナ禍によって、ここ2年ほどはメールの流入が増えた分、メール経由のアクションが減っています。普段の業務上のコミュニケーションが、メールからビジネスチャット系のツールに移行しているので、メールを送ってもクリックされづらい状況が続いているように思えます。こうした状況は今後も続くと思うので、HubSpotをはじめMAを今の時代に合わせて運用できる術を探っていきたいです。
田代
お付き合いいただき、ありがとうございます!
マーケティングツール運用のポイント
・ツールに慣れるためには、とりあえず触って試してみよう!
・同じツールを使っている社内外の人を見つけるためにコミュニティにも参加してみよう!
・分からないことは自分で調べ、実際に手を動かして考えてみよう!
・失敗やミスがリカバリーできる体制や環境を構築しておこう!
・成果も成長も、どちらも実感していける運用を目指そう!