【第1回】 ダイレクトマーケターとデジタルマーケターの間にある深い溝『アイ・エム・プレス』西村道子編集長インタビュー
1995年に『アイ・エム・プレス』を創刊し、現在までマーケティング、とりわけダイレクト・マーケティングをはじめとするインタラクティブ・マーケティングの最新トレンドをウォッチしてきた株式会社アイ・エム・プレス代表取締役社長の西村道子氏。
2014年の『アイ・エム・プレス』の終刊後は、「インタラクティブ・マーケティングまとめサイト」を開設。同サイトに『アイ・エム・プレス』に掲載されたケーススタディ(企業事例)を順次、無料公開するとともに、ブログ「西村道子コラム」を通じた情報発信を続けている同氏に、ダイレクト・マーケティングの変遷や課題、そして今後の展望などについてお伺いした。
【第1回】ダイレクトマーケターとデジタルマーケターの間には溝がある!
■調査会社を経験した後、起業、そして『アイ・エム・プレス』の創刊
■「インタラクティブ・マーケティングまとめサイト」でやりたいのは、これまでお世話になってきた方々へのお礼と恩返し、そして次世代への継承
■ダイレクトマーケターとデジタルマーケターの間にある溝
調査会社を経験した後、起業、そして『アイ・エム・プレス』の創刊
― まずは、西村さんご自身のキャリア、および『アイ・エム・プレス』を創刊された背景を教えていただけますでしょうか。
西村氏:私は、マーケティング・リサーチの会社にアルバイトを経て入社しました。同社では、マーケティング・リサーチの傍ら、独自調査に基づく各種レポートを発行していました。そこで、たまたま上司が通信販売やテレマーケティング、今で言うCRMの領域にフォーカスしていましたので、私もその分野のリサーチに深く関わってきました。リサーチとは言っても企業へのヒアリング調査が中心です。例えば、『顧客組織化システム』という調査レポートを発行した際には、メーカーの「愛用者組織」や小売業の「友の会」のご担当者へ取材をベースに現状を取りまとめていくような格好ですね。
同社には十数年おりまして、それから独立し、1989年に現在の会社を作りました。「アイ・エム・プレス」という社名は、ダイレクト・マーケティングやCRMなどのインタラクティブ・マーケティングの頭文字を採って、命名したものになります。最初は通販カタログなどの制作の請負業務に注力していたのですが、当初から、いずれは自分たちの媒体を出そうという構想があり、95年11月に『アイ・エム・プレス』を創刊しました。『アイ・エム・プレス』は、最初の1年は隔月だったのですが、その後月刊化し、結局足掛け20年ぐらい続けたことになります。
その他にも『コールセンター年鑑』や『CRM年鑑』など、前職で手掛けていた調査レポートに近い出版物を出したり、読者向けにセミナーを開催したりもしていました。
「インタラクティブ・マーケティングまとめサイト」でやりたいのは、これまでお世話になってきた方々へのお礼と恩返し、そして次世代への継承
― 2014年に『アイ・エム・プレス』を終刊後、「インタラクティブ・マーケティングまとめサイト」を立ち上げられた目的はどのようなものでしたか?
西村氏:とある読者の方から、『アイ・エム・プレス』のバックナンバーをアーカイブとして広く公開すれば、後続する学識研究者やビジネス・パーソンの役に立つのではないかと提案されたのがそもそものきっかけです。それと、私は書くことが好きで、昔からブログも運営していたのですが、『アイ・エム・プレス』の発行人を担っていた当時は、インタビューをするのに精一杯でなかなか執筆する余裕が持てませんでした。でも実は、『アイ・エム・プレス』時代から、本当は自分が取材をして原稿も書きたいという気持ちを胸に秘めていたのです。
そんなことから、「インタラクティブ・マーケティングまとめサイト」を立ち上げ、過去記事をアップするのとあわせて私自身のブログもここにお引越しすることで、双方が実現できると考えたわけです。
現在ブログでは、サイト上に公開しつつある約20年分の過去記事をテーマごとに串刺しにしたコラムや、一生活者としての顧客接点での経験をベースにした内容のインタラクティブ・マーケティングにかかわるコラムを執筆しています。将来的にはもう少しテーマを広げていこうかなと思っています。
ですから、このサイトは弊社のビジネスというよりも、『アイ・エム・プレス』という雑誌を20年やらせていただいてきた中でお世話になった方々への恩返しと、その結果を社会に残していくことで、次の世代の皆さんの学びになれば良いな、という気持ちで運営しているのです。
― 『インタラクティブ・マーケティング まとめサイト』の内容は、非常に貴重で重要な記事ばかりだと思っています。テクノロジーがどう進化しようが、学ぶべきベースとなる部分がたくさん詰まっているように感じます。
では、現在の西村さんのメインのお仕事について簡単に教えていただけますでしょうか。
西村氏:主に、ダイレクト・マーケティングやコールセンターなどインタラクティブ・マーケティングにかかわるリサーチやコンテンツ・マーケティングの支援を行っています。基本的にはBtoB系ですね。コンテンツ・マーケティングの支援では、PR&プロモーション活動のアドバイスやプライベートセミナーの講師のアテンドに加え、不定期ですが原稿の執筆や講演なども行っています。
ダイレクトマーケターとデジタルマーケターの間にある溝
― さて、本題のダイレクト・マーケティングについてお聞きしたいと思います。デジタルマーケティング全盛の今、ダイレクト・マーケティングに対する関心は決して高いものではないように思いますが、どのようにお感じですか?
西村氏:先日、Webマーケティング関連のイベントに参加してきたのですが、ネット以前からダイレクト・マーケティングに関わってきた人たちと、Webマーケティングを通して関わっている人たちとの間には随分と深い溝があるように感じました。
― 具体的にはどのあたりに溝があるとお感じですか。
西村氏:そもそも、使っている言葉が違うのです。今のWeb系の方たちは、自分たちがダイレクト・マーケティングを担っているとは思っていないのですね。以前にもWeb系の方から「ああ、西村さんはダイレクト・マーケティングをテーマにされているのですか、ダイレクト・マーケティングの担当者は、僕たちと同じことをされているみたいですね」とか言われたりして(笑)。やはり、同じ言葉を使って知識やノウハウを共有していないと、同じことをしていても、住む世界が異なってしまうのだろうと感じました。
もう1つは部署の違いですね。Web系の方はいまだにWeb部門が主担当のところが多く、一方、ダイレクト・マーケティングは通信販売部門やプロモーション部門が担当です。部署が違うと、やはり別の業務を担っているという認識になってしまいがちですね。
ですので、以前から繰り返し言われてきたのですが、企業にはマーケティング・コミュニケーション全体を統括する立場の人、すなわちCMO(Chief Marketing Officer)のような役職が必要だと考えています。
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『アイ・エム・プレス』の過去記事や、西村様のブログを読める
『インタラクティブ・マーケティング まとめサイト』
https://im-press.jp/