施行から1年?!2024年になってからインボイス登録をした人に話を聞いてみた!#2
2023年10月から施行された適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)。前回はどのように制度や手続きを理解していったのか?を聞いてみました。今回は、インボイス発行事業者になると判断したポイントについて伺っています。
- インタビュアー(編集部)マーケの強化書編集部員 請求書の対応等も行う
- インタビュイー(Mさん)マーケの強化書編集部の仕事を手伝ってくれているフリーランスの個人事業主。
今までは免税事業者でインボイス登録を行い今年の夏から課税事業者になった
2023年10月の施行で終わりではない?!インボイス制度
Mさん:まず今回、2023年10月の時点では登録せずに今年になって登録した理由にも関わってくることなのですが、2023年10月にインボイス制度が施行されて終わりではありません。
編集部:施行されて終わりではない?!もう少し説明してもらえますか?
Mさん:2023年10月にインボイス制度は施行されまして、現在は経過措置期間になるそうです。国税庁発行の詳細パンフレットから抜粋引用します。
免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置 (p13)
小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(p20)
小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(p21)
編集部:免税事業者からの課税仕入れに係る経過措置は、フリーランスの方とお付き合いがあるオウンドメディアを運営している私たちにも関係がある話ですね。つまり、免税事業者のフリーランスのライターさんやデザイナーさんとお仕事をさせていただく際に、令和8年(2026年)10月1日を経て、令和11年(2029年)10月1日=施行6年後には控除不可になると。
Mさん:そうですね。私が免税事業者のまま2029年10月以降もお仕事をご一緒させていただいた場合、免税事業者の請求書の消費税分が控除されなくなります。つまり御社から見ればコスト増になります。
逆に免税事業者が令和8年(2026年)9月30日まで発行事業者となった場合には、2割特例の申告が行えるようです。
編集部:なるほど。実際に国税庁の冊子には細かな注釈も書かれていますが、免税事業者と取引のある仕入れ企業には控除が2023~2026年、2026~2029年と段階的に、免税事業者から課税事業者になった人には2027年まで特例があるのですね。2023年10月の施行で全てを厳しく課税するのではなく、段階的な措置を行いながら施行される、経過措置期間だと言う意味が分かった気がします。
消費税率やBtoB、BtoCの違いが発行事業者になることを決心させる?
Mさん:私が発行事業者になるか悩んだポイントでもあるのですが、今が経過措置の段階である点と消費税率が10%固定だとは限らないと言うことでしょうか?
編集部:経過措置期間が終わった後のことも含めて悩まれ検討された点は、なんとなく想像できますが、消費税率はどのように関わってくるのでしょうか?
Mさん:日本では、1989年3%→1997年5%→2014年8%→2019年10%と消費税の税率は引き上げられてきました。日本国外に目を向けると消費税(付加価値税)イギリス・フランスなどは20%、ノルウェー・スウェーデン・デンマークなどは25%(2024年1月現在※)となっています。
Mさん:もし2029年控除不可になった時に、消費税が15%になっていたら?と仮定して考えると、免税事業者のままでいることで、仕事のクオリティ以外の部分でコストが高い取引相手だと思われるのは心外だなと。つまり長い目でみた時に免税事業者であることが取引の幅を狭めてしまう可能性を感じました。
編集部:確かに…インボイス制度施行前からお付き合いがあるので、免税事業者だから発行事業者だからと言って発注相手を見定めるようなことはありません。
しかし、一般的には、控除の変更や税率の上昇に伴い、運営予算を増額することは考えにくいですよね。同じ予算内で記事単価が変わらないと仮定しても、税率や控除の影響で実際に発注できる記事数が減少する可能性がありますね。
Mさん:私も名指しで仕事の発注がもらえるような立場なら免税事業者とか発行事業者なんて気にもしなかったのかもしれません。実際、取引先はBtoBが多く、サラリーマンの経験もあるので企業内部の最終的な意思決定や方針はなんとなく想像出来ます。免税事業者ではなく発行事業者になるのは、ある意味で、営業費用だと思えば、私自身も心情的に割り切れます。私も自分がデザインしたTシャツをネットで売っていると言ったBtoCの商売だったら免税事業者のままだったかもしれません。
編集部: BtoBとかBtoCって、取引先が発行事業者になる・ならないと関係がありますか?
Mさん:会社でモノやサービスを購入する時ってインボイスも気にしますが、プライベートでの買い物でT番号を気にすることってありますか?
編集部:あっ確かに。経費精算しない時ってレシートやインボイス番号に少し無関心かも?お昼にお弁当を買ったり、会社帰りに自分の服を買う時に発行事業者か?なんて気にしたことはありません。
Mさん:現状では、企業の方が仕入税額控除のためにもインボイスの要求が強いように感じます。
また、相談に行った税務署で聞いた興味深い話ですが、発行事業者にならないと判断する人が多いのは、事業の終了(廃業や撤退)を視野に入れている免税事業者の方だそうです。
控除がある内に取引も終了してしまうので…。
編集部:なるほど、確かに。最終的には取引相手のことも考えて登録事業者になった感じですか?
Mさん:理由の1つにはなると思いますが、一番大きな答えを自分の中で出せたのは、もう1つ別に理由がありますね。
編集部:それは何でしょう?
免税事業者のうちに課税事業者になった場合の試算を行おう
Mさん:先ほどの話は、登録事業者になると決めるための精神的な、心情的な理由の側面の話です。
今から話す内容は、実質的な理由、経営者視点での損得勘定や課税事業者になった場合に生じる消費税の納付額の話です。納付額を試算してみました。
編集部:そんな計算が出来るのですか?会計スキルが高い?!
Mさん:スキルが必要な計算はしていません。免税事業者の時から1,000万円の売上げを超えるような事業計画は立ててないので、消費税の納税は想定外でした。
私の無知をあえてさらすなら、インボイス制度について理解する前は、500万円(税抜)の収入があれば、消費税10%分の50万円。300万円(税抜)の収入があれば、消費税10%分の30万円、消費税として納める。現状の売上げから10%少なくなる!なんて思いこんでいました。
編集部:売上げに係る消費税から仕入れに係る消費税を差し引くと言う、仕入税額控除は・・・。
Mさん:そうなのですよ、請求して受け取った消費税って全額納税する訳じゃないんですよね。消費税の計算は一般課税と簡易課税制度と2つあって、私はサービス業に当てはまるので簡易課税制度では第5種事業でみなし仕入率50%…って。
国税庁のサイトにも詳細な計算方法についての記載してあるのですが、実はfreeeのサイトに便利なシミュレーターがあって、そこに過去の自分の青色申告の資料を手にデータを入れて計算させてもらいました。
編集部:消費税 納税 シミュレーター。私のような会社員には縁はありませんが便利そうですね。
Mさん:一般課税納税額、簡易課税納税額、2割特例の金額が出てくるので、2割特例が終了した後の2028年にどれだけ納税すべきか?もイメージできましたよ。制度を良く知らない時は、手取りが減るのは怖い・手続きは面倒・このままだと取引先に迷惑をかけそうという漠然とした不安が大きかったのです。でも、制度を知って、手続きの難しさが軽減し、実際の納税額が分かると、大丈夫そうだと、登録事業者になっても仕事が続けていける。と考えられるようになりました。
編集部:なるほど前回記事からの引用にもなりますが、
(イ)制度全体への理解
(ロ)自分の事業が制度に対してどう当てはまるのかの理解
(ハ)制度に申し込む際の準備や手続きの理解
の(ロ)自分の事業での具体的な納税額を試算することが決断を促したと言うことですね。
Mさん:はい、そうです。制度について準備と手続きまでの情報はネット上にもあふれていますが、自分の事業と制度との関係については、自分自身で個別の検討や試算が必要になってくる部分ですね。
編集部:2回にわたってMさんの個人的な経験の話としてお伺いしましたが、インボイス制度の段階的な経過措置や、税額のシミュレーター。インボイス制度に対してどのような心構えで向き合えば良いが、さまざまなヒントになる話を聞いたような気がします。
Mさん:こちらこそインボイス制度について互いに立場は異なりますが、話をする機会をいただき、ありがとうございます。
編集部:最後に何か読者に伝えたいことはありますか?
Mさん:一人で活動しているフリーランスの個人事業主の方にとって、確定申告も含めて本業以外にも面倒なことはありますが、きちんと情報収集をして頑張っていきましょう!私の話も一例でしかないので、より正確な情報は、税理士や税務署にてご相談ください。
編集部:今日はありがとうございました。
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