今日から使える!MA導入のための実践的マーケティングメソッド
マーケティングオートメーション(以下、MA)のツールの多機能な面に目を奪われ、使いこなすまで行かないのは何故でしょう?実務に近い視点で、考えるべきことを整理しよりMA活用を推進していただけるヒントをお送りいたします。
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MAというテクノロジーをどう活用すれば良いのか?
最近は「MAを導入しているけど活用しきれない」というお客様からのご相談を頂くことが多くなりました。MAの最大の特徴は、one to oneマーケティングの実現にあります。一人ひとりに適したタイミングでコンテンツを提供することが出来ることに最大の特徴があるツールです。しかし、それは裏返せば顧客一人ひとりがどんな心理状態で、何を考えているのかを知らなければ活用できないということでもあります。顧客がどのような心理状態で何を考えているのかを知ることで、効果が出るMAの設定に一歩近づくことになります。
この記事は、実際に私がMA施策の提案をするときの手順について詳細に書いたものです。この記事を読んで頂ければMAの機能を最大限活用するための進め方を知っていただけると思います。また、話を進めていくとMAの活用にはマーケティングの基礎知識が必要であることがよく分かってくると思います。MAを導入していない企業でもマーケティングの考え方は参考になると思いますのでぜひお付き合いください。
「顧客の考え方/認識を変える」ことが基本
MAを活用するための基本的な考え方は、顧客の商品サービスに対しての考え方/認識をゴールに向けて変化させることです。なぜ顧客の考え方/認識をゴールに向けて変化させることが大切なのかと言えば、すべての行動は顧客の商品やサービスに対しての心理状態や認識に起因するからです。気に入らない商品やサービスを購入したり、気に入らない企業に前向きな問い合わせをしたりということはあまり起きない(ごくまれにやむに已まれぬ状況で起きることもありますが)ですよね。顧客が何らかの行動をするときには、商品サービスに対してそれ相応の心理状態になっているというのが一般的なマーケティングの考え方です。そのため、MAを活用する上で重要なことは、ゴール(商品やサービスの購入、来店や商談、購入検討に近い問合せなど)に到達してもらえるような心理状態・考え方・認識を作り出すことになるわけです。
最初は現在の考え方/認識を知ることから始まります。現在の顧客の考え方/認識がどのような状態なのかによってゴールに到達させるための手段や順番は異なるはずですからとても大切なステップです。そして次にゴールの設定です。顧客がゴールに到達するときの考え方/認識を明確にすることで適切な施策を打つことができます。そして、最後に「現在の考え方/認識」から「ゴールするときの考え方/認識」に変化させるためのシナリオを考えます。
関与度が深い商品になればなるほど、一足飛びに考え方/認識が変化して購入に至ることはありません。そのため、マーケターは現在の状態から複数の考え方/認識を経由させることでゴールに導く必要があります。マーケターは、そのゴールまでの最短ルートを見つけ出すことを求められます。どのようなルートを辿るのが最も効果的で効率的なのかを考えるわけです。
最も効果のある箇所を見つけよう
前節では、MA設定のための基本的な考え方を説明しました。MAの設定はまだまだ先です。設定はマーケティング戦略に基づいてするものです。
MAで効果が出ない原因の一つとして、MA施策を効果があまり期待できない箇所で実施している場合が多々あります。例えば、「Webアクセス→資料請求→電話コール→来店/来社→成約」の流れで進む企業で、「電話コール」して「来店/来社」する人が90%あるものの、「資料請求」してから「電話コール」しても50%しか会話出来ていない場合があるとします。このような場合、MA導入によって会話率50%をさらに向上させる施策を実施することが最も高い成果を上げられると考えられます。しかし、MAを社内で運用しようとすると、小さく簡単にできる箇所から始める傾向があります。上記の例で言えば、既に90%もある来店率をさらに高めるためにMAを使ってしまうのです。
MAは簡単なところから始める、出来るところから始めるべきという考えはもちろんありますが、それはあくまでMAを継続的に活用する上で大切なことであって効果を出すことに対してはあまり意味がありません。もちろん、自社のリソースだけで課題となっている箇所にMA施策を実施するのが理想です。しかし、いきなり複雑な設定は不可能ですし、問題点が不明確だからこそ課題になっている場合が多いため、実際には社内だけで成果を出すのは難しいのが現実です。問題箇所にメスを入れるために他社の力をかりることも検討する必要があると思います。
MA施策の箇所を決めたら、セグメント・ターゲティングしよう
どこでMA施策を実施するのか決めたら、次は対象となる人たちをセグメントしターゲティングします。前述したようにMAはone to oneマーケティングを実現することが出来るツールです。言い換えれば、各々のセグメント毎に異なる施策を実施することが出来るわけです。なのでどうセグメントしどうターゲティングするのかは非常に大切なプロセスになります。特にセグメントはマーケティングの基礎であり大変重要なプロセスです。なぜなら、どのような視点・軸でセグメントするのかによってその後のターゲティングからその先の施策内容まで方向性が決まってしまうからです。セグメントをするということは、施策の方向性や期待できる効果も含めて考えることなのです。
一般的には、セグメントはデモグラフィック・サイコグラフィック・ジオグラフィック・行動変数などによって区分するものと言われていますが、それだけでは不足しています。セグメントを考えるとは、前述したようにその先の施策内容と期待できる効果まで考えることを含むものです。なので、セグメントを考えるときは最も時間がかかる部分です。複数の視点・軸でセグメントして最も効果的で効率的なセグメントはどれかを徹底的に考える必要があります。1つ軸を出してそれで終わりということは殆どありません。これらのセグメント分けのプロセスによって、各セグメントの「現在の考え方/認識」も明確になるはずです。私がセグメントを考える際には、下記のような視点で考えています。下記に記載しますので参考にしてください。
- 自社の施策によって顧客になる可能性は高いか
- 忘れがちなのは競合他社です。自社にとって魅力的なセグメントは競合他社にとっても魅力的な顧客です。顧客は複数の選択肢を持っているわけですから自社が施策を実施することで競合に勝つことが出来るセグメントでなければ意味がありません。
- 十分なボリュームがあるか
- 見込の高い顧客セグメントであっても十分なボリュームがないなら施策を実施したところで得られる効果は微々たるものです。コストに見合った効果は期待することはできないでしょう。
- セグメントごとに施策を変えることが出来るか
- セグメントしたけど全てのセグメントに同じ施策が有効だと考えられるのであればMAで実施する意味がありません。セグメント毎に施策を変えることでより効果が期待できる視点や軸を見つけなければいけません。
- 何のデータで区分するのか
- MAを導入する上で必要な要素です。データによって区分することが出来ないのであれば、MAで施策を出し分けることはできません。
- セグメントによるコスト増と成果のバランスは適切か
- 通常セグメントを細かくすればするほどコストは増加していきます。各セグメント毎にコンテンツを用意する必要があるためです。MAの設定も複雑になります。どこまでセグメントを細かくするべきか、優先すべきセグメントは何かは想定される成果とコストのバランスを見極めて決めるべきです。
ご相談いただく企業でよくみられるのは、セグメント分けをせず同じ施策を全員に対して実施しているような状況です。これでは、MAを導入した意味があまりありません。同じ施策を全員に実施するのであれば、もっと安価に実施可能なツールが沢山あります。そのツールを使った方がコストを抑えることが出来るはずです。
各ターゲットの「ゴールするときの考え方/認識」を考えよう
前節でセグメント・ターゲティングをしたら、今度は各ターゲットにどんな状態になって欲しいのかを明確にします。つまり、顧客がゴールするときの考え方/認識を考えるということです。これはつまり、なぜ自社商品サービスを買ってくれるのかを知ることです。なぜ自社商品サービスを買ってくれるのかを明確にすることで何をすべきかがさらに見えてきます。また、ゴールは現実的に考えるべきです。新商品サービスの場合は、特に間違えやすいです。商品サービスをリリースしてみないと誰がどんな点にメリットを感じるかは本当のところは分かりません。検討違いの買ってくれる理由を設定してしまっては、施策が的外れになってしまう可能性があります。
各ターゲットをゴールに導くシナリオを考えよう
次は、各ターゲットをゴールに導く作業です。セグメントをしてゴールも設定していれば既に施策の方向性は決まっているはずですから、ここではより具体的な施策(シナリオ)を考えます。施策とは言わずに「シナリオ」と言っているのは、1回の施策で顧客が購入まで至ることは殆どないからです。複数回に渡って施策を実施する必要があります。シナリオ設計とは、「どんなコンテンツをいつどのように届けるのか?」「それを何回実施するのか?」「どんな順番で実施するのか?」「どの状態になったら施策をやめるのか?」などを考えることです。なかにはこのことをストーリーを考えるという言い方をする人もいます。このシナリオを考えることはとても難しいのですが、やはり顧客を深く知ること以外に近道はないと思っています。
「顧客インサイト」を徹底的に考えること
個人的にはこれしかないと思っていますし、これ以上効果的なものはないと思っています。経験上、顧客インサイトをどれだけ知ることが出来たかで良いシナリオアイデアが出るか出ないかが決まってくると感じています。なので出来る限りクライアント商品を購入したり、購入したことのある人の話を聞くようにしていますし、可能な限りクライアントのお客さんになりきる努力をしています。この努力をどれくらい出来るかで顧客を動かすアイデアを思いつけるかが決まってくると思います。
シナリオをMAで実現しよう
ここまで来てようやく「MAの設定」です。MAの設定はこれまで考えてきた「セグメントする」「ターゲティングする」「各々のタイミングで施策を実施する」「どんな反応を計測するのか」などを実現するステップです。正直なところ、このタイミングでMAでは実現できないことが判明することもあります。MAツールの仕様を詳細に把握しているつもりでも、細かい部分の仕様まで瞬時に判断して検討を進められるわけではありません。また、MAは完璧なツールではありません。いくつもの条件を追加していけば必ず出来ない状況に出くわします。
その場合は、想定していたシナリオは諦めMAで可能な範囲内でシナリオを実装することをおすすめします。ここまで考えてきたことは実施すべきことだと考えます。実施をして反応を見て、やはり追加コストをかけてでも完璧にすべきだと判断したならそうすればよいのです。
いかがでしたでしょうか?かなり長文になってしまいましたが、ここに書かせて頂いたのはかなり実務に近いものです。MAは多機能だけにそれを使いこなすために多くの考えるべきことがあります。この記事を読んで頂き、考えるべきことを整理しよりMA活用を推進して頂ければ大変うれしく思います。