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寺田倉庫 minikura に学べ!<前編>新規サービスの立ち上げ成功術

旧態依然とした印象を持たれがちな物流事業やトランクルーム事業。それを払拭する新機軸を打ち出したのが寺田倉庫です。

中でも「minikura(ミニクラ)」は、寺田倉庫を一躍有名にしたサービス。月額250円で、ダンボール一箱分の荷物を預けられるほか、クラウド上で中身(30点まで)が写真で管理可能というサービスが話題化し、続々と派生的な事業も生まれています
新規サービス立ち上げで成功する秘訣を探るために、今回、寺田倉庫で専務執行役員を務める月森正憲さんのもとを訪問。「マーケの強化書」編集部が取材を行いました。

    月森氏
    インタビューイ:月森正憲 さん寺田倉庫 専務執行役員 MINIKURA担当


    杉田
    インタビュアー:杉田ユウイチ「マーケの強化書」編集部
    ジェネシスコミュニケーション 代表取締役社長

※所属および肩書きはインタビュー当時のものです。

目次

「寺田倉庫らしい」サービスを目指して

杉田


「minikura」が生まれた経緯を教えてください。

月森

もともと寺田倉庫は、不動産事業、物流事業、トランクルーム事業の3本柱で成り立っていましたが、競争の激しい業界動向の中で模索し、新たに「寺田倉庫らしい」と言える事業として具現化したのが2012年に発表した「minikura」です。箱単位の安価な預かりサービスであり、中身はクラウドで管理可能かつ出し入れも自由といったサービス設計としました。

サービスの詳細はWebサイトへ

月森

創業60周年にあたる2010年をきっかけに、事業の見直しを図り、物流規模で勝負する従来型のビジネスモデルをガラッと変えようとしたわけですね。

杉田


当時は実状と目指したいイメージに大きなギャップがあった、と?

月森

はい。創業当時(1950年10月)はお米の預かりサービスをやっていて、「お米にとっての最適な空間とは何か」を追求した精神が、お米に限らず「さまざまなモノにとっての最適な空間」作りの精神へと継承されていきました。その延長線上で、「他社の動向は関係ない。自分たちが納得できることをしよう」というDNAが醸成されたわけです。

私たちの強みは規模でなく少数精鋭なことです。とはいえ、従来は各事業の特性が主に法人営業したので、取り扱う規模や価格は大きいけれど結局は価格競争……となっていたビジネス形態を根本から変えたいと考えたのです。

規模でなく「付加価値」で勝負する

杉田


minikuraが生まれた背景には、寺田倉庫のDNAが大きく作用したわけですね。

月森

もちろん、オーナーや代表取締役CEOである中野善壽の意向も強くありました。倉庫事業を“規模”で勝負しても他社には勝てない。ならば、物を預かった後につながる次の活動(=付加価値)を提供できる存在になって、他社と違った土俵で勝負したい。次の活動とは、個人(コンシューマ)の生活の質の向上や、アーティストの文化創造活動への貢献などを指します。

中野から「次世代のトランクルーム事業を作ろう」という号令がかかって、白羽の矢が私に向けられたのです(笑)。実は私なりに個人向けのトランクルームサービスについて練っていたアイデアがあって、中野がそのことを耳にして、「じゃあ、それをやろうよ」と(笑)。

杉田


BtoB、BtoCは関係なく、御社の価値が伝わることをやる、ということですよね。

月森

私たちが蓄積してきた、モノの最適な空間に関する研究や取り扱い方は、個人の荷物にも役立つはずです。法人、個人を問わず、預けたい誰もが「かゆいところに手が届くサービス」として誕生したのが、minikuraです。

「インフラを目指せ!」高いハードルを設けてサービス化へ

杉田


minikuraのリリースへと至る具体的な手順はどうでしたか?

月森

まず弊社のお客様へのアンケートや一般的なWebでの調査を行いながら、個人のお客様の需要を探ると、返答の声の多くが現場での問題意識と重なっていることがわかりました。例えば、「預けているモノがわからない」「そもそも預けていました?」という不幸な使われ方の実態を改めて確認できたのです。

実は、1991年に関東運輸局からトランクルームの事業認定を得た第1号が寺田倉庫です。約30年の実績から、一度預けた荷物は頻繁に出し入れされないという傾向は把握していました。そこに調査を通じて得た声も裏づけて「市場性」を確認し、あとは利用者が実際に使いたくなる、「ダンボール1箱から預けられる」というシーンを念頭にサービスを具体化したのです。

杉田


従来のトランクルーム事業より、実現したレベルはかなり高いですよね? 当初、サービスレベルの設定はどう考えていたのですか。

月森

中野から強く言われていたのが「インフラを目指せ」と、求められているものはバリバリ高めでした(笑)。やる以上は「風呂敷を広げてやれ!」。今までリーチしたことのない人たちへの利用を喚起したいからです。箱単位での預かりという特徴以外に、面倒な契約フローを一切なくしてWeb経由で簡単に利用できたり、預けている中身を写真撮影して、Web上で管理までできるようにしたりするのも、そのためです。

ためらわずに自社アピールせよ!

杉田


minikuraローンチ前後の社内外の反応はいかがでしたか?

月森

公開前に大きな壁があって、倉庫会社には「個人の預かった荷物の中身を開けてはいけない、触ってはいけない」という不文律がありまして。しかも当初中野から言われていたのが月額利用100円(笑)。

杉田


実現までのハードルが高いほど、消費性の高いサービスにもなれます。

月森

不文律を理由にしていれば、いつまでも変えられません。1点ごとの管理という仕様は絶対達成したかったし、利用しやすい価格も崩したくない。その結果100円は無理でも、1点ずつ写真撮影を行い管理するサービスで月額250円、を実現できました。公開後の翌日には、あるオンライン媒体で早速minikuraが取り上げられて、大きなバズが起きたほどです。

このバズが、私自身もかなりハッとさせられて、社内の機運がガラッと変わった出来事にもなりました。何せ、倉庫会社がオンライン媒体で記事になるなんて、それまでなかったので。

杉田


自社アピールの重要性が見えてきたわけですね。

月森

そもそも大多数のみなさんにとって倉庫会社はあまり馴染みのない存在だと思います。1点ずつの管理は、倉庫会社なら当然できることで、特別なことではありませんが、知らないみなさんからすれば「そんなことができるの?」と驚かれる。だからこそ、自社の取り組みを率先してアピールする効果があなどれない、と骨身にしみた体験でした

後編に続く
後編では、「新規事業/サービスの成功」についてもっと具体的に展開します。
「どうしたら新規事業がブレイクスルーを迎えられるのか?」
「成功するために、新規サービスの価格はどう設定すればいいか?」
について、「マーケの強化書」編集部が月森氏に踏み込んでうかがっています。
熱い対話は後半へ続く
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株式会社ジェネシスコミュニケーション

ジェネシスのマーケティングプロフェッショナルが編集を担当。独自の視点で厳選した実践的ナレッジをお届けいたします。

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