ジェネシスの仕事の進め方を大解剖!どうやって「ブランド」を作るのか【vol.03】ブランドの核、「コアバリュー」とは?
編集長と社員との対談を通じて、「マーケの強化書」を運営するジェネシスコミュニケーション(以下ジェネシス)の業務内容を明らかにしていく連載「ジェネシスの仕事の進め方を大解剖! 」。今回は、「ブランド作り」の3回目として、商品やサービスの「ブランド」を考える上で、出発点にあたる「コアバリュー」(=ブランドの核)の導き出し方について解説いたします。
- 田代 靖和株式会社ジェネシスコミュニケーション シニアプロデューサー
「マーケの強化書」編集長 - 佐藤 直美株式会社ジェネシスコミュニケーション ディレクター
「マーケの強化書」編集スタッフ
「丁寧なヒアリングが必須」と考える背景
前回、ブランド作りにはブランドの核を意味する「コアバリュー」をきちんと言語化しておくべきという話をしてもらいましたね。
言語化するためには、コアバリューを5つの要素(「属性」「機能的価値」「情緒的価値」「理想顧客像」「パーソナリティ」)に分解して考えてみるという話もさせていただきました。今回はコアバリューを支える各要素をどのように考えていくのかについてもう少し掘り下げてみましょう。
各要素を作っていくのに必要なのが「ヒアリング」ですよね。今回のプロジェクトでは、本部と支社、支店に話を聞いたと伺いました。いろいろなセクション、部門の方に1人ひとりお話をお聞きすると、作業が膨大になるだけでなく、Aさん・Bさん・Cさんで意見が違う箇所もあるはずです。違った意見をどのように扱っていけば良いのでしょうか?
社員やスタッフが違えば、商品やサービスへの解釈が違う可能性があります。大事にされているポイントも異なるでしょう。だからこそ、さまざまな立場のみなさんの意見を聞く必要があると考えます。いろいろな方のお話を数多く聞くことで、言い方は違うけれど、根底に流れる考え方の共通点に気づけたりします。その共通点を見つける作業こそ『言語化』と言えるのではないでしょうか。この工程でうまれたコアバリューこそ、ブランドの核を形成する要素であり、ブランドを捉える有力なヒントになるはず、とジェネシスは考えています。
まずは「属性」(特徴)について掘り下げる
どうしてもこうしたアプローチは、地道に一歩ずつ核心に迫ることを良しとするクライアントとは相性がいい方法です。短期的に即効性を求めたいクライアントとは合わない可能性もありますね。最近はそうした傾向が少し強いのではないかとも思っています。
負荷のかかるプロジェクトにはなるので、スタート前の段階で自社がどう向き合いたいのかを整理する必要もありそうですね。
今まで気づいてなかった、まったく気づいていなかったことは考えにくいですが、なんとなく気づいていた他社にはない自社の強みや特徴が見えてくる工程ですので、他社との違いを意識しながら一緒に導き出したいところですね。ここからは、今回のプロジェクトを例に、1要素ずつ考えていきましょう。
「属性」は言い換えれば【ブランドの特徴】です。今回のプロジェクトである事業者(ビジネスの主体)がどのようなサービスを提供するのかを整理します。例えば対象年齢、ビジネスの特徴、メリットや補足要素をまとめていきます。
ここでの注意点は何でしょうか?
私たちのやり方として、クライアントと接する前に、自分たちでも結構いろいろ調べさせてもらいます。このプロジェクトではヒアリングの前に実際に施設に行かせてもらいました。そうした中で感じ取った認識と、ヒアリングで明らかになった特徴が合致しているか、ズレていないかを確認します。認識のズレがあれば、ズレについて質問し、理解を深めます。
「機能的価値」と「情緒的価値」の深め方とは?
次に「機能的価値」と「情緒的価値」です。この2つは、セットにすると考えやすいと思います。
組み合わせて、ということでしょうか?
そうです。「機能的価値」とは、対象となる商品やサービスの機能面、実用面の価値となります。今回のプロジェクトである施設型ビジネスを例にとると、施設を利用することでどうなるのか。何が得られるのかといった、施設の機能や仕組みと紐づけて考えられる価値について、探り出していきます。 そして、それぞれ探り出した要素(機能的価値)を享受することで、利用者の気持ちがどうなるのかを整理すると、それらが情緒的価値と位置づけられます。
情緒的価値は、機能的価値によって出てくる感情をまとめることでしょうか。
機能的価値の裏返しが情緒的価値、とすると考えやすいでしょう。機能的価値を提供されることで、どういった感情になるのか。例えば、「嬉しい」という感情であるとか「成長を実感する」であるとか、そうした情緒の紐づきを整理するわけです。注意したいのは、世間的な認知が進んでいない商品やサービスの場合、機能面にばかり注目が集まり、情緒的価値が着目されづらいところがあります。 いずれにせよ、機能的価値と情緒的価値をセットで言語化しておくことが自社商材・サービスのメリットや強みの把握へとつながります。
「理想顧客像」と「パーソナリティ」の深め方について
次いで「理想顧客像」です。「理想顧客像」は、クライアントの方でがあらかじめ思い浮かべていた理想顧客像もあることが多いのですが、ヒアリングを通じて反映したいですね。
ターゲット層ではなく理想顧客像をまとめるのはなぜでしょうか?
言い方を変えると、理想顧客像を示すということは、その商品やサービスにとって、最大限の価値を発揮できる人を考えるということになります。
あくまでブランドの話ですので、ターゲットとズレているかは一旦脇に置いておく必要があります。本当はどういう人に使ってもらいたいのか、を突き詰めるのがこのステップです。とはいえ、現実と理想のズレはなぜ起きるのか。現実がおかしいのか、理想の捉え方に何か問題があるのか、などもこの工程で明らかになったりすることもありますけどね。多くの場合、ブランドの理想顧客とターゲットのズレは、マーケティングコミュニケーションの問題になりますので、ブランド構築のプロジェクトのスコープではありませんからね。(もちろん、そこが仕事になることもありますよ)
最後に「パーソナリティ」です。今まで丁寧に洗い出してきた機能面、情緒や感情に訴求する側面、理想的な顧客などをすべて集約して、1つにまとめる作業です。単純にまとめるのではなく、商品やサービスを人になぞらえてエピソード化すると良いでしょう。以上がコアバリューの5つの要素の検討です。ヒアリングしながら進めると、クライアントの規模にもよりますが、1.5カ月前後の時間がかかるかなと思います。今回のプロジェクトではそうでしたね。
ここまでできて、ようやくスタートラインに立てるということですね。
コアバリューを内部できちんと定義化する作業ができてこそ、次のフェーズであるブランドコンセプト作りに着手できるし、最終的にロゴやデザインといったクリエイティブが生み出せる、というのがジェネシスのスタンスです。
3回を終えて
今回の3回でブランド構築。ロゴマークや名称を考える一番最初のステップについてお話させていただきました。ジェネシスでは、なるべく丁寧に、言語化しながらフレームワークを用いてお仕事を進めていきます。大きなプロジェクトになればこそ、こうしたステップを踏むことがメンバーの同意を取りやすかったり、意識が違う状態を作らなかったりするからです。
次回は、ブランドから少し離れて、クライアントにとって最適なコンテンツ作りについて、相談を受けた場合のジェネシスの動き方、仕事の進め方を紹介したいと思います。満足な制作期間が残されていない中でも、何が最適であるかの探り出し方やアウトプットを作り出す過程、それに至る判断や根拠を解説します。