「会議がつまらない」とぼやく前に!ビジネス会議のためのコミュニケーション術
テレワークとの併用になり、ビジネス上のさまざまな会議に「うんざり」している人も多いことでしょう。そこで、一度立ち止まって考えてほしいと設けたのが今回のテーマです。会議によって、目的が違えば、参加にあたっての立場も違います。少し意識を変えることで、どの会議でも自分を含めた参加者にとって実りのある体験へと高めることはできます。会議が「充実した時間」となるために、どう意識を変えて、何を実践するといいのでしょうか?
- 田代 靖和株式会社ジェネシスコミュニケーション シニアプロデューサー
「マーケの強化書」編集長 - 担当T株式会社ジェネシスコミュニケーション
勝負は、会議の前に決している!?
T
ビジネスに会議はつきものですが、会議で悩んだり、ネガティブに感じている人は多いですよね。僕もそうです(苦笑)。「ああ、何だったんだろう。さっきの会議は……」と思うことがよくあります。さらに言えば、コロナ禍でリモートワークになったこともあり会議自体が増えている印象もありますね。
田代
確かに増えていますね。朝から夕方までずっと会議が続くみたいなことも。移動もないのでこなせてしまうのですが……会議に参加することが多くなったこともあって、良い会議と悪い会議の差が目につきますね。漠然と参加する意識を捨てることで結構変わるような気がします。会議に慣れてない方は、会議への臨み方のコツをつかんで「慣れる」しかありません。そこで、最初に立ち戻ってビジネスの会議体について整理してみます。会議体の違いで、準備の中身が変わるような気がします。
T
たしかに、一言で「会議」と括るのは雑かもしれません。
田代
ビジネス上の会議体は内容はともあれ、大きくは3ないし4つに分けられるかなと思います。
1 報告をするための会議
2 アイデアを出すための会議、議論するための会議
3 議題やテーマに即して、決定(結論)を求められる会議
4 面談もしくは面接
4は、社内の1on1MTGのような面談や転職活動などの面接を指しています。広くビジネスという点では含めていますが、今回はより現場に近い状況を優先して1〜3を中心に考えたいです。
T
会議の前に、これから臨む会議体が1〜3のどれかを考えておく、と。
田代
はい。加えて、自分の立場が関係します。会議を主催して議事進行する側なのか、会議に招かれた側であるのか?
T
主催側か参加側かで、会議で求められる役割が違いますね。目的や立場を整理して臨めるだけでも、漠然とした意識が引き締まってくるような気がします。
田代
会議を招集する際、召集される際。まず最初に「会議体が何か? 会議の目的をはっきりさせる」「自分の立ち位置を鮮明にする」、これら2点の整理を必ず行うこと! 上記を行うことで、具体的な事前準備がしやすくなるはずです。
望ましくない展開を想定しながら準備する
T
(必要な会議か否かの是非は置いておいて)会議に参加すると決まった以上、自分のありようをしっかりすることですね。
田代
もう一歩踏み込んでほしいのが、あらかじめ「こういう進行になると、無駄な会議になってしまう」といった、望まない展開を想定しておくことです。
T
どういうことでしょうか?
田代
極端な例ですが、結論を出したい会議で、参加者同士で揉めたり喧嘩したりが始まってしまうとします。ないに越したことはないですが、揉めたとしても最終的に結論が出たなら「結果的にはOK」と言えます。でも、アイデアを出すようなブレストを求める2のタイプの会議で揉めるとなると、本当にまずいですよね。
さらに言えば、もっとも避けたいのは、目的を達成しないまま会議が終わることです。こうなってしまうと、参加者に“無駄だった”“不毛だった”という嫌な印象だけを残してしまいます。
T
なるほど。例えば、盛り上がらない場合、アイデアが出てこない場合、準備をして臨む参加者がいない場合、結論が出せないまま終わりそうな場合など、会議体にあわせて想定しておきたいですね。
田代
会議を有意義にするための理想は、主催する側と招かれる側の双方が共同で協力して臨むことです。理想論かもしれませんが、その上で意見の違いが出てもいいし、侃侃諤諤のやり取りを重ねていける。それらは、お互いの意識の高さや準備があって生まれるものです。
T
難しいのは、なかなかそうならない現実ですよね。自分もそうかもと反省の余地もありますが、他人任せの傍観者になっていたりしますね。
田代
そうですね。傍観者ばかりの会議だと辛い。ただ、参加者に自分にとって都合の良い理想を求めてしまうこと、相手を変えることでなく、自分の臨み方なら変えられそうな気がしますよね? 会議の目的や自らの立場を踏まえて、準備を具体化して事前にアジェンダを共有し、会議前の意思統一やゴール設定の確認を図るのはできそうじゃないですか?
ネゴシエーションのススメ
田代
あとは、たくさんの出席者がいる会議なら、キーパーソンとなる人への事前交渉も考えてみてほしいです。
T
主催側が相手側に、あらかじめお願いすることでしょうか?
田代
例えば、この質問や内容についての見解を「この人に答えてほしい」「この人の考えを知りたい」とはっきりしているなら、事前に伝えておいて、伝えられた相手が確実に返答を用意してもらうようにします。
もしくは、同じ立場同士で「この部分は、ぜひ社長からビシッと相手に伝えてほしい」「このコアの箇所は、リーダーの口から改めて話してほしい」と擦り合わせておくのです。
T
「誰が言うか」で、参加者への伝わり方は明らかに変わりますものね。
田代
こうした、ちょっとしたお願いごとは「昭和っぽい」って言われてしまうかな(笑)。毎回必要とは言わないけれど、時にはネゴシエーションが大事だし、そういうことから避けてほしくないと思っています。
T
わざわざ会ってではなくても、今の時代はメールやチャット系ツールでもできることですしね。
田代
会議の主催側に優れたファシリテーターがいると、答えづらい話が飛び交っても、内容にあわせて話せる人に回してくれたりします。「この手の話は、社長でないと話せないので、お願いします」みたいに。ただ、この咄嗟のファシリテーション能力に期待してしまうとちょっと辛い。皆がその能力を持ち合わせているわけではないので(笑)。
なので、そうした人の存在を期待してしまうのも違うし、自分が巧みなファシリテーターになれるか? と言えば、難しかったり。そうであっても、ちょっとした気づきを反映した準備作業なら、心がけ次第でできると思うんです。
T
ネゴも含めて準備の大切さ、ですね。
田代
ただ、正直、葛藤もあります(苦笑)。
準備の度合いを高めすぎてしまうほど、自由な意見が出てこないんじゃないか? その懸念はあります。アドリブ上手な人っていますよね? そうした人が作り出す会議の楽しさは捨てがたいけれど、それを言い訳に自分が準備をしないことを避けてほしい。準備があったからこそ、その場の豊かな意見交換につながった形を作り出してほしいです。
ちょっとした準備をやっておきませんか?
田代
「マーケの強化書」では、ここ1年で、池田朋弘さんやカトウヒカルさんといった、外部の有識者へのインタビューも行ってきました。
田代
インタビューと会議は違いますが、お二方とのやり取りからも、インタビューの場への適切な臨み方に通じるエッセンスを感じています。池田さんやカトウさんに共通するのが、「マーケの強化書」編集部から事前に送った質問リストに対して、事前に返答を用意してくれたことです。
T
GoogleドキュメントやEvernoteなどで、あらかじめ返答内容を共有していただきましたよね。
田代
私たちからは、「当日いきなり質問しても困惑させるだけ」といった状況を避ける目的もあって用意したら、それ以上の万全な準備をしていただいたわけです。
お二方ともそれだけでありません。関連する参考資料の情報も共有や、取材用のサンプルデータの用意、具体的に話を進めやすくするための材料の準備など、プラスアルファも用意していただきました。それらは見事な対応でした。
T
こうした準備のおかげで、インタビュー当日も順調に、かつ盛り上がる時間を過ごせました。
田代
こうしたプロのお二方の対応は理想です。僕が一番伝えたいのは、どの会議にも“何時間もかけて準備せよ”ではありません。わずかな時間でいいから、会議の目的や自らの立ち位置を整理し、ちょっとした準備の習慣化を勧めたいのです。これは対面だろうと、リモートだろうと、会議の参加にあたって共通して言えることです。
まずは「これからの1週間、一度やってみませんか?」といった、小さな一歩を踏み出してみましょう!