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安達裕哉さんインタビュー Vol.3  あえて令和の時代に「上司飲み」!?

2023年の国内ビジネス書籍部門第1位(日本出版販売調べ)を記録した『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者、安達裕哉さんへのインタビューシリーズ。今回が第3弾です。第1回は「頭のいい人」について、第2回は「傾聴」の重要性について、それぞれ話を進めてきました。今回はビジネス上のコミュニケーション力をどう鍛えるといいか、について考えていきます。よもや安達さんからは、「上司と飲もう」という驚きの提案も! コンテンツの最後には、前回に続き書籍制作の裏話(その2)も公開しています。

目次

相手の言葉を言葉通りに受け取るな!

田代


今回は、ビジネス上のコミュニケーションで悩んでいる人に向けて、話を進めていきたいです。

安達


コミュニケーションの極意とは「相手が聞きたいことを話す」に尽きる、と考えますね。

田代


ここまでの話と通じています。

安達

過去の2回を通じて、「相手が聞きたいことが何か」をちゃんと理解しないといけない、という話をしてきました。その理解がないと、相手との会話が噛み合わないわけですから。ここでさらに念頭に置いてほしいのが、話した後の相手の反応です。相手が自分の話を理解しているなどとは思わないこと! 例えば、自分が話したことに相手が「いいね!」となっても、どのことを「いいね!」としているのかは、検証が必要です。

田代


自分の話している、どの箇所に相手が共感したのか?

安達

そうです。この点は、めちゃくちゃ用心深くしてください。私はよく「相手が聞きたい話」をして、相手から「よくわかりました」と言われても、「(その相手は)本当はわかっていないんでしょ?」と疑うようにしています。つまり、「相手はわかっていない」という前提で動かないと、誤解が誤解を招くからです。こういう場合、今度は相手に「自分(=相手)が話したいこと」を話してもらうわけです。

田代


ここで「傾聴」ですね。

安達

おっしゃる通りです(笑)。相手を前に、自分はひたすら聞きます。すると、相手の誤解がだんだんと浮かび上がってきます。この点を誤解して、先ほどの発言につながっているのだな、とか。相手から「いいですね! 面白いですね!」と言われて、間に受けて喜んでいちゃいけない。ちょっと保留しましょう。第2回で「傾聴」とは「理解すること」と言ってきましたが、「傾聴」とは「相手の言葉を言葉通りに受け取らない」とも言えます

田代


ちょっと用心深くというか、性格悪いくらい疑わないといけないわけですね。

コミュニケーションを極めたいなら上司と飲め?!

田代

今の話にしても、日頃からコミュニケーションを鍛えておけるかにかかわると思います。じゃあ、どうやって鍛えるといいのか? 特に若年層を意識して考えると、ある程度の舞台が整っていないと、動きたくても動けない心理が働くのではないか、とも思っています。

安達


うんうん、なるほど。

田代

理想は自らの判断で若手であろうと動いてほしいのですが、コミュニケーション力を鍛える、もしくはアウトプット力を鍛えるには、具体的にどうしたらいいのか? 実際にどういうことをすべきかを指し示すところまでしておくと、ようやく若い人たちが動ける部分があると思っています。

安達


でしたら、一番いい方法がありますよ! 若いみなさん、ぜひ上司と飲んでください

田代


ほう、この令和の時代に(笑)

安達

そうです(笑)。負荷のかかるコミュニケーションの場に自らを投じてください。上司との飲みを特に勧める理由は、同年代の人たちとのコミュニケーションではコミュニケーション力が鍛えられないからです。思考が似た者同士の場を避けて、鍛えられる場数を踏んでほしいのです。

田代


年齢が近いだけでも気は楽だし、似た者同士で話をしていれば、ちゃんと理解していなくても理解した感じで話ができますしね。

安達

そうなんです。要は、鍛えたいならバックグラウンドの異なる人とコミュニケーションせよ、です 。コンテキストを共有していない相手の話を聞くことは、かなり難しいことですよね? 極端に言えば、たまたま通りすがった、まったく知らない人と話をするのは、相当な難易度のあるコミュニケーションです。

田代


ただし、若い世代が敬遠しがちな場です。

安達


上司はその最たる1人(笑)。自分と明らかに立場や考え方が違う。上司と積極的にコミュニケーションを取ることが、コミュニケーション能力を上げるコツです

飲むのが苦手なら食べに誘いましょう!アルコールの力がなくても美味しいものは人を饒舌にさせます
コミュニケーション能力を鍛えたいなら、上司と飲みましょう! 誘われるのを待つのではなく、自分から誘ってみませんか?

面倒見のいい上司では練習にならない

安達


上司と話す機会を持つと、言葉を選ばないといけません。ごく普通の状態からして、ストレスかもしれない(笑)。でも、それがいいわけです。

田代


そういう機会を自分で作れるか。

安達

自分でそうした場を作って、自分から接していかないと鍛えられません。もしくは、お客様、取引先の相手ですかね。お客様もまた、自分とはコンテキストがまったく違います。お客様を相手に、言っていることを100%理解しようとするのは、かなり難しいことです。

田代


会社の似た者同士で飲んでいるようじゃ、トレーニングにはならない!

安達

「何の練習にもならないよ」と、ただの飲み会ですから(笑)。楽な相手と話をしている段階で。若手なら、上司がいない人はいないでしょう。他の部門も入れたら上司は無数にいるだろうし、外に出ていく部門でしたらお客様もたくさんいらっしゃるはずです。

そこで「傾聴」をすること! 究極のコミュニケーションの鍛錬の場です。1時間もやればどっと疲れるでしょう。ヘトヘトになる。それがいいのです。

田代

過去の自分のことが思い出されます(笑)。よくしてもらった上司に、マンツーマンでプレゼンのやり方だったり、人前での話し方だったり、当時はその時間が嫌で嫌で仕方なかったですが、随分とよくしてくれていたんですよね。

安達


そういうことです(笑)。

田代

ここでもう少し聞きたいのが、上司はたくさんいるかもしれない。でも飲みにも付き合う、面倒見がいい上司や上司のような存在がいまや絶滅危惧種ではないかな、とも思っています。

安達

その点、面倒見がいい上司であれば、無理して飲む必要はありません。むしろ自分にとって面倒見の悪い人と行くのがいいんです。バックグラウンドに共通点がない人と行くほど、コミュニケーション能力をフルに働かないと会話が成り立ちません。努力しますよね?

田代


徹底的に「負荷のかかる場数を、自らの意思でたくさん踏んでいこう!」ですね。

安達

ただし、今の時代は上司から部下を誘うシチュエーション自体がNGなので、待っていても誘われることは少ないでしょう。でも、自分から誘うことはできるじゃないですか? 若手から誘えば、そうそう断られないとも思うので。鍛えたい人は自分から動く(誘う)こと!

田代


誘われた上司も嬉しくなって、お財布が緩むこともありそうですね(笑)。ありがとうございます!

書籍の裏話その2:合気道の精神がコミュニケーションの極意に通じる?

田代

安達さんには、書籍に載せなかった「幻の原稿」の存在も教えていただきました。書籍全体だと約16万字の原稿を用意して、半分の約8万字を削ったのが今の書籍『頭のいい人が話す前に考えていること』だそうですね?

安達


担当編集者とも相談しながら、まあ、がっつり削られました(笑)。

田代


中でも合気道の話を丸ごと削除した、とうかがいました。

安達

本書が伝えたいことと合気道には、とても通じるところがあると考えて、かなりの文字数で原稿を用意していました。

合気道は勝つことを目的にしていません。合気道とは相手を認め尊重する精神で成り立っています。相手との会話もそうじゃないですか? 勝つために会話をしているわけではない。これは、私が目指すコミュニケーションの究極の姿に非常に通じているぞ、と思ったのです。

合気道には「後の先」という言葉があります。相手の動きを見ながら自らが対応する「後の先」の考え方は、相手が話したことに応じてこちらが話すというコミュニケーションの原則に通じています

田代


今の説明を聞くと、たしかに共通点が感じられますね。

安達

本書で私が説くコミュニケーションとは、自分が話したいことを話すのではない。相手が発した言葉を継承して、相手に聞かれたことと相手が聞きたいこと(=話してほしいこと)を話す。これがコミュニケーションの極意だと思っていますが、合気道の考え方にとても似ています。当初は本書で1章分を用意して、原稿もできていたわけです(笑)。

田代


安達さんは合気道をやっていたのですか?

安達

実はまったくやっていなくて、ですね(苦笑)。実際に合気道をやっている教室を見てまわったり、関連書籍も読み込んでいましたが、自らが経験者でない点も気になって…。よりリアリティのある話として盛り込めるのか、という判断が加わると、削るしかなく…。「合気道的コミュニケーション」という言葉を作ろうとしたんですけどね(笑)。

次回は・・・

安達裕哉さんシリーズの最終回です。安達さんからは、自らの能力を伸ばしたいなら、常に評価を受ける立場に身を置くことを勧めています。

『頭のいい人が話す前に考えていること』

安達 裕哉著

出版社 ‏ : ‎ ダイヤモンド社
発売日 ‏ : ‎ 2023/4/19
ソフトカバー ‏ : ‎ 338ページ
ISBN ‏ : ‎ 978-4478116692

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