「新規顧客が増えたら、既存顧客が減った?」継続的に顧客を増やすためにマーケティング担当者が注意すべきポイント
去年の流行語大賞は、どんな言葉だったか覚えていますか?
2017年の流行語大賞は「インスタ映え」と「忖度」でした。
流行語大賞で選ばれた言葉はその後何年にもわたって使われる言葉もあれば、翌年には全く使われなくなる言葉もありますよね。
これまでのキーワードを振り返ってみるとほとんどが使われなくなったキーワードばかりです。
・2012年 – ワイルドだろぉ~
・2013年 – 今でしょ!
・2013年 – お・も・て・な・し
・2013年 – じぇじぇじぇ
・2013年 – 倍返し
・2014年 – ダメよ~ダメダメ
・2014年 – 集団的自衛権
・2015年 – 爆買い
・2015年 – トリプルスリー
・2016年 – 神ってる
・2017年 – 忖度
・2017年 – インスタ映え
・2018年 – そだねー
・2019年 – ONE TEAM
「ダメよ~ダメダメ」懐かしいですね~(笑)いまは何をしているのでしょうか???
また、ここで私は一つ疑問を抱きました。
『一時的な流行に終わるものと、継続的なものにはどんな違いがあるのか?』
皆さんもそんなことを思ったことはないでしょうか。
この「一時的流行」と「継続的流行」の2つには、流行した当初は一見違いはなさそうに見えるのですが、いつの間にか消えてなくなるものと継続的なものに分かれています。それは「いつの間にか」であり、いつからかはハッキリしません。
もし、この違いを見分けることが出来れば、自社の製品サービスを「一過性で終わらせるのではなく、継続的に利用して頂くためのヒント」になるのではないか?と考えました。最近、若い年代の人たちがinstagramの利用を辞めているというニュースがありました。一定数まで顧客が増えたのに、徐々に退会してしまう人が増加している。そんな状態にある製品サービスを運用しているマーケティング担当者には特に役に立つかと思います。
「一時的流行」=「ファッド」
「ファッド」という言葉をご存知でしょうか?Wikipediaから引用させて頂くと下記のような意味になります。
急激に普及し、あっという間に消えてしまう流行を、ファッド (fads) と呼ぶ。1990年代後半に数か月だけ流行した「たまごっち」は好例であろう。いっぽうで、長期にわたり流行し、その社会に定着する流行を、ファッションと呼ぶ(例:ジーンズ)。出典:wikipedia
「たまごっち」懐かしいですね(笑)。知らない人もいるかもしれないので詳しくはこちら。
他にも1990年代にコギャルの間で流行したガングロや厚底ブーツなどもこの「ファッド」にあたります。
これら「ファッド」はどうして発生するのか?そして、なぜ急速に縮小していくのか?について記載した論文が去年開催された「マーケティングカンファレンス2017」で発表されました。そのタイトルは「なぜ、ファッド群が起こるのか~腐女子の質的研究~」です。
今回はこの論文を紹介しながら、なぜファッドが起きるのか?なぜ縮小するのかについて説明して、継続的に利用してもらうためのヒントを探りたいと思います。
どのように「ファッド」は発生するのか?
腐女子(詳しくはこちら)は、消費意欲の高い消費者として注目される一方、非常に流行の移り変わりが激しい消費者であり、腐女子の間では繰り返し「ファッド」が発生していると言われています。そんな「ファッド」の真っただ中にいる腐女子にインタビュー調査を実施し「ファッド」がどう起こり、どのように縮小していくのかを研究したのがこの論文です。
この研究では「腐女子」は主に2つに分類することが出来ると言っています。「ノマド型」と「定住型」の2つです。「ノマド型」は、飽きっぽいタイプで、複数の作品に熱中していて、興味がなくても試す人たちのこと。一方、「定住型」は、1つの作品に対してのめり込むタイプで、興味のある作品以外は無視する人たちのことです。
これら腐女子の間で「ファッド」が発生する場合、「ファッド」は、最初から腐女子全体に広がるのではなく「ノマド型」の腐女子だけにファッドが発生することが分かったそうです。つまり、「ファッド」は、飽きっぽいタイプで複数の作品に熱中している人、いろんなことを試す人たちから発生している。そして、「ファッド」が発生することで「定住型」の人を呼び込みさらに人気が拡大していくのだそうです。
これは、マーケターの人からすると、「イノベーター理論」を思い浮かべた人も多いと思います。「イノベーター」「アーリーアダプター」という流行に敏感で新しいものを進んで採用する人たちから流行が始まるという現象と似ていますね。
どのように「ファッド」は縮小するのか?
そして次に、「ファッド」が縮小するとき何が起きているのか?ですが、この研究では、ある作品の人気が高まることによって「迷惑住人」が現れ、「ノマド型」の人たちが一気にその作品から離れていくことでファッドが縮小していくと述べています。人気が高まると様々な人間が集まりコミュニティが形成されるわけですが、多くの人間が集まれば集まるほど「迷惑住人」も増えてくる。そのような「迷惑住人」が目立ち始めると、「ノマド型」の人は「迷惑住人」と同じタイプの人として見られたくないと感じたり、迷惑住人と関わらないように行動するそうです。それによって「ファッド」が急速に縮小していくと述べています。
面白いですね。これをそのままマーケティングに当てはめるとすれば、流行が縮小する原因は、製品サービスなどにあるのではなく、それら製品を利用する人たちで作られるコミュニティの状態によって左右されるということです。特に流行に敏感な人たちにとって他の人たちと一緒にされるのが嫌という気持ちは分からないでもありません。このような現象はアイドルファンの中でも起こりやすいといったことも言っていました。
そういえば、最近のニュース記事で「インスタおじさん」が増えて若者がinstagramから離れているようなことが話題になっていましたが、この研究と似たようなところがあるかもしれません。もし、このまま「おじさん」のinstagram利用が増加してしまうと若者の利用者は減少してしまう可能性があるわけです。そいういう意味ではinstagramは、おじさんを新規顧客として取り込みつつ、若者も継続利用してもらうという難しい舵取りを要求されるのだと思います。
増え始めた「インスタグラム中年」と繋がりたくない若者の心理
http://diamond.jp/articles/-/90062
マーケティング担当者が考えるべきは「お客様の気持ち」
マーケターの皆さんにとっては、この研究がそのまま役に立つというわけではないかもしれません。しかし、この研究から読み取れる大切なことは、顧客が減少する原因として、製品サービス以外の要素もあり得るということではないでしょうか。自社製品サービスを幅広い人たちに興味を持ってもらうことはとても大切なことですが、その製品サービスを既に利用している人たちの気持ちを尊重しなければ一気に離れていくこともあり得るということです。特に、他の人から利用しているところが見える製品サービスは、気を付ける必要があるはずです。新規顧客を集めるためのコミュニケーションが既存顧客に悪い影響がないか?確認すべきでしょう。
我々マーケターは、自社製品サービスがどんな人に支持されていて、どのような感情を持っているのかを十分に知っておくべきです。安易なコミュニケーションの変更は思いもよらない結果を引き起こす可能性があります。現状を踏まえた上でどう顧客を増やしていくのかを考えるべきなのだと思います。