デジタル時代にどう人を動かすのか?~「行動デザイン」を学ぶ〜(連載中)

デジタル時代にどう人を動かすのか?~「行動デザイン」を学ぶ~ 「行動デザイン」とは何か?

今回から、マーケティングを考える上で非常に重要な要素である「行動」にまつわるあれこれについて考えていく連載がスタートします!


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第1回は、「行動デザイン」というキーワードについて、成り立ちとともに言葉の裏に潜む狙いを解説。おそらく読者の中には「行動デザイン」という言葉を初めて目にした人も少なくないのではないでしょうか?本連載では、マーケティングを考える上で非常に重要な要素である「行動」にまつわるあれこれを、読者のお仕事のヒントになるように整理して説明していきます。

目次

「行動デザイン」? なんだったっけ、それ?

「行動デザイン」。

多くの読者には、「どこかで聞いたような気もするが、はて?」という感じだろう。聞き慣れない言葉なのは、それもそのはず。このキーワードは、博報堂行動デザイン研究所が2013年に考案・商標登録した「造語」だからだ(筆者は2019年3月まで、同研究所で所長を務め、現在もフェローとして活動)。その後、研究所としていろいろな発信を重ねたので、前よりは「行動デザイン」は浸透してきているように感じるが、他の多くのマーケティングのキーワード、例えば「アイドマ(AIDMA)」や「ブランディング」などに比べれば圧倒的に認知度は低いだろう。そして、実はそこがまさにチャンスなのだ

例えば、検索サイトで「行動デザイン」と検索すると、最上位に博報堂行動デザイン研究所のサイトが表示される(2019年10月時点)。今日、生活者は忙しいので、ヒットした検索結果の順位が上位のサイトしか見ない人が多い。検索結果が1ページ目のなるべく上位に表示されるかどうかは、企業にとってまさに「生命線」である。そのためにはまだ手垢の付いていない、まっさらなキーワードを打ち出さなくてはいけない。

ありそうでなかった言葉を見つけよう

ところが、企業はここで時々、間違いを犯してしまう。手つかずのオリジナルな言葉を選ぶあまり、耳慣れない新語を採用してしまうのだ。耳慣れない言葉は覚えにくく、当然、シェアもされにくい。そうなると、せっかく探し出した好キーワードが、社会に生存することが難しくなってしまう。

「行動デザイン」は、見ての通り、「行動」と「デザイン」の二語を足した造語だ。どちらもごく日常的な単語なのに、その組み合わせはなぜか、2013年時点でまだ世の中にほぼ存在していなかった。この、「ありそうなのに、意外になかった組み合わせ」の発見こそが、実は成功するマーケティングの本質なのだ

「それぞれは普通の言葉なのに、意外になかった組み合わせ」には、どんなものがあるだろうか。「大人」と「ふりかけ」の組み合わせ(大人のふりかけ)、「子ども」と「店長」の組み合わせ(子ども店長)など、けっこう多くの事例が見つかるはずだ。例えば、なぜ「子ども店長」が新鮮に響いたのだろう? それは、みんなの脳内で「店長」というステレオタイプ(典型的なイメージ)がすでにできあがっており、一般には「子どもっぽくない人」が想起されやすいからだ。「店長さんいますか?」と言いながら子どもの姿を探す人は稀だろう。

こうしたイメージの連想は心理学では「スキーマ」と呼ばれている。スキーマとは脳の中の記憶と知識のネットワークのこと(例えば「店長スキーマ」は、「店長」にまつわるさまざまな体験や出来事、関連するイメージが連鎖したもの)。人は自分の手持ちのスキーマを参照しながら世界を読み解いているのだ。

送り手が期待するほど、受け手は動かない

新たな情報(刺激)が外から入ってきたとき、それが手持ちのスキーマとどれくらい一致度があるかによって人の脳の活動量が変化するといわれている。不一致なほど情報としては新奇性があるわけだが、それをちゃんと情報処理するにはエネルギーがいるので、途中で諦めてしまうことが多い。逆に、完全に一致する場合は情報としての新しい刺激がない状態なので、これはこれで注目する価値なしとしてスルーしてしまう。結局、脳が一番活性化するのは、「適度に不一致」なときだと言われている。
「ありそうなのに、意外になかった組み合わせ」が、まさにそれだ。その「適度な不一致」感に人は強く反応し、「え? それってどういうこと?」と思わず引き込まれてしまうのだ(こうした心理は「スキーマ一致効果」と呼ばれている)。

スキーマ一致効果

行動デザインは、「人を動かす」という一点に全エネルギーを注ぐタイプのマーケティング手法なのだが、他のすべてのマーケティングと同様、受け手にちゃんと受容されるコミュニケーション設計(ただし広告的なコミュニケーションとは限らない)が土台になる。

人は意外に保守的で、まったく新しいものには距離を置く。すでに記憶の中にある馴染みの連想と結びつかない新しい情報(言葉や概念)はほぼスルーされる、と覚悟しておいた方がいい。特に受け手の情報処理意欲や体力が低下しているときはなおさらだ。集中力をもって情報を処理する作業は、実は想像以上に体力(脳のエネルギー)を必要とするからだ。
そして、現代人はだいたい忙しく、疲れている。送り手が期待するほど受け手(消費者・顧客)が動かない、反応しない理由はここにある。まず、このような受け手の状況を正しく認識することが、行動デザインのいろはの「い」だ。

イノベーションとは「既存の価値の新たな組み合わせ」!

昨今、経済成長が停滞する中で「イノベーション」の重要性が声高に叫ばれている。イノベーションと聞くと何かすごい発明が必要と思ってしまうが、イノベーションとは「既存の価値の新たな組み合わせ」である。この世に、本当に新しいものなんて、そうそうない。あったとしても逆にそれはあまりにも唐突で、社会にとっては受け入れ難いものだろう。
早期に結果が求められるマーケティングにはそんなものは馴染まない。「大人のふりかけ」も「子ども店長」も、そして「行動デザイン」も、「既存の価値を今までにないやり方で結合させた」という意味で、立派なイノベーションなのだ。

企業の中で多くの人は毎日、「新しいことを考えよ、新しいことに挑戦せよ」とハッパをかけられているだろう。でも、本当にまったく新しいことを発想するのは簡単ではない。そもそも、そんなことは普通の人には無理だし、無謀だ。期待されているのは「知っていること同士の新しい、今までになかった組み合わせ」なのだ。その「新しい組み合わせ」を封じ込めているのは、実は上司でも役所でもなく、「常識」とか「定石」と呼ばれる自分の心の中の自主規制であることに気づけば、きっとあなたの毎日は変わっていくはずだ。


國田
國田 圭作(くにた けいさく)
嘉悦大学経営経済学部教授、博報堂行動デザイン研究所フェロー(名誉所長)、セカンドクリエーション代表。博報堂時代は大手自動車メーカーをはじめ、食品、飲料、化粧品、家電などのマーケティング、商品開発、流通開発などを多数手がける。
著書に『幸せの新しいものさし』(PHP研究所)『「行動デザイン」の教科書』(すばる舎)


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