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目指すべきはデジタル化よりも変革・改革~DXのあり方を考える

近年、弊社への企業のご相談の多くは、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」をテーマとしたプロジェクトとなっています。コロナ禍の現状も後押しとなって、企業の取り組み姿勢がここ数年でより積極化してきていると感じる一方で、業務のデジタル化(Digital)による効率化・生産性の向上に重きが置かれており、新たなビジネスの創出・変革、競争優位性の確立(Transformation)というDXの本来の目的は二の次に回されているケースがいまだに多い実情であるように感じています。

目次

業務システムリプレイスのご相談

先日、弊社に大手企業の業務システムリプレイス案件についてご相談がありました。リプレイス検討の背景には、既存システムの老朽化、外部/内部システムとの連携の取りづらさ、システムのレスポンスの遅さなどにより業務効率が上がらないことが問題視されるようになってきたこと、また何より同社社長から基幹システムも含めてDX化を推進するようにお達しがあったことで業務システムリプレイスの具体的な検討が進み、今回のご相談につながりました。

企業からはシステム構成・実装機能・他システムとの連携実態など、現行システムに関する簡単な概要情報が提示され、まずはプロジェクト推進予算を確保する必要があるため、業務システムリプレイスに関わる概算予算とスケジュールについて提案してほしいとのご依頼でした。

プロジェクトは3段階にフェーズ区分がなされており、まずは「業務効率化とコスト削減」から始まり、次に顧客アプローチ強化による「売上改善」、最後に「顧客満足の向上と受注率の改善」という流れでプロジェクト推進が計画されていました。

違和感のあるプロジェクト化の検討アプローチ

オリエン内容から考えると、業務システムのリプレイスは必須だと感じましたし、フェーズ区分も全く違和感はありませんでした。ただ、プロジェクト化を検討するにあたり、既存のシステム実装機能を基にリプレイス検討を進めるのは、ストレートに書くと本末転倒のように感じたのも事実です。言い換えると不満・不備・不具合のある「As-Is(現状)」をベースにシステムを考えるのではなく、「To-Be(あるべき姿)」を定義した上で新しいシステムのあり方(構成・データなどの構造・機能/非機能・画面)を検討するアプローチで進めない限り、必要なリソース・適切な予算/スケジュールを提示することが難しいのではないかと感じたからです。問題解決が表層的な部分になってしまうと本質的な解決にはつながらない可能性をはらんだプロジェクトとなってしまうなと。そういう懸念がありました。

そこで弊社では、予算・スケジュール提案の前に、既存のシステムだけでなく、運用者のITリテラシーや運用オペレーション実態なども踏まえて業務効率化をどう実現していくか、またビジネス成果を上げるためには、同社のお客様にどのようなコミュニケーション(ターゲット・タイミング・メッセージ・チャネル)を展開するかの方針を定め、それを実践するためにはどのようなデータをどのように取得・蓄積・連携していくべきか、目的・成果視点/システム視点/運用(オペレーション)視点で先に整理することの重要性をご説明させて頂き、先行プロジェクトにおいてシステム要件を具体的に検討・整理していくことになりました。

「DX≠データ化、テクノロジー導入」ではない

DXというと、データ化・テクノロジー導入に意識が高まり、目的化してしまうケースが多くみられますが、本来の目的である「業務のデジタル化による効率化・生産性の向上」「ビジネス成果の創出」をどう実現するかを基点に検討することが重要です。

業務効率や生産性は、情報のインプット・アウトプットの操作性・わかりやすさ・活用のしやすさなど、利用者の利便性や満足度を高めるユーザーエクスペリエンス(UXの視点が重要となりますし、ビジネス成果(売上などの増加)を生み出すには、新規・既存のお客様との接点づくり、興味や行動を喚起させるための魅力・期待づくり、お客様に適した刺激や提案を通じたカスタマーエクスペリエンス(CXの質を高めることへの取り組みが必要です。つまり、DXを推進するということは、各種データやテクノロジーを活用しながら、UXやCXにおける改善・最適化を同時に行い、競争優位の確立とビジネスの成果・生産性の最大化を目指す取り組みになるのだと考えます。

また、DXでは「仕組み化」という言葉もキーとなります。新規・既存のお客様との接触(コンタクト)コミュニケーションや業務の一連の流れ・手順(プロセス)顧客情報や行動履歴(データ)データに基づくアプローチ(刺激・提案)の自動化(仕組み化)により、ビジネスプロセスの効率化、顧客獲得の強化を実現する環境づくりをすることも、DXにおける重要な側面であるでしょう。

UX、CX、DXの捉え方

UX、CX、DXの違いについては、インターネット検索をすれば多くの記事を見つけることができると思いますが、マーケティングコンサルタントとしての筆者の捉え方は下記の概念図のようなものとなります。

新規や既存のお客様との接点づくりや、そのお客様の心を動かし、好意形成や購買行動などに突き動かす(Motivation)のが「意識・行動喚起」を担うCXの領域。お客様が情報に接している際の不満・不安・不明・不具合など行動の障壁や摩擦となり得るものを極力排除(Frictionless)して、円滑な流れでお客様の「目的達成(満足醸成)」を担うのがUXの役割。また、デジタル化・データ利活用により、今まで煩雑だった業務の自動化などにより「ビジネスプロセスの効率化(Process Efficiency)」を実現したり、CXやUXの顧客獲得に関わる業務を「仕組み化・加速化(Acceleration Process)」する役割を担うのがDXと区分しています。

【CX】

・ターゲットとしたいお客様へのアプローチや接点はどうすればつくることができるだろうか?
・お客様に期待する行動をとってもらうために、お客様の気持ちをどうすれば高めることができるだろうか?

【UX】

・お客様が求める情報にたどり着きやすくなっているだろうか?わかりにくい/使いにくいところはないだろうか?
・資料請求やお問い合わせなどお客様が行動する際に、不安を極力取り払った上でスムーズに行動してもらえる状態にあるだろうか?

【DX】

・時間のかかる調べものや入力作業など業務効率や生産性を上げるために自動化・機械化を考えられる部分はないだろうか?
・お客様の獲得や行動喚起の領域において、お客様の見込み度の判別やコミュニケーションプロセスなどにおいて自動化・仕組み化を検討できる部分はないだろうか?

2023年に暦が変わってまもなく1カ月が経過しようとしていますが、このような問いを通じて自分たちがやるべきことを改めて確認をしながら、気持ちを新たに「飛躍の年」を駆け抜けてみるのも良いかもしれません。


執筆者:山本 知拓

株式会社ジェネシスコミュニケーション
執行役員


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