なぜ注目を集めているのか「ブロックチェーン」とは?
「ブロックチェーン」は、以前なら暗号通貨(仮想通貨)を支える技術として、現在はより広範な用途のために大きな注目を集め続ける技術です。技術自体を理解するのが難しいので、利用するメリットとなるとさらに想像しづらく、“よく聞くけれど、どのような技術なのか”を理解している人は多くありません。ここでは、マーケターとして最低限押さえておきたいブロックチェーンについての基礎知識をまとめています。
ブロックチェーンを支える4つの特徴
ブロックチェーンは、もともと暗号通貨のBitcoin(ビットコイン)を支える技術でした。2008年、サトシ・ナカモトと名乗る人物(グループ)によって通貨の取引を担保するために生み出された技術を指します。
大きな特徴は、以下の4点です。
1 情報の信頼性がとても高い
2 自律分散システム
3 データの改ざんが非常に困難
4 システムダウンに堅牢
ブロックチェーンは、通貨の取引記録を保存するために生まれた技術ですから、データ(情報)の信頼性が非常に重要になります。データの信頼性を高めるために、ブロックチェーンで採用されているのが、自律分散システムです。以下をご覧ください。
従来型の中央集権型システムだと管理者が一元管理するのに対して、自律分散システムはシステムの参加者全員が自律して取引履歴をコピーし続けています。仮に悪意を持ったユーザーがデータを書き換えたとしても、他のユーザーすべてがコピーされたデータを持っているので、書き換えられたデータを発見し、訂正が可能です。
例えば、AさんがBさんに10万円を送った際に、Aさんのパソコン(PC)には「10万円を送った」記録が残っているけれど、BさんのPCには「5万円を受け取った」記録しかなければ、誰もそのような暗号通貨は使いません。そうしたことがないようにする技術が、ブロックチェーンです。
ブロックチェーンに期待されること
ピンと来ない人からすると、AmazonやGoogleが提供するクラウド型のデータベースと「何が違うの?」となるかもしれません。それらのデータベースは、サービス提供者がいて、ユーザーがいるという構造です。そのため、極論ですがサービスの提供者がデータを消去したり、改ざんすることが可能です。
一方でブロックチェーンだと、サービス提供者とユーザーという垣根がなく、全員が同じデータを持つため、誰であってもデータの改ざんや消去ができません。しかも、自律分散システムであることで、誰かに障害があってもすぐに復旧が可能です。
このような特徴を背景に、ブロックチェーンはデータの書き換えや消去ができないメリットを持ち、システム障害にも強いのです。そのため、通貨の取引に止まらず、技術の応用が期待されています。
例:
オンライン広告でのインプレッション数やパブリッシャーの管理
著作権など権利の管理
食品のトレーサビリティ(追跡可能性)
行政手続きや投票など、行為を正しく記録する必要があるもの
etc.
ブロックチェーンのデメリット
ブロックチェーンのデメリットは、逆説的になりますが、データを消去・変更できないことです。例えば、個人情報などのデータをブロックチェーンで利用した場合、変更・消去ができませんし、ブロックチェーンを使うすべてのユーザーに暗号化されているとはいえ、その個人情報が共有されることになります。
また、データを消去できないため、データは巨大化の一途をたどり、処理時間が増大していきます。そこで、処理速度を上げるためにブロックチェーンでは、パブリックチェーンとプライベートチェーンという2種類が存在します。
パブリックチェーンは、誰でも参加できるブロックチェーンで、処理速度の問題が発生します。一方のプライベートチェーンは、分散環境でありながら、ブロックチェーンに参加するために管理者などによる承認が必要になります。参加者数の管理や悪意あるユーザーのスクリーニングを行うことで、処理速度を担保できます。
NFTとは何か?
ここまでブロックチェーンのおおよそを説明してきました通り、さまざまな分野での活用が期待され、実際に進み始めています。中でも最近注目を集めているのが、NFT(Non Fungible Token : 非代替性トークン)です。
NFTとは、アートや音楽などのデジタル資産にブロックチェーン上で所有証明書を発行し、本来いくらでもコピー可能なデジタル資産に、現実世界のアートのような固有価値をもたせています。
例えば、Twitter創業者のジャック・ドーシーの初めてのTweet(ツイート)が約3億円、アメリカの電気自動車メーカー・テスラの創業者の1人であるイーロン・マスクが出品した音楽作品には約1億円の値がつくなど、固有価値を持ったデジタルデータがNFTアートとして大きく注目を集めています。
NFTは次のような特徴を持っています。
1 固有性
2 取引可能性
3 相互運用性
4 プログラマビリティ
1〜4について解説します。デジタルデータに固有性をもたせるものがNFTです(1)。NFTを利用することで、ブロックチェーン上で誰でも該当データを閲覧・検証することができます。偽物を本物と偽って売買されてしまうことがなく、安全性の高い取引が可能になります(2)。上記の例で言えば、ジャック・ドーシーの初Tweetが誰のもので、その所有権が誰に渡り、今誰が保有しているかなどのデータを閲覧・検証が可能です。
さらにNFTの規格は共通化されています。その規格に準拠しているものであれば、さまざまなマーケットプレイスで利用できます(3)。また、取引数量の制限や手数料など、さまざまな機能をデータに追加すること(プログラムできること)も可能です(4)。
一言でまとめると
ブロックチェーンを中心に、ざっと一通りを説明してきました。
ここまでをまとめておきます。ブロックチェーンおよびNFTとは、従来なら簡単にコピーできることがメリットであったデジタルデータに対して、唯一無二である証明を付与することで新たな価値を生み出すもの、と理解しておきましょう。
次回は・・・
ブロックチェーンやNFTを、実際にビジネスの現場でどのように活用し、どういう効果が出ているのかを紐解きます。
野澤 智朝(のざわ ともお)
現役マーケター。「ニテンイチリュウ」運営者。デジタルクリエイティブ、デジタルマーケティングに関するメディアで連載を担当してきたほか、各種記事の寄稿多数。
・マーケの強化書では マーケターのためのデジタル・トランスフォーメーション(DX)入門 他 執筆。