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マーケティングコンサルタントから見る「ブライダル業界」

40代中盤ともなると、同年代の友人の多くは家庭を持ち、結婚式に出席する機会はほとんどなくなりましたが、運動不足解消のために通っているテニススクールで仲良くなった一回り以上年下の友人が結婚することになり、先日久しぶりに結婚式に招待されました。
挙式場はローソクと綺麗な生花が並べられたバージンロードが準備され、アカペラで外国人のゴスペル歌手が歌い、BGMはヴァイオリンの生演奏、フラワーシャワーでの送り出し。
披露宴では、入退場やお色直しの際のイルミネーション演出や光る液体に浮かぶキャンドル、シャンパンタワー、テーブルフォト、グランドピアノで奏でるBGM、高く積み上げられたケーキタワー、プロフィールビデオや結婚式当日のスライドショーなど、都内有名ホテルで執り行われた挙式・披露宴は、お二人の「特別な日」を盛り上げるこだわりの演出が満載で、まさに豪華の一言でした。

このような豪華な結婚式を挙げる人は最近減少してきていると言われています。結婚披露宴を行わず、役所に婚姻届を提出するだけの「ナシ婚」という言葉も生まれており、ブライダル市場の成長性を危惧する声が聞かれるようになりました。これからのブライダル市場は本当に衰退してしまうのでしょうか? それに対する打ち出はないのでしょうか?このあたりを本日は考えてみたいと思います。

ブライダル業界の現状

矢野経済研究所が実施した2017年のブライダル市場に関する調査によると、挙式披露宴・披露パーティ、新婚家具、新婚旅行、ブライダルジュエリー、結納式・結納品、結婚情報サービスの主要6分野を対象とした2016年のブライダル関連市場規模は、前年比99.3%の2兆5,290億円で縮小の見込で、挙式披露宴・披露パーティ市場をはじめ関連市場すべてが縮小しています。総務省統計局の人口動態調査では、2015年の婚姻件数は635,156件(前年比98.67%)の結果で、結婚する人も減ってきているのが実態です。

少子化・晩婚化・婚姻組数減少・入籍のみの「ナシ婚」・家族や近親者だけで会食する「少人数婚」の増加など、ブライダル業界の現状や先行きは厳しい状況にあります。近年のハウスウェディングの人気や晩婚化による1組あたりの挙式単価上昇、コスト圧縮などの企業努力によりブライダル企業大手の業績は何とか堅調に推移していますが、これから先の成長は予断を許さない状況にあるのは間違いありません。

ブライダル事業成長の糸口は?

婚姻組数減少やお客様のブライダルに対する価値観の変化は、ブライダル企業にとって頭の痛い現実です。しかし、少し視野を広げてみると暗い話題だけではないようです。
株式会社リクルートマーケティングパートナーズの「婚活実態調査2017」によると、2016年に結婚した人の11.3%は婚活サービスで相手を見つけている上、その割合は年々増加傾向にあります。3年前の2013年と比較して2.4倍の結果となっており、「結婚願望がある人は多い」ことがわかります。
また、20代・30代の婚活サービスへのイメージはポジティブで、身近なものになりつつあって、婚活サービスを利用することへの抵抗は低いことから、「結婚に至る可能性」は以前よりも高まっているのではないでしょうか。
恋愛を楽しむことよりも、結婚という目標を達成するための効率性を考えるようになってきているのかもしれませんね。

挙式スタイルの変化にも注目してみましょう。
仲人を立てて挙式の段取りを進める昔とは異なり、現在の挙式スタイルは多様化しています。「あるべき婚」から自分らしさを重視する「ありのまま婚」への移り変わりで、様々な挙式スタイルが生まれています。

事業成長のキーワードは「多様化への適応」と「コミュニケーションの活性化」

これだけ挙式スタイルが増えてくると、結婚したいと考えるお客様が、検索ワードで「〇〇〇〇ホテル挙式」と特定施設名を入力する場面はどの程度あるのでしょうか。もちろんゼクシーなどの結婚情報誌で施設情報詳細を確認した人や、過去にその施設に訪れたことのある人、挙式検討が進んで既にいくつかの施設を絞り込んでいる人は、施設名を指名検索することはあるでしょう。しかしそれ以外の場合は、どの挙式スタイルにするか/どの施設で検討を進めるかは決まっていないでしょうし、各スタイルの特長/予算イメージ/挙式体験者の声など知識を広げるための情報を収集したり、一軒家の邸宅で結婚式を行う「ハウスウェディング」や「海外ウェディング」など挙式場所や種類で情報検索する行為が通常なのではないかと思います。

最近では、海外から日本を訪れて結婚式を挙げる「インバウンド婚」の取り込みに力を入れる自治体が増えています。沖縄県を例に挙げると、2016年に1,867組の外国人観光客が挙式をあげ、約45億円のインバウンド収益が得られているようです。
京都では、「和婚」を挙げる外国人の誘致のために、京都府ほか京都の地元婚礼会社、京都仏教会、京都府神社庁が「和婚受入協議会」を2014年に設立しています。

上記のような国内・海外を含めた多様化するお客様に対して、企業は適切なサービス・コンテンツの提供やコミュニケーションをどの程度行えているでしょうか?お客様に合わせて適切な応対ができているか否かは、「見込み客の顧客化」に大きな影響を及ぼすことになるのではないかと考えます。見込み客の顧客化の後押しのために、マーケティングオートメーション(MA)を導入してお客様コミュニケーションを拡充したり、結婚式費用を一時的に立て替えるサービスを提供する企業も出てきており、各社ともマーケティングを強化する動きを見せ始めています。
また、最近様々な企業で活用が活発化しているスマホアプリを提供できれば、以下のようにお客様の利便性や満足度の向上や収益を拡大する機会づくりを実現できるかもしれません。

現在のように市場が縮小傾向にあり、お客様やニーズが多様化している現在において、「利益を上げて生き残っていく」には、収益源となるお客様の獲得は絶対条件となります。そのためには、結婚情報誌からの集客を期待するだけでなく、自らお客様を自ら獲得することを積極化していく必要があります。
「お客様の支持を得て・獲得し・収益拡大するために何をしていくべきか?」
“売れる仕組みづくり”に真摯に向き合い取り組める企業が、現在の厳しい市場環境で生き残って成長していける企業となるのではないでしょうか。


執筆者:山本 知拓

株式会社ジェネシスコミュニケーション
執行役員


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ジェネシスのマーケティングプロフェッショナルが編集を担当。独自の視点で厳選した実践的ナレッジをお届けいたします。

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