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販売代理店に売上依存しないBtoBマーケティング

昨年末にあるIT関連企業から、「販売代理店に売上を依存する体質からの脱却」をテーマに、自社の商流を形成していきたいとのご相談を頂きました。今までは売上の殆どが販売代理店経由であったため、直接エンドクライアントと繋がることはなく、販売代理店から求められた製品を適宜提供(卸す)する形で事業継続してきていました。
そのようなスタイルから、リソースの多くは代理店営業に割かれ、Webサイトを含む対外発信情報は、製品の特徴やスペック、機能一覧、導入実績などの「カタログ的」な情報に終始しており、同社を知らない見込客(エンドクライアント)が、同社が提供する情報に到達することが難しかったり、興味を持ってもらう/資料請求などの行動を起こしてもらう「きっかけ」「魅力」が不足している実態にあります。
販売代理店に依存する現在のスタイルでも事業収益は十分に出ているため、ビジネスとしては成り立っている状況ですが、製品クロスセルや充実したサポートで、収益やクライアント満足度をさらに高めるためには、自社でエンドクライアントとの直接的な接点を持つことが重要という判断に至り、今回のご相談に繋がっています。

自社の商流形成のために何から取り組めばいい?

「自社の商流形成」といっても、今までエンドクライアントに直接アプローチするマーケティングに取り組んできていないため、何から手を付けて良いのかわからないという状況から、打ち合わせをスタートしました。エンドクライアントとの直接接点を持つといっても、「誰を相手にしていくのか」が定まらないと、製品・流通・価格・プロモーション戦略の「4P」を構築することもできません。まずは「ターゲット」を明確化することが重要です。
同社のターゲットは、「SMB(Small and Medium Business=中堅・中小企業)の情報システム部」を想定しているとのことですが、本当にそのターゲティングは有効なのでしょうか?
SMBの情報システム部といっても、IT活用・導入に関する戦略・計画・実行・プロセス/品質管理の全てに責任を持つ戦略的ITマネジメントを所管する企業もあれば、IT導入の意思決定は経営層やビジネス部門が行い、購買部門的な役割やIT運用管理をメインとしている企業など様々な状況において、「情報システム部」で一括りのターゲット設定することは、無理があるのではないでしょうか?

ニーズに着目する

企業のIT活用・導入は、リスクヘッジや業務効率化、多様性への対応など、現在直面する様々な「不」を解消したいというニーズが、情報システム部に限らず生じることが発端であることが多いと考えます。その欲求を満たす手段として、具体的な製品・サービスが求められる(ウォンツ)とすると、所属部門でターゲットを設定するよりも、SMB(中堅・中小企業)が抱える悩みや課題、不具合・不都合は何で、どのようなことが求められているのか(ニーズやウォンツ)を深堀りして考える方が、マーケティングの基本となる「STPプランニング」を適切かつ効果的に行えるのではないでしょうか。

【STPプランニング】
・セグメンテーション(市場における共通の性質やニーズのかたまりをつくる)
・ターゲティング(その中でどのかたまりを狙うのかを決める)
・ポジショニング(そのターゲットに魅力的にみえる打ち出し方を考える)

例えば、セキュリティ製品を扱うIT企業を例にすると、SMBの情報システム部をターゲット設定して、単に同社の製品情報を提供するのではなく、情報セキュリティやIT資産管理に課題を抱えるSMB(セグメンテーション)の中で、多様化・減少化する労働者、IT技術・IoTなどの発展、競争の激化・グローバル化、コスト削減、設備の老朽化などの直面する喫緊の課題に対し、積極的に取り組む(情報セキュリティやIT資産の管理レベルを高めて改善の可能性を模索する)SMBをターゲットに、どのような魅力や競争優位性のある価値提供をするか(ポジショニング)を考える方が、具体的な施策展開に繋げていけるのではないでしょうか。

ターゲットアプローチや獲得をどう考えるか?

前述のターゲットが高い関心を寄せる喫緊の課題に関わるキーワードでリスティング広告を展開することで、効率的なターゲットアプローチを行うことは勿論、「働き方改革を推進するための情報セキュリティ対策」「テレワークにおける労務管理とセキュリティ対策のベースライン」など、企業が直面している課題に関するテーマでオウンドメディアコンテンツ(記事)を定点的に執筆・公開することも、見込客の集客や獲得の有効策であると考えます。
また、関連するEXPO出展自社/共催セミナーを積極的に開催したり、イベントやセミナーで集めた名刺をリードとして管理して、メールなどでの定点的なコミュニケーションを行ったり、Webサイトの閲覧度合いや見込度に応じてマーケティングオートメーション(MA)ツールを活用した行動促進やナーチャリングコミュニケーションの自動化を検討することも可能です。見込客の自己解決力を高めたり、お問い合わせのしやすさのために、チャットボットや有人チャットの導入も検討できるのではないでしょうか。

BtoB商材は、BtoC商材と比べて高価格で、導入への責任や失敗のプレッシャーが大きいことから、提供情報への接触は「慎重」になる傾向にあります。慎重な姿勢の見込客に行動を起こしてもらうには、これは間違いなく良い製品であるという「確信」を持ってもらうことが必要となります。
また、BtoB商材の購入・導入は、様々な人が意思決定に関与することから、ある程度網羅的な情報をわかりやすく簡潔に伝達する意識を持つことも重要です。Webサイトなどで提供する情報は、以下6つのポイントを押さえておく必要があるのではないかと考えます。

施策評価・改善のための「見える化」

マーケティングは戦略を立てて施策を実行していれば良いということではなく、「目標」通りに成果を生み出せているかを定点評価を行う必要があります。PDCAという言葉があるように、現状の取り組みを可視化して、期待通りに推進できているか、ボトルネックや問題が生じていないかを評価をして恒常的に改善する環境づくりが必須となります。
当社では、「Googleアナリティクス(GA)」のマイレポートやカスタムレポート設定を行って、KPI/KGIに基づく効果検証を行うことが多いですが、ウィジェットの見え方がシンプルであったり、外部システムデータの読み込みができないなどの限界もあることから、最近は「Googleデータスタジオ」を活用しています。
Googleデータスタジオでは、GAデータを表示・閲覧できることは勿論、注文・お問い合わせなどの基幹システムのデータやMAのメール配信・反応データを、CSVやスプレッドシート形式で取り込んで一緒に確認できるように、表示を自由にカスタマイズすることが可能です。データをビジュアルで「見える化」できるため、施策のパフォーマンス評価やボトルネックの特定を早期に行うことができます。

また、アクセスログでの流入キーワード評価に加えて、コンテンツマーケティングツールを活用して、一般ユーザーの検索キーワードの「共起語分析」を行うことで、見込客がどのようなニーズを持ち、どのような情報を求めているのかを可視化して、効果の期待できるコンテンツづくりに活かしていく取り組みも行っている。

BtoB、BtoCに限らず、マーケティングとは「売れるための仕組みづくり」と言われます。
お客様(相手)がいて成立するのがビジネスのため、対象となるお客様は “だれ” なのか、そのお客様が ”なぜ” 買うのか・買わないのか、“どうすれば” その商品やサービスが競合よりも良い/欲しいと感じてもらい、購買行為に繋げることができるのか?など、PDCAサイクルを繰り返して、目標達成(成果)にこだわったマーケティングを実践していけるよう、これからも日々精進していきたいと思います。


執筆者:山本 知拓

株式会社ジェネシスコミュニケーション
執行役員


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ジェネシスのマーケティングプロフェッショナルが編集を担当。独自の視点で厳選した実践的ナレッジをお届けいたします。

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