マーケティング施策で欠かせない!MAとWeb接客ツールの違い
マーケティング施策において、デジタルでの有力なツールと言えば、MA(マーケティングオートメーション)ツールやWeb接客ツールが挙げられます。両者は共通した特徴もあれば、それぞれの向き・不向きがあります。本来は、両者の特徴を理解し、施策ごとに最適なツールを選び分けて活用したいところです。そこで両者の特徴や違いについて、最低限押さえておくべき基本事項に絞って、まとめました。
どちらもCookieを使うツール
MA(マーケティングオートメーション)ツールとは、Salesforce Marketing CloudやPardot、Adobe Marketo Engage、HubSpot、SATORI、BowNow、Kairos3などが挙げられます。Web接客ツールだと、KARTE(カルテ)やKAIZEN PLATFORM、Ptengineなど各社がそれぞれの名称で提供しています。
両者の違いを説明する前に、MAツールとWeb接客ツールの共通点から説明します。両者は、Cookie(クッキー)を使って個人のWebブラウザ上の行動データを取得する点では、共通した技術の上に成り立つツールです。両者とも、Cookieを使ってWebサイト上やメールマガジンに関する行動、会員・購買ページ上の購入内容や個人情報などを取得できるだけに、違いを意識しないまま、どちらかをすでに導入している状況も少なくありません。
また、昨今はCookieへの規制について喧しいのも確かです。将来、Cookieが使えなくなると、両者のツールはそもそも実用が不可能になるか、大きな制限を被る(=現時点のような使い方ができなくなる)こともあわせて理解しておきましょう。
次からは、MAツールとWeb接客ツールの違いを中心に説明します。
MAツールとは?
MAツールは、ユーザーの情報を取得するのに主に2種類の方法があります。1つが、MAツールでWebサイト内に用意するフォームを用意し、フォームで取得できたユーザー情報をMAに格納していく方法です。もう1つが、MAツールからメールを配信し、ユーザーにメールをクリックしてもらう方法です。例えば、MAツール経由でHTML型のメールを配信して、ユニークなURLをクリックしてもらえば、個々のユーザー情報とCookieが連携されます。
連携によって何ができるのでしょうか? 以前までは、ユーザーに対してアンケートを実施し固定の件名でメール配信をしていたとします。それを、MAツールによって回答内容ごとに件名をカスタマイズしてメール配信を実施できるようになるので、以前よりカスタマイズ後の平均開封率が上昇するといったことが期待できます。MAツールが得意とする使い方です。
ただし、MAツールは匿名のユーザー対応に不向きなツールでもあります。例えば、MAツールで用意したフォームを通過していないユーザーや、メールアドレスと紐づけられていない相手のWeb行動の把握が難しいからです。仮に自社側でメールアドレスを大量に保持していても、MAツールのCookieと紐づいていなければ(つまり、MAのフォームを経由していない or MA経由のメールを開封していないユーザーのメールアドレスには)機能しません。
Web接客ツールとは?
Web接客ツールは、アノニマス(匿名)のユーザーを捕捉するのに長けたツールです。Cookie情報さえあれば、MAのようにメールアドレスがわかっていなくても、Webサイトに来訪したユーザーごとにコンテンツの出し分けが可能です。
例えば、Webサイトの特定のエリアに滞在したユーザーに対して、申し込みや問い合わせへと誘導するポップアップを表示することができます。もしくは、Webサイトへの来訪手段がメールか、各種のWeb広告か、ソーシャル広告か、来訪回数が初回か2回目かなどでも、表示するコンテンツの出し分けが可能です。
Web接客ツールは、Webサイト内のコンテンツやエリアに対して条件を満たした(例:複数回利用した、滞在時間が●秒以上etc.)ユーザーにフラグを立てやすいツールです。複数メニューが用意された多層構造のWebサイトほど、条件ごとのコンテンツの出し分けがしやすいでしょう。かわりに、複数ページの移動を前提としないランディングページだと、コンテンツの出し分けがしづらい側面も出てきます。
ツールの得手・不得手の理解が一歩
以上を整理すると、新規ユーザーについてテコ入れを図りたい、すでに多層構造で複数のコンテンツを実装するWebサイトには、Web接客ツールを優先して検討したいところです。
一方で、既存顧客向けプロジェクトの改善には、より個人情報を取得した状態で取り組めるMAツールが力を発揮しやすいでしょう。例えば、高単価な商材やLTVの長いサービスは、ユーザーごとのタイミングに合わせたコミュニケーションを設計しやすいMAツールが使いやすいからです。
ただし、実際は新規ユーザー対策にWeb接客ツール、既存ユーザー対策ならMAツールといった単純な使い分けでなく、プロジェクトごとで最適に判断する必要があります。そこに予算や時間、人的リソースなどの問題が加わります。私たちがよく現場で直面するのは、MAが一気に流行した時期にすでにMAツールが導入されたまま、という状態です。導入済みの状況があると、簡単に他ツールに乗り換えできない場合もあります。
次回から新シリーズがスタート
MAツールもWeb接客ツールも、それぞれ万能ではありません。両ツールの得意、不得意を把握した上で、自社が向き合うビジネスの方向性が「どちらのツールと相性がいいのか?」について、そもそもツールを採用すべきかという根本的なところから検討できるといいでしょう。
以上、今回は両ツールのアウトラインをつかむ基礎的な内容をまとめてきました。「マーケの強化書」では、何回かMAツールについては具体的に触れてきた一方で、Web接客ツールについてはMAツールほど触れる機会が限られていました。
そこで次回からは(2021年11月より順次公開予定)、実際の現場で「Web接客ツールがどのように使われているのか?」「導入後、最初にどのようなことをすべきか?」「MAツールと導入を迷う場合の判断は?」など、具体的な状況について実務に携わる人たちへインタビューを実施。それらの内容を通じて、ツールの検討方法や使いこなし方について明らかにしていきます。