ツールありきで導入すると失敗する?!Web接客ツールとLPの相性
実務を通じてWeb接客ツールが使いこなされている現場が少ないのでは?ということで、今回は、マーケティング施策が機能するためのWeb接客ツールのあり方について、実務に携わる3人が、Web接客ツールをランディングページ(LP)に導入する場合を例に挙げての鼎談の様子をまとめました。
- 杉田 ユウイチ株式会社ジェネシスコミュニケーション 代表取締役
- 田代 靖和株式会社ジェネシスコミュニケーション シニアプロデューサー
「マーケの強化書」編集長 - 岡山 昌仁株式会社ジェネシスコミュニケーション マーケティングディレクター
実はLP(ランディングページ)はWeb接客ツールに向いていない
田代
相談や問い合わせで多いのは、すでにWebサイトに何かしらのツールが導入されている状態です。「ツールを導入したけれど、状況が改善されません。何とかしてください!」というケースです。
杉田
以前のエントリー「マーケティング施策で欠かせない!MAとWeb接客ツールの違い」でも、Web接客ツールの導入先が複数コンテンツを備えるWebサイトなのか、伝えたい要素が一まとめになっているランディングページ(以下LP)であるかで、引き出せる効果に違いがあると言及していました。
岡山
その点は、個々のWeb接客ツールの違いでどうしても向き・不向きが出ますよね。ツールを導入する側が、そのあたりまで見抜いてツールを探すことはかなり難しいと思います。例えば、よくあるLPとしては、縦にスクロールしていく1ページものです。1ページ完結なのでWeb接客を設定する上では対応しやすい反面、デメリットもありますね。
田代
そこで今回は、LPとWeb接客ツールという組み合わせについて、もう少し突っ込んで考えてみたいと思います。
LPでの導入は、ツール側で細かな管理の覚悟が必要
田代
出発点としてLPを用意する背景を考えると、各種のデジタル広告からLPへと誘導して、LP内もしくはフォームへリンクさせてコンバージョンさせたいのが一般的な導線です。いろいろなタイプがありますが、なるべく複数のページを見せずにその場で完結してもらおうというページになるわけです。この場合何がWeb接客でできるのかといった話ですね。
岡山
ヒートマップ機能を持つWeb接客ツールであれば、視覚的にどこをどれほどユーザーが読んでいるかをヒートマップで表示することができます。ヒートマップでページ内でよく読まれた箇所を確認した上で次につながる改善策や、あまり読まれていない箇所を確認して構成を改変する対応がしやすいということになりますね。
田代
確かに。ヒートマップ機能を有するWeb接客であればそうした対応はしやすいですね。では、ヒートマップ機能を有していないWeb接客ツールの場合はどうでしょう?
そうした情報も取得できないわけではありませんが、スクロール率など数値による判断になってしまいます。滞在時間がどれほどあったか、スクロール率がどれほどあったかを数字で確認できますが、例えば、本当に「体験者の声」の箇所で長く止まっていたのか?たまたま手を止めて考えごとをしたり、席を外していた時に表示していただけかもしれません。
杉田
確かにそうだね。強い根拠があった上で次の一手を組みたいけれど、どこまでスクロールをして、どの箇所をゆっくり読んだのかについて、数字だけでは判断材料として限界がありますからね。
田代
これが公式サイトや企業サイトであれば、メニューごと、内容ごとにページが分かれていることが多いので、ユーザーが実際にページへ移動したかどうかという行動結果を判断にすることができます。行動結果を見て次の一手を打つ対象(ユーザー)がはっきりするわけです。ただ、LPの場合は、思想として1ページで完結させたい作りになっているため、公式サイトと同様のことをしようとすると、ある程度は数字を信じて割り切った運用をする必要があります。精緻に進めようとすると、LP内を細かく自分たちでセグメントに分けて管理するしかありませんが、かなり煩雑になるし負荷の大きな管理になります。
岡山
本来なら「負荷がかかってでも、WebサイトでなくLPにする理由は何?」「煩雑な管理を避けるためには、別のツールを検討するべきでは?」など、そもそもの出発点を問い直す必要がありますよね。
杉田
現場は予算や時間がなかったり、すでに先行してプロジェクトが進んでいたりするので、実際は現実を取り込みながら、ベターの選択が肝になります。そのためにも、ツールの向き不向きに関して最低限の理解はしておきたいです。
大事なのは、できることより「機能する」こと
田代
LPではなくてWebサイトへの誘導だと、「体験者の声」「価格体系」「商品詳細」「見積もり」などを別ページで用意しておくことになります。すると、各ページへの遷移にあわせて次の一手が出しやすく、例えば、さまざまな商品ページへの回遊ユーザーに向けて、アップセル対策も打ちやすくなります。
杉田
対外的に説明の受けがいいのは、視覚的に伝わりやすいチャットボットやポップアップなど、機能の一部の「できること」です。でも本当に肝心なのは、できることより「機能する」ことです。「トップページにチャットボットを置きました」という万(よろず)相談口を設けたところで、何も解決してくれないのです。
田代
過去にいろいろとテストもしてきて言えることは、チャットボットなら、ある程度サイト内行動などで絞り込みをしたユーザーに表示しないと、結構利用されないですね。「なんでもどうぞ」というチャットに書き込める勇者はあまり多くないと言うか。逆に、ある程度深く閲覧した結果のページで「それでも聞きたいことがあれば」と用意すると意外と書き込んでくれますね。
杉田
設計で大切なのは、特定の質問を誘発させる導線にチャットボットを搭載できるか、です。お客様の行動にあわせてレスポンスを投げかけていくという設計思想のもとで実装する必要があります。
「パフォーマンス」の意味を整理する
杉田
Web接客ツールにとって、改善したいWebサイトの「パフォーマンス」についても整理しておきましょう。
下の図をご覧ください。
杉田
「Webサイト内のパフォーマンス改善」と聞くと、真っ先に浮かんでくるのが「コンバージョン」です。だから、資料請求や問い合わせの数を獲得することばかりに着目しがちになる。実際は、他にも改善と捉えるべき内容(パフォーマンス)があるわけです。
田代
B2Cで言えば高額であるとか高関与な商品/サービス、B2Bで言えば部門内で利用するようなサービスを1回のサイト来訪でコンバージョンに導くのは正直大変です。「後で電話がかかってくるのか」と思われると、資料請求や問い合わせもなかなかハードルが高い。そうした際に「メールアドレスならいいか」みたいな「ライトなコンバージョンを用意しても良いのでは?」という話ですね。
クライアントさんと話をしていていつも不思議に思うのは、一消費者の自分だったら決してそこで「コンバージョンしないよね?」ということを「企画してほしい」と依頼されることが多いので……。
岡山
それぞれの目的に応じた改善内容を引き出しながら、さらにどのように次の施策へとつなげて実行するか、ということですね。
杉田
ツールとは、目的を達成するための設計を描き、設計を実現する手段のために導入します。繰り返しになりますが、視覚的にわかりやすい機能を搭載すれば申し込み数が増える(コンバージョンにつながる)という単純な話ではないことを理解してほしいです。
田代
本日はありがとうございます。