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【マーケター会議】メーカー出身者が語る! 顧客ロイヤリティを高めるCRMプロジェクト成功のポイント

製品の成熟化が進む現在の市場において、自社の製品を通じて顧客と長期的な関わりを持つことは、マーケティング戦略として非常に有効な考え方です。 そこで今回の「ジェネシス・マーケター会議」では、顧客と企業、顧客と製品ブランドとの関係性に着目したマーケティング戦略である「CRM(顧客関係管理:Customer Relationship Management)」について取り上げました。

今回は、過去に弊社杉田とCRMプロジェクトを推進したご経験のある、プリンターメーカーご出身でマーケティングコンサルタントの上田さんにお越しいただきました。元メーカー企業のマーケティング担当者としての知見をもとに、顧客との直接的な関わりが少ないメーカー企業が顧客とどのように関係性を築いていけば良いか、ということについてお話をお聞きしました。

  • 杉田
    杉田ユウイチ 株式会社ジェネシスコミュニケーション 代表取締役
    上田
    上田マロカ 合同会社シーキューブ・ユー 代表社員 「マーケの強化書」パートナー・コンサルタント
    赤沼
    赤沼悠介 株式会社ジェネシスコミュニケーション プロデューサー
目次
赤沼赤沼
今日は、メーカー企業にとってのCRMというテーマでお話させていただきたいと思います。 上田さんはかなり早い段階からマーケティング戦略としてCRMを取り入れていたそうですね。

上田上田
杉田さんと一緒にお仕事をさせていただいて、私がCRMのプロジェクトを手がけたのは2000年ごろからですね。国内ではかなり先進的な事例だったと思います。 ちょうどその時期は、システム会社がCRMツールや顧客分析のツールを盛んに提案したり、ブロードビジョンなどの1to1マーケティングエンジンの販売も開始されたりしていましたね。 今のMA(マーケティングオートメーション)ブームと同じように、当時は連日CRMのセミナーが開催されていて、私もマーケティング担当者としてかなり研究をしました。 当時のブロードビジョンはライセンスと初期開発だけで最低でも1億超えてしまうような、高価な買い物でした。

杉田杉田
Web上で個人に対してマーケティング戦略を行えるような技術が、当時は今ほど発達していませんでしたからね。 確かに、今のクラウド型のサービスと同じような価格ではなかったですね(笑)。

メーカーにとってのCRMの重要性と難しさ

上田上田
CRMが今非常に重要なのは、製品主導のマーケティングには限界があると感じるからなんです。 メーカーって、今でも変わりませんが、製品ありきでマーケティングが企画されています。ですが、ある程度競合他社の間で製品の開発や改良が進むと、製品主導のマーケティングではなかなか思ったように効果は出ません。

杉田杉田
最近は特にマスメディアや広告の効果が落ちてきていて、自分たちの製品の優れているところを伝えることが難しくなってきているというのもありますね。スマホやSNSなど、ユーザーが触れるメディアも多様化していますし。 ユーザーとの直接的な関わりはなかなか取ることが難しかったとしても、外部メディアに依存せずに自分たちで工夫して接点を持つ努力がメーカーにも求められているはずです。

赤沼赤沼
20年前も同じなんですね。 当時CRMへの投資はかなり高額なものだったと思いますが、それでもCRMに投資しようと決断された要因は何だったのでしょう。
上田上田
20年前のCRM企画の起点は、製品の差別化が容易でなくなってきたことから始まっています。 当時ですら、今までと同じマーケティング手法の効果はさほど高くありませんでした。

杉田杉田
製品の成熟化が進むと、競合製品との差別化が非常に難しくなってきますからね。 その中でも以前と同じ手法で製品自体を競合と比較して、その小さな差別化ポイントをユーザーに訴求する方法もありますが、ユーザーにその小さな違いを理解してもらうことはなかなか難しいでしょう。 やはり製品以外のところで顧客に魅力を感じてもらう必要があるわけですね。

上田上田
そうですね。そういう背景があって、メーカーとしては顧客との関わり方を変えたいという思いで、CRMの企画を始めましたね。

購買サイクルの長い製品におけるロイヤリティ戦略

赤沼赤沼
CRM戦略は顧客と良い関係性を築くための戦略だと思いますが、当時上田さんのいた会社の製品のように、購買後すぐには買い換えないような購買サイクルの長い製品に関してはどのような点を考慮されましたか。 こういった製品は継続的に売り続けていくのがとても難しいと思うのですが。

杉田杉田
当時のプロジェクトで力を入れていたのは、顧客のロイヤリティを高めるということですね。 お客様と会社が正しく向き合うことで、こちらのメッセージをしっかり受け止めてもらえるようになるので、購買を検討してもらいやすくなります。あとはお客様との心理的な距離を近づけることで、他の会社の製品と比較をするまでもなく選んでもらえるようになります。 ロイヤリティを上げるにはお客様と真摯に向き合うことと、お客様との距離感が重要で、これを作ることに尽力しました。

上田上田
お客様のロイヤリティを高めることで、会社との関係をよくして、買い換えを検討する時期になったお客様に「次も同じ会社の製品を買いたい」と思ってもらうこと。これを目指しました。 そして、次は会社に愛着を持ってくれるお客様を増やすためのコミュニケーションを提供しようと考えていましたね。

赤沼赤沼
なるほど。顧客にとって身近な存在になって、購買機会があったときにタイミングよく適切にアプローチしていく、ということですね。

杉田杉田
そうですね。ただ忘れてはいけないのは、顧客に競合企業や競合製品を完全に忘れさせることはできないということです。 ですから、CRMを行いつつ、競合との比較優位を考慮したポジショニング戦略も考えておく必要がありますね。 顧客にとってどんなに近しい存在であったとしても、自分たちが選ばれる(競合相手がいる)存在であることを意識しておく、というのが非常に大事です。

上田上田
まさにその通りです。製品は差別化がしにくいので、製品以外のところ、例えば顧客サービスの観点から自分たちが優れている部分をアピールする必要がありましたね。

社内にどうやってCRMを普及させていくのか

赤沼赤沼
CRMの戦略を行っていく中で様々なことを考慮されていたと思いますが、プロジェクトの進行という点で課題はありましたか。

上田上田
苦心したのは、やはりCRMの社内への理解獲得ですね。当時はCRMを知らない人がほとんどだったので。
杉田杉田
当時私の会社と上田さんの会社で合わせて200名ほどの大規模プロジェクトでしたから、全員の目線を合わせることが重要でした。私も経営会議に参加させていただいたり、スタッフを集めてグループワークをしたりして、草の根活動に尽力しました。

上田上田
関係者に対しては、本当に何度も細かく勉強会や論旨説明を行いましたね。 経営層からスタッフまで、様々な立場の人にCRMを理解してもらうの必要があって、なかなか苦労しました。 当時はMBAを取得した社員もいたんですが、彼らにCRMを正しく理解してもらうことも非常に大変でした。

杉田杉田
当時私たちが意識していたのは、学問的なCRMの理解ではなかったんですよね。それよりも、”顧客の態度や行動をどう変えることができるかを考えるための概念”としてCRMを浸透させたかったんです。 机上の空論ではなく、実際の顧客の心理を汲み取って戦略を考えられるチームを作る重要性があったと思います。

赤沼赤沼
それはファネルの設計をしっかりと行うことが重要になりそうですね。 製品のことを知っているのか知らないのか、興味があるのかないのか、など、顧客がどういった状況にあるのかを踏まえてCRM戦略をとる、ことが重要だったんですね。

上田上田
そうですね、自分たちが実施しているマーケティングプログラムはどんな目的でどんな効果が出ているか顧客をどのように変化させるのか、ということを意識しておく必要があると感じていました。

杉田杉田
その上で購買ファネルの次の段階であるインフルエンスファネルの中でも共感や愛着といった状況に顧客をどのように持っていくか、といったことがCRM戦略においては重要になります。
※インフルエンスファネルとは、購買後から共有してもらうまでのプロセスのこと。

グループでのCRM活動

上田上田
当時私のいた会社はメーカーですので、実際に製品を利用するお客様と相対しているのは、販売代理店がほとんどです。 ですから、このプロジェクトが開始されるまでは製品の実際の利用者(エンドユーザー)と直接関わることができるような接点はあまり多くありませんでした。 ただ唯一うちの子会社が故障時のカスタマーサービスやアフターサービスを通じて顧客とやりとりしていたので、そこを活用することにしたんです。
杉田杉田
CRMの活動を開始するにあたり、明確な顧客視点を持っている修理・アフターサービスを担当する子会社に対して、インタビュー調査と顧客データの内容精査を実施しましたね。 彼らは直接顧客とやりとりしており、かつサービスの品質が非常に高いため、顧客からのお礼状や製品に対するフィードバックが届くなどして、有益な顧客の生のデータを豊富に持っていました。

上田上田
実は、グループ内では修理・アフターの子会社は比較的陰の存在だったんです。 ただ、当時のプロジェクトを通じて、彼らが非常に高い顧客満足を獲得していることがわかったんです。

杉田杉田
彼らの提供するサービスやその顧客の反応からは学ぶところが多かったです。 顧客との距離感やどのように関わることが必要なのか、といった情報をCRMに活かしていく事ができましたね。

CRMプロジェクトにおけるパートナー選定

赤沼赤沼
CRMプロジェクトが非常に大規模だったとのことで、推進されるにあたり、様々なパートナーを検討されたとお聞きしていますが。

上田上田
パートナー選定は非常に熾烈でしたね。 大手戦略コンサルティングファーム、大手SIベンダー、広告代理店など、本当に様々な会社がコンペに参加しましたから。

赤沼赤沼
どのような基準で選ばれたんですか?

上田上田
結果として、CRMという戦略上重要な[顧客知]を最も熟知したダイレクトマーケティング会社を選定しました。 杉田さんがいらっしゃった会社です。 ただ、もう1つ決め手となったのは、提案者のやる気とか迫力ですね。大きなプロジェクトを推進するので、そういった意思を持った方でないとなかなか上手くいかないだろうと。

メーカーにおけるCRMプロジェクト成功の秘訣

赤沼赤沼
ここまでプリンターメーカーでのCRMプロジェクトの経緯をお伺いしてきましたが、そのご経験から確信したCRMプロジェクトを成功させる秘訣は何だとお考えですか?

上田上田
既存の戦略である「製品から考える企画」とCRMを中心とする「顧客から考える企画」の両面からアプローチすることが基本だ、ということですね。どちらか一方の手法だけを用いるのではなく、両側面から見ることが肝だと考えます。

杉田杉田
あとは、上田さんのいたメーカーのプリンターのような購買サイクルが長い製品の場合は、継続的なコミュニケーションを絶やさないようにするべきだということですね。 どのような内容で、また、いつのタイミングで顧客とコミュニケーションをとるか。これを念頭においたコミュニケーション戦略が非常に重要になります。

上田上田
次の購入機会を知るためには、直接購入機会を探らない方がいいですね。顧客に「次いつ購入しますか」と聞くよりは、継続的な関係性を築いた上で現在の利用状況を知り、「こういったものを購入するのはいかがですか」といったような提案をすることが有効だと言えると思います。 そういった手法でのマーケティング戦略が今後も変わらず重要だと思いますね。
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株式会社ジェネシスコミュニケーション

ジェネシスのマーケティングプロフェッショナルが編集を担当。独自の視点で厳選した実践的ナレッジをお届けいたします。

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