まだノルマで消耗してるの?ノルマ=公開記事数に潜む罠
運営のまもない時期や、運営のテコ入れで仕切り直しとなったタイミングほど、公開本数への意識が高まりがちです。
1カ月で●本、1週間で▲本といった目安を設けることが必ずしも悪いわけではありませんが、本数がノルマ化すると、運営上の歪み(ひずみ)につながりかねません。
今回は運営担当初心者が継続できるための、歪みを防ぐ建設的なメディア運営について考えます。
公開本数がノルマ化すると、悲劇が起きる?
運営担当者が気にすべき指標は、運営前の準備期間や運営がまもない時期ほど、正直設定しづらいでしょう。運営の初期は、いきなり満足なPV(ページビュー)やUU(ユニークユーザー)を確保できるわけではありません。直接的な成果につながる指標を掲げるのはよくても、指標の達成を強く期待する時期でもありません。
それだけに、身近でわかりやすい、月間や週間で区切った「公開本数」を指標にしたくなります。新たにメディアを公開する前の準備期間でも、記事本数を貯めておくことは可能で、指標としても成立します。運営に直接関係する/しないにかかわらず、人が外から媒体の状況を把握するのにわかりやすい目安だからです。
ですが、公開本数という目安があまりに社内での評価と一体化しすぎることは避けてください。
なぜ避けてほしいのか?公開本数に重きを置き過ぎると、本来ならもっと慎重に検討すべき記事について、検討が甘いまま公開に踏み切るなど、誤った判断が挟まれやすくなるからです。運営担当者から記事の中身を吟味する時間を奪いかねず、いずれメディア全体の質の低下を招きます。
「編集中の記事本数」を前向きな数字として評価する
本数が求められる状況は、原稿を仕上げる書き手にも伝染します。運営担当者が過度に催促し、書き手は推敲がままならず、締め切りに間に合わせるための原稿が提出されたら? 本数ありきの運営担当者は、精度が芳しくない原稿を前に適切な判断ができるのでしょうか?
運営体制で満足な人数がかけられない状況ほど実現してほしいのが、公開本数以外の、進捗の可視化/見える化につながる指標を設けて、かつ評価の対象にしてください。たとえば、「未編集の状態の記事本数」「編集中の記事本数」など、公開が確定した記事の前の状態についても、社内で数値を共有して、これらの指標が前向きな数値であると評価できる体制を作りましょう。
運営慣れしていないと、運営担当者側に原稿が届き出しても思うように記事の中身を精査できないかもしれません。1本の記事について編集が完了しないまま、次々に原稿が来てしまえば、最低限の言葉の間違いだけを確認して即公開、ともなりかねません。明らかに完成度の高い原稿や、即時性/速報性を求められる原稿を除けば、本来は一定の時間を要して運営担当者が原稿確認をして編集や加筆修正をし、時には書き手にリライトをお願いする必要も出てきます。
本数ありきが行き過ぎれば、運営担当者が本来やるべき行為をおざなりにしてしまいがちです。
「本数の目安を設けるな!」ではない
本数ありきは問題ですが、さじ加減は必要です。
まったく目安がないことも行き過ぎで、運営が形骸化しかねません。そこで、1つの記事に対する編集期間に目安を設けると、わりと妥当な、目安にしてもいい本数が見えてきます。
運営上のガイドラインとして、運営担当者に提出した原稿(ここでは社内から募った原稿とします)は、たとえば編集期間として2週間は必ず設ける、とします。仮に同じ時期に原稿が集中した場合は、集中していることを社内で共有して、原稿1本で2週間を目安にするなら、原稿2本だと編集が重なる時期も含めて3週間で、などが見えてきます。運営担当者の兼業状態、運営以外の本業をどれほど抱えているかなども含めて、進捗の見える化をしましょう。
※複数の記事が重なった場合、1本目の進め方を標準とするなら、重なっている期間は予備日を持つ余裕も加味し、並行作業で乗りきって下さいね。
※また編集者として慣れてくればくるほど、複数の記事を並行で動かすのが当たり前になってくるでしょう。
こうした作業で、もし1本2週間を当てはめた時に月間の公開本数が想定より少なくなる場合、現状の運営体制が明らかに人手不足だと考えた方がいいでしょう。人手の拡充が無理でも、担当者の兼業の状態を緩和したり、メディア編集経験者といった外部の力を借りるなど、限られた予算と体制の中で可能な打開策は講じてください。
運営に慣れていないなら、社内で運営担当者の負担の可視化も合わせて広めましょう。オウンドメディア運営の社内理解の浸透こそが急務です。
よほどの余力がない限り、運営担当者が執筆を兼ねないこと
ここまでの話である程度推測できるとおり、オウンドメディア担当者自身が、公開本数を稼ぐために記事の執筆を兼ねるのは、あまり現実的ではありません。運営規模が小さいほど、運営体制の1人のスタッフの兼業が重なりがちですが、執筆の伴わない運営業務に専念してください。
記事の扱いだけを考えても、書き手への依頼だけで一定の労力を要します(参考記事:「狙い通りの原稿を書いてもらうために。依頼用の共有シートを作ろう」)。運営担当者としてやるべきタスクは多く、1記事に関する業務だけでありません。ここに執筆業務が加わると、肝心の運営に目が行かず、1記事の原稿にだけリソースが集中しがちに。それは回避してほしいのです。
運営とは、いかに組織化しながら継続的に破綻なく進めていけるか、です。運営業務の負担は、依頼や記事編集中のタスクなど、業務の見える化だけでは伝わりづらい箇所も数多くあります。繰り返します、オウンドメディアの運営で継続性を求めるなら、時間をかけて社内理解の浸透を促しましょう。
「編集中の記事本数」があれば、「さっさと公開」ではなく「きちんと原稿の質を保つ必要不可欠な行為」として、運営担当者の時間のかかり方含めて、徐々に前向きな(現実的な)理解が得られる体制を目指してください。
[初公開:2019年4月25日、再編集:2022年]
新米オウンドメディア担当者を応援しています。
編集に関する記事を連載中!こちらもおすすめです。
・新米オウンドメディア担当者必読!もう迷わない、ゼロからの原稿依頼術