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ゴル女を増やすマーケティング的思考

こんにちは、ジェネシスコミュニケーション代表の杉田ユウイチです。
先日「ゴル女ふやそう委員会」 にて、「女性マーケット獲得に向けたマーケティング勉強会」というテーマでセミナーを開催いたしました。今回は、その内容を「マーケの強化書」でも展開します。

目次

ゴルフを通じてマーケティングを学ぶ

「ゴル女ふやそう委員会」とは、女性ゴルファー増加を目的としてさまざまなゴルフ業界関係者の方々が集まっている会です。本イベントでは、ゴルフ業界において女性ユーザーを増やすためにはどのようにすればいいか、具体的な施策を出していくための考え方や検討の仕方について、これまでのマーケティングの事例を元にお伝えいたしました。

今回の記事では、女性ゴルファーの増加をテーマにいくつかの事例を取り上げながら、セミナーのテーマである「効果の出やすいターゲット設定」「新規顧客創出のためのソーシャル活用」の2点を中心にお伝えいたします。 獲得したいユーザーに対して適切なコミュニケーションを行い、マーケティング施策を成功に導くにはどのようにすればいいか、ゴルフ以外のマーケティングに携わる皆様とも一緒に考えてみたいと思います。

効果が出やすいターゲット設定とは?

ゴルフ未経験者に直接アプローチしてはいけない

マーケティング施策の成果を上げる 重要な観点の1つは、ターゲット設定です。自社の製品やサービスがそもそもどのようなターゲット設定をしているのか、適切なターゲット設定ができているのかが、ビジネスの結果である売上やユーザー数などを大きく左右します。したがって、理解しておくべきは「ターゲット設定をうまく行うためのコツを掴むこと」です。

女性ゴルファーを増やすという目的に対してマーケティング企画をおこなうケースを取り上げてみましょう。この場合、どのようなセグメントにアプローチするのが より効果的であると言えるでしょうか。

可能性のあるターゲットを設定する際に必要な概念としては「セグメント」が挙げられます。 セグメントの分け方として代表的なのものに、「新規顧客」か「既存顧客」か、といった考え方があります。一般的には、製品やサービスの価値をすでに評価してくれている既存顧客にアプローチする方が、いきなり新規顧客を獲得するよりも難易度が低く、製品・サービスの価値を維持することが可能です。

こうした企画をしてみると、意外と多いのが「まったくの未経験者に直接アプローチする施策を考えてしまうこと」です。

しかし、一度もゴルフをやったことがない人をゴルファーにするのは非常にハードルが高いことです。練習もしなければいけませんし、クラブやウェアなどのグッズも手に入れなければいけません。それよりも、一度でもラウンドしたことがある人を定期的にラウンドするように働きかけるやり方を考える方が効果的ではないでしょうか。さらには、年間3回ラウンドする人を5回ラウンドしてもらえるようにアプローチするやり方を考える方が難易度が格段に低く実現できる具体性を生みそうだということは容易に納得できるかと思います。
つまり、すでにゴルフの良さを知り、魅力を感じている人をより満足させる施策の方が、実現可能性が高いのです。

ただ、この場合だと既存顧客がよりゴルフ場を訪れるようになる流れは想像がつきますが、既存ユーザーのラウンド回数が増えているだけで、大目的としている「女性ゴルファーの増加」には繋がっていないように見受けられます。しかし、一見女性のゴルファーの増加とは関係がないように見える既存顧客へのアプローチですが、実は大きな可能性を含んでいるのです。実際に既存顧客に働きかけて新規顧客の獲得に繋がった事例をご紹介します。

新規顧客獲得のために「既存顧客への働きかけ」が有効な事例

あるプロ野球チームの事例で、チケットの売り方を工夫することで既存顧客を呼び水に新規顧客の獲得に成功したケースがあります。その野球チームでは、会場の人気のエリアから外れた座席を「ファミリーシート」として売り出しました。他の座席と比べて非常に安価ですが、単体での購入は不可で、3,4枚をセット購入する必要があります。また、ファミリーと名前が付いていますが家族でなくても購入可能で、友人同士での観戦も可能です。
このようなチケットの種別を増やす取り組みにより、年間観戦数が多い既存顧客が別の人を誘いやすく、観戦したことのない新規顧客が野球場に足を運びやすくなったのです。

横浜にある別の球団でも、数年前に球団が譲渡されたタイミングで、顧客の洗い出しをおこなっています。その際に注目したのが「アクティブサラリーマン」という層でした。データ分析において、この層が代わるがわる新しいファンを球場に連れてきてくれることを掴みました。仕掛けとして、その人たちが来てもらいやすい仕掛けを次々と投入しています。中には失敗したように見えた企画もありましたが、今ではチケットがとりづらい人気球団になっています。

同じことが、バスケットボールのBリーグでも言えます。Bリーグでは、「誘う人」という存在に着目し、この方々にどのような情報を与えるとどのくらい新規のファンが来場するかについての施策と検証を繰り返しているようです。

5回ラウンドする人が10回ラウンドする過程で、未経験者が初めてゴルフに行く機会が生まれる

こうした事例から、5回ラウンドする人が10回ラウンドする優良顧客になって行く過程に、未経験者が初めてゴルフにいく機会が生まれる可能性が多く含まれることがお分かりいただけるかと思います。まったくの初心者をいきなりゴルフ場に来てもらうようにするよりも、より自然に無理のない流れで新規顧客を獲得できる可能性があるわけです。

これで、年間5回以上ラウンドする女性ゴルファーを増やしながら、彼女らにゴルフ経験ゼロの友人や家族を連れてきてもらう、といった流れで女性ゴルファーを増やしていく施策が一つ考えられました。

では、新規顧客をゴルフ市場に連れてきてくれるようなターゲット層は、どのように探せばよいでしょうか。また、期待する結果を得るには、そのターゲット層に対してどのような働きかけをすればよいでしょうか。

新規顧客を獲得するためにソーシャルの活用

先にも述べましたが、新規顧客の獲得は非常に難易度が高いです。たとえば、まったくゴルフ経験のない人やゴルフを見たこともない人にゴルフをやろうと思ってもらうのは、単純に広告を打って認知させたり、価格を下げたりするだけではほぼ成功しないでしょう。

新規顧客の獲得成功につながる可能性が高いのは、顧客の生活に即した発信の戦略です。顧客の顕在的・潜在的なニーズをうまく捉えた情報を、顧客の日常に適した形で情報伝達することが効果的であると言えるでしょう。

現在は技術が発達したうえ、消費者は日常生活の中で常にインターネットに触れています。歩数や位置情報、ひいては睡眠などの行動データが簡単にデバイスに記録され、SNSで個人が情報を発信し、いつでも消費者は誰かとつながることが可能な時代です。このような状況下では、デジタルを活用した個人向けの情報発信が可能です。

企業が個人の情報を入手し、適切なターゲットに対して適切なタイミングで個人が欲する情報を提供することは容易に実現できます。だからこそ、消費者は情報の取捨選択に長けてきており、本当に自分に刺さるメッセージでなければ注意を払って受け取ってくれません。したがって、消費者の状況把握と情報発信の精度をあげる戦略が必要なのです。

ある女性用日用品メーカーでは、検索エンジンにおける「髪」に関するキーワードの調査を行い、特定の時期にキーワードの偏りがあることを発見しました。たとえば6月の梅雨の時期には、「梅雨」「湿気」などの特定のキーワードが「髪」と一緒に検索されると判明しました。そこでこのメーカーの湿気に伴う髪の悩みを持った消費者を想定し、地域別の梅雨入りの時期に合わせて広告を表示したり、各地の天気に応じた広告表示をしたりするなどのアプローチを始めています。

このようなピンポイントかつ特定の状況下の個人に即した発信が、消費者とのコミュニケーションを円滑にします。一方的な広告ではなく、より消費者の目線に立ち、感情に訴え共感を呼ぶような発信ができると、消費者の注目をひきやすいうえ、ソーシャルメディアでの拡散も行なわれやすくなります。
製品の魅力を実感している既存の顧客に寄り添い、彼らが魅力を発信するのを後押しできるようなコミュニケーションこそ、新規顧客の獲得につながる鍵であるといえるでしょう。

まとめ

今回はゴルフ市場の女性ゴルファー獲得を題材に、ターゲット設定の重要性と、新規顧客創出のためのコミュニケーション手法としてのソーシャルの活用を取り上げてお伝えいたしました。マーケティングの成功事例は多々ありますが、成功の鍵となるのはやはり「適切なターゲット設定」であると言えるでしょう。

自社の製品やサービスの魅力を理解し満足してくれているユーザーを通じて新規客を獲得していく。すでに獲得出来ている顧客を活用して新規客を獲得すべきなのです。製品中心(いわゆるプロダクトアウト)でマーケティングがおこなわれてきたゴルフ業界が、顧客の獲得という視点で動き始めました。注目していきましょう。

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杉田

執筆者:杉田裕一

式会社ジェネシスコミュニケーション
代表取締役社長/マーケティングコンサルタント


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株式会社ジェネシスコミュニケーション

ジェネシスのマーケティングプロフェッショナルが編集を担当。独自の視点で厳選した実践的ナレッジをお届けいたします。

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