コト消費でもサブスク? ゴルフのサブスクが成功するかを考える
皆さんはゴルフをされますか?コロナ禍で宴会が減っていることもあり、密にならないゴルフはコース、練習場とともに好調なようです。
今回は、そんなゴルフのサブスクリプションサービスであるGolf Round Subscription TeeRexについてマーケティング的な視点から考えてみたいと思います。
※TeeRexは2024年9月30日で、一般会員向けのTeeRexサービスを終了しました。
■2024年3月5日から、株式会社NTTドコモが、ゴルフラウンド月額定額サービス「GOLF me!」を提供開始。
■同日、「TeeRex」NTTドコモ社との協業プロジェクトをスタート。
サービス紹介
今回着目したゴルフのサブスクサービスについてご紹介します。
株式会社オフィスワイズが運営するGolf Round Subscription TeeRex
TeeRexは、年会費59,800円で、平日のプレー費が無料となる年間契約型のサブスクリプションサービスです。2021年6月1日にサービスを開始した新しいサービスで2022年1月現在では関東圏を中心に14コースでプレーすることができます。
最近では、ゴルフトーナメント中継にてテレビCMを展開しているので、ゴルフ好きの方はご存じかもしれません。
TeeRexの話が社内の会議で出た際に、ゴルフをしない女性社員から『月額で59,800円ですか?』と聞かれました。それだけゴルフ=プレーが高額というイメージがあるようです。ゴルフ場でのプレーは高額というイメージを払拭し、あらたなターゲットを掴むことができるのか興味が尽きません。
さて、この59,800円の年会費にはゴルフ場での飲食代やキャディーフィー、ゴルフ場利用税、ゴルフ場への交通費は含まれておりません。厳密には年会費だけ払えばプレーできる訳ではないのですが、ゴルフを始めたばかりの方、例えばスコア100切りを目指しラウンド回数を増やしたい方には魅力的な金額設定だと思います。
サブスクについて
改めて、サブスク、サブスクリプションについてマーケティング用語としておさらいをしましょう。
サブスクリプション(subscription)略:サブスク
商品やサービスを「定額制」で利用でき、好きなときに解約できる。
商品を「所有する」のではなく、一定期間「利用する」ビジネスモデル。
ソフトウェア使用料、電子書籍の読み放題サービス、音楽配信・動画配信サービス等の支払い方法としても導入されている。
従来の定額制やリースと比べると、利用期間内にサービスもバージョンアップされていくのが特徴的。
サブスクと聞くと、サービスへの気軽さからいつでも解約出来るという認識を持たせやすいため、利用者のサービス加入への障壁は低くなります。
従来のゴルフ場にも存在していた『複数のゴルフ場で利用出来るゴルフ会員権』として売り出すのではなく、『ゴルフ サブスクリプション』と言う打ち出し方をしたことで、「これからゴルフを始めてみよう」、「ゴルフをプレーしてみたい」と言う潜在ニーズへ届き、ゴルフ場でのプレーの間口を広げていく可能性は大いにあると思われます。
今回のサービスを深掘りして考える
それでは商品の対価である年会費59,800円について深堀していきましょう。あなたなら何回ゴルフ場でプレーすれば元がとれると考えますか?
ゴルフに慣れている方であれば、自分のラウンド実績やゴルフ場からもらえるクーポンなどから計算出来るかもしれません。プレー費はゴルフ場によってピンキリですが、関東近郊少し距離が遠めなコースであれば平日1回のラウンドが5,000円~6,000円あたりが相場です。この相場から計算すると、1年間で平日に10回行けるか?が1つの目安になるでしょう。
仮に行けるとすると、次はゴルフ場への予約が気軽にできるかがカギになるでしょう。2022年1月現在では14コースと対象ゴルフ場はまだ少ないため、会員の増加と予約枠のバランスによっては、サブスクと謳っていても予約が取りづらくなってしまいます。そうなると利用者としてメリットを感じにくいかもしれません。
利用できるコースが広がらないことには予約枠も増えていきません。サブスク利用者の拡大につれて予約しにくさも高まってしまうため、利用者のメリットを損なわない=ある程度プレーを希望するタイミングで予約を提供できるかは利用者満足度の視点では大事なポイントになりそうです。
TeeRexのターゲットは1つではない?
クライアントのマーケティングと日々向き合う我々としては、この魅力的なサブスクサービスの将来性や可能性を考えてみたいところです。
- このサービスは誰向けなのか?
- ターゲットにサービスは認知されているのか?
という、ターゲティングとリーチの問題です。
一見、初心者向けかもしれませんが、ある程度プレー経験を積むと、新たなコースやトーナメントを開催するような有名なコースでプレーしたくなるというのがゴルファーです。こうしたゴルファーの特色を考慮したターゲット/サービス戦略をとることができるかもしれません。
例えば、
TeeRex Advance
少し金額を高めに設定し格式高いゴルフ場でプレーができるプラン
TeeRex School
コースレッスンなどを加えて少しでも早く確実に上達するプラン
のような展開は大いに考えられるでしょう。このサービスのターゲットがゴルファーとしてどういった成長を経ていくのかを合わせて考えるとサービスの拡大含め伸びしろがありそうです。
ゴルフの初心者は、誰かに誘われない限りゴルフ場には訪れにくいため、今後どのように初心者を集めるのかといった点は考える余地がありそうです。
※ゴルフのターゲティングの話は、こちらの記事でもお伝えしている通りです。(ゴル女を増やすマーケティング的思考)
また、逆の立場、コース側の立場でも考えてみる必要があります。コース側の立場からすれば、TeeRexに参加することで、ゴルフ場への集客経路の1つが確保でき、既存の集客を脅かす存在になるのかという点が大きなポイントです。ゴルフ場の予約枠には上限がありますので、拡大を感じることができればTeeRex予約枠の拡大に繋がるでしょう。
ユーザーの拡大とゴルフ場の拡大。両輪がうまく回ることがTeeRexの広がりのカギになりそうです。
TeeRexというゴルフのサブスクを通じて、既存の1人で予約が出来るサイトや、ゴルフ好きが集まるコミュニティ以上の魅力をTeeRexが発信していけるのか?は今後の課題になっていくかもしれません。
まとめ
Golf Round Subscription TeeRexは、今後のゴルフ人口を増やす1つのきっかけとなるでしょう。
今後、他のゴルフサービスとの連携や、追随してくるサービスが生まれるかが、ゴルフサブスクリプションのビジネスとしての損益分岐点を見定める1つの指標になりそうです。
一人のゴルフ好きとして、ゴルフ業界の活性化に向けて、引き続き楽しみに見守っていきたいですね。