~新規客の相談を増やすには~「量」の追求 or「質」の改善?
最近新しくお取引が始まった企業(2社)において、「新規顧客からの相談を増やす」という共通するテーマに対するアプローチを紹介してみたいと思います。
「新規顧客からの相談を増やす」それぞれのご相談
1社目は広告サービスに強みを持つ受託会社で、新規顧客からの相談を増やしたい企業に対する提案書を作成してます。ご提案の中心は、同社が狙うターゲット顧客が多く集まるメディアにおいて、積極的に広告展開していきましょう!という集客強化のアプローチとなっており、メディア毎に広告メニューと広告料金が表組みで一覧化されている内容となっていました。
2社目はBtoBサービスを展開する事業会社で、新規顧客からの相談を増やすための施策として、現行サイトのデザインを全面刷新し、自社の強みやサービスについてわかりやすく紹介する理解促進をテーマとしたサイトリニューアルとMAの導入について具体的に相談したいとのご連絡を頂きました。
「新規顧客からの相談を増やす」という目的に対して、集客を強化したり、理解を深めてもらうことは重要なテーマだと思います。しかし、それらの施策だけで期待する成果を生み出すことに繋がっていくのか?という点について、少し考えてみたいと思います。
「量」の追求
1社目が提案する「広告による集客強化」は、顧客になりそうな可能性のある人たちが多く集まるメディアで積極的に広告を露出することで、興味を示して行動してくれる人の広がりを期待することができるという「量」を追い求める考え方です。アプローチする人たちが多くなれば、顧客になる人の割合が変わらないとしても、結果的に顧客となる人は増加することに繋がるというものです。
広告によって集客を強化する考え方は、マーケティング強化において重要な視点の1つではありますが、いくつか問題があります。
1つは、「どうやってターゲット顧客の興味を惹くのか?」という視点。クライアント企業の競合も当然同じ課題を抱えているため、新規顧客を獲得すべく広告展開を積極化している状況にあります。その競争の中でターゲット顧客に自社を選んでもらうには、どのようなメッセージ(訴求)をどのようなクリエイティブ(魅せ方)で表現すべきか?について熟考する必要があります。
また、広告は掲載されている間は集客強化が実現できますが、広告掲載が終了した時点で集客は減ってしまう一過的な解決策のため、「継続的な集客を期待するには、広告を出し続けなければならないのか、広告以外の打ち手はないのか?」という点も並行して検討する必要があるのではないでしょうか。
「質」の改善
2社目のサイトリニューアルは、自社の強みやサービスについてわかりやすく紹介し、理解を深めてもらってお問い合わせに繋げるという「質」を改善する考え方です。サイトの情報・見た目・使い勝手を改善することができれば、サイトに流入する人の数が現在とあまり変わらないとしても、お問い合わせをする人の割合が増え、結果的に顧客となる人は増加するというもの。
もちろんサイトリニューアルにあたっては、SEO対策も考慮されるため、自然流入する人の数の増加も同時に目指すことになります。
改善したいコンテンツとして挙げられる「企業情報」「サービス情報」「実績紹介」をわかりやすく、魅力的に変えることができれば、お問い合わせに繋がる人が増える可能性は高くなると思います。ただ、このケースにおける問題は「相談数をどの程度増やしたいと考えているか?」です。
サイトリニューアルの要件として提示されたのは、下記3つのポイントです。要件においては、基本的に「今あるものを改善すること」が焦点となっており、限られた予算・期間内で実現することが求められています。
【サイトリニューアルの主な要件】
1.サイトデザインの刷新
2.既存の情報を視覚的にわかりやすく再構成すること
3.MAツールの導入
(1)のデザイン刷新と(2)の情報再構成は、興味を持ってサイトに来訪している人(ニーズが顕在化している人)をその場でお問い合わせに繋げようとする「コンバージョン率(CV率)」を高める取り組みとなります。
サイト来訪者数を増やす「量」ではなく、お問い合わせに至る人を増やす「質」の改善です。現在のお問い合わせ到達率(CV率)を多少でも改善できればという考えであれば、この施策だけで十分かもしれません。
しかし、大きな改善を期待されているのであれば、基本的な情報を視覚的にわかりやすく提供するだけでなく、「ぜひ話を聞いてみたい!」という感情をいかに醸成し、行動意欲を高められるか?という視点でコンテンツや機能を検討する必要があります。
「自社の強みやこだわり」「サービスの優位性や効果」「課題別・予算別のおすすめサービスパッケージ」「お取引企業担当者の声」「サービス提供の流れ」「FAQ、チャットボットの導入」など、良さの実感/サービス利用の具体的イメージの醸成/行動の後押しに繋がるコンテンツや機能を追加検討すべきかもしれません。
(3)のMA導入は、インサイドセールスの強化に繋がる有効なツールではありますが、MAの活用には「メールアドレス」の取得が前提条件となります。企業・サービス・実績という会社の紹介コンテンツがメインのサイトにおいて、どのような価値を提供できれば、サイト来訪者(見込顧客)からメールアドレスを取得することができるのか?メールアドレス取得後は、どのようなコミュニケーションを、どのようなタイミング/頻度で展開すれば、サイト来訪者の見込度を高め、顧客化することができるのか?を検討することが重要です。MA導入が目的化されるのではなく、MAをどのように有効活用していくかの検討を重ねる必要があるのではないかと考えます。
目的を中心とした多角視点での施策検討
企業のマーケティング活動には、満たしたい目的や達成したいゴールがあります。今回のケースでは「新規顧客からの相談を増やす」ということを実現するために、講じるべき施策(打ち手)を検討・実践することが求められています。
目的を満たす方法は、前述の通り1つではなく、複数の施策が考えられることから、まずは考えられる施策をリストアップして、予算・期間・期待効果・施策実行難易度などから取り組みの優先順位付けを行った上で、「やるべきこと」を明確化することが重要と考えます。
とはいっても、闇雲に思いつく施策を挙げていくのは非効率で、網羅性を担保することが難しいことから、何を基軸に施策をリストアップすれば、抜け漏れなく施策のリストアップができ、優先度に応じて「やるべきこと」を選択することができるのでしょうか。今回は、みなさまの施策検討の一助となり得る「施策検討フレーム」をご用意致しました。
企業のマーケティング課題や目的を中心に据えて、多角的な視点で提案の方向性や施策を考える枠組みとしてご活用頂けるものになっているのではないかと思います。今後施策検討の機会がありましたら、ぜひこの「施策検討フレーム」を活用して目的を満たす施策を検討してみてはいかがでしょうか。
ダウンロードコンテンツ「施策検討フレーム」
執筆者:山本 知拓
株式会社ジェネシスコミュニケーション
執行役員