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寺田倉庫 minikura に学べ!<後編>ブレイクスルーの起こし方とは?

前編では、寺田倉庫のサービス「minikura」を通じて、新規サービスの立ち上げに関する気づきや積極的な自社アピールの重要性について、月森正憲氏に話をうかがいました。

私たちもクライアントから、「社内上層部から新規事業立ち上げの命を受けたが、どうすればいい?」という相談をいただく ケースが増えています。

そこで後編では、新規事業が成功するためのブレイクスルーの迎え方や、新規サービスの価格設定に関して、寺田倉庫の知見や学びに触れながら、「マーケの強化書」編集部が踏み込みます。

    月森氏
    インタビューイ:月森正憲 さん寺田倉庫 専務執行役員 MINIKURA担当


    杉田
    インタビュアー:杉田ユウイチ「マーケの強化書」編集部
    ジェネシスコミュニケーション 代表取締役社長

※所属および肩書きはインタビュー当時のものです。

目次

伝え方、伝える手段で勝負をしない

杉田


現状のサービスの利用コア層はいかがですか?

月森

30〜40歳代が全体の約7割です。男女比も、30代と40代の内訳もほぼイーブンで、圧倒的に東京都内在住者が多いですね。結果としてそうなっていますが、アプローチする世代や対象自体は絞らずに全方位でやっています。

杉田


事業の立ち上げには、中身の充実とともに顧客獲得も重要です。社内ではどういう議論をしていたのですか?

月森

最終的には、ターゲットを絞らずやろう、と考えるようになりました。当時は、社内にマーケティング部門がなくて、長く暗中模索の状態が続きました。私もずっと現場でフォークリフトに乗っていた人間で、やったことがなくて(笑)。

特にリリース当初は、話題化した一方で“寺田倉庫は何だ、minikuraは何だ?” という状態です。認知と、認知以降で実際にお客様に使われるまでの工程に大きなハードルがあることにも直面するわけです。

最初はマーケティングの経験が乏しいので、何でも試してみました。例えば、チラシを品川駅周辺の朝のラッシュの時間帯に配ったりもしましたが、どのやり方もうまくいかない。試行錯誤の積み重ねが、「伝え方で勝負するのは違う」と気づかせてくれました

杉田


さまざまな伝え方に挑んできたからこそ、自社らしい動き方が見えてきたのですね。

機能のアップデートを絶好のアピール材料にする

杉田


では、自社らしい動き方に気づき出したとき、御社が打ち出したことは何だったのですか?

月森

しっくりくる「寺田倉庫らしさ」とは、minikuraにどんどん新たな機能をアップデートすることだ、となりました。具体的に動きたくて、「1カ月に3本のプレスリリースを出す」といった目標を掲げて、3年くらい貪欲に継続していました。

その成果の一つが、2013年にYahoo!さんからお声がけがあって始まった、オークションサービス「ヤフオク!」との連携です。minikuraを介してスムーズにヤフオク!での取引ができるという仕組みの提供につながりました。

杉田


自社サービスを見つけた第三者が、自社サービスの拡張性や可能性を考えてくれる好例ですね。知恵がどんどん集まり、実用性が高まって、ますますサービスが派生していったのですね。

月森

この連携で、minikuraが二次流通の可能性を持ち、売買に使える仕組みであることにも気づけましたし、1つの施策としてプレスリリースも出せます。時にはWeb媒体で取り上げて記事にもなってくれます。並行してAPI事業も進めていたので、minikuraの仕組みを誰でも使えて、誰にでも提供できるようにもして、事例がさらに広がる循環を生み出せました。

自社の特色を活かし、ニッチを突き詰めよ!

杉田


「寺田倉庫らしい」サービスを提供できるようになったのは、社内に受け入れられるカルチャーがあって投資が続けられたからだと思います。他が手を出していないニッチを突き詰めてきた、と考えるべきですか?

月森

はい。オンリーワンでありナンバーワンとなること、ですね。規模ではなく、機能やアイデア、ネットワークで勝負しながら、たくさんのニッチの山を築くことが最も寺田倉庫らしいと考えています。

杉田

至極共感します。私たちの場合は、マーケティング会社として自分たちの良さを出そうと仕事をしています。“ニッチ”戦略といった言い方はしていませんが、「特色を出す」ことはとても大事にしています。

それに加えて、世の中の新規ビジネスに接していると、ドーンとやらない。テストで試して、それ以上のことはしないことが圧倒的に多い。その点、minikuraはインフラを目指し、テストの規模で収まらずにブレイクスルーを迎えられる動き方をされています。

月森

minikuraは初期からインフラを目指して個人が利用できる価格設定を意識しましたが、それとは別にブレイクスルーには 、2点の要素が重要だったと感じています。1点目は、共感できるパートナーを探すこと。私たちは「minikuraみたいなことはできないよ」という声が多い中で、共感する倉庫会社がパートナーとして存在してくれたおかげで、前に進めました。

2点目は、新規事業のアイドルを一人立てることです。スタートアップやベンチャーだと創業者がそうです。minikuraだと私になってしまうかもしれませんが(苦笑)、「この人が言うなら」といったような、アイドルが先導を切って事業を引っ張れると、思想がチームに浸透して前進しやすくなります。

ブレイクスルーを支える、利益を導く価格設定

杉田

多くのビジネスパーソンの悩みどころは、新サービスの価格設定も1つですよね。minikuraは当初100円という話があって、最終的には200〜250円となりましたが、安価に設定すればいいという単純な話ではありません。

月森

私たちが意識したのが、コストの積み上げでプライスラインを決めないことでした。ただし、ブレイクポイントを出す前に解約されると私たちも利益にならないので、利益の出るラインを慎重に検討しました。

杉田


考え方としては、すべての顧客から利益を出さなくてもいい、と判断したわけですか?

月森


はい。すべてのリスクを除外しないといけない、とは考えず、ある一定の割合のお客様で利益が出せるならやろう、と考えました。

杉田

積み上げて「すべてのお客様から利益を得よう」と考えがちな人たちほど、「全顧客から利益を求めない価格設定」は、ブレイクスルーを引き寄せる一石になる考え方です。

では最後に、御社の今後についてお聞かせください。

月森

今私たちが取り組む「IT × 倉庫」「IT × リアル」は、寺田倉庫の本社がある東京・天王洲でなくても再現できることです。もっと他に拠点を広げていきたい。仕組みを作りきって、真似できないオペレーションも伴わせて、私たち自身は物件を持たず、物件を持つ方々に仕組みを導入してもらいながら広がる世界を追求したいです。

杉田

戦略として、規模を求めず独自色を出しながら、ネットワークを広げていく、ですね。新規事業で悩むビジネスパーソンにとって、示唆に富む数々のお話がうかがえました。このたびは、ありがとうございます。

寺田倉庫 月森様ありがとうございました

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株式会社ジェネシスコミュニケーション

ジェネシスのマーケティングプロフェッショナルが編集を担当。独自の視点で厳選した実践的ナレッジをお届けいたします。

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