『売ればいいや』が購入を後押し!モノを買うときの意識と購買行動
この前、普段はネットで洋服は買わない派なのですが、ドラマで女優さんが着用していた衣装が欲しくて、夜中にポチってしまいました。背が低いので試着して買いたいのですが、もしサイズが合わなければ、メルカリで売ればいいやと思い…。幸い、その洋服はメルカリに出品することはありませんでしたが、最近モノを買うときに、売ることを前提に購入する人が若い世代に増えているそうです。
若い世代に限らず、モノを買うときの意識や購買行動がどう変化しているのかを知りたくて、調べてみましたので一緒に読み解いていきましょう。
[2019年5月30日初公開、2022年1月追記]
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売却することを前提にモノを選択する20代・30代
メルカリと三菱総合研究所が実施した「シェアリングエコノミーに関する意識調査(調査期間:2018年9月21日〜9月27日)」によると、半数以上のフリマアプリ利用者が新品の購入時にフリーマーケット(フリマ)での売却を意識してモノを選択すると回答したとのこと。
出典:メルカリ、三菱総合研究所とシェアリングエコノミーに関する共同研究
『シェアリングエコノミーに関する意識調査』よりマーケの強化書編集部がグラフを再作成。
たしかに私もメルカリをはじめてから、売る場合のことを想定して、今まではすぐに捨てていた箱をしばらく取っておいています。そして売るならばなるべく高く売りたいので、いい状態を保つように意識して使用します。
また、調査結果によると購入するときに売却を意識しているためか、フリマアプリ利用後は洋服や化粧品の購入頻度や購入価格が上がったといいます。これはかなり実感があります。化粧品購入前に、アプリでどれくらい需要がありそうか、使用感ありでも売れているのかチェックして、売れていることが確認できると安心感でついちょっとでも気になる化粧品は買ってしまいます。
今までなら使用感へのリスクや価格により購入しなかったものに対するハードルも下がっていて、もし購入して自分に合わなくても、売ってしまえばマイナスにはならないわけです。
それに、モノを買ってもらうときは、理由づけが必要とよく言われますが、フリマアプリの存在が購買理由づけに役立っているということなのかもしれません。
若い世代の消費傾向がシニア世代に広がってきている
中古品の購入や再販売は20代には浸透している気はしますが、ほかの世代ではどうなのでしょう…?
メルカリが行った調査結果によると、ほかの世代よりも「50代、60代で中古品の購入が増加」しているといいます。理由としては、50代では「中古品の質が上がったから」という回答、60代では「中古品を購入する場(ツール)が増えたから」だそう。また同じく「50代、60代で、購入する際に、新品であることを重要視する傾向が下がってきている」ということ。
出典:メリカリ『2019年度フリマアプリ利用者と非利用者の消費行動に関する意識調査』よりマーケの強化書編集部がグラフを再作成。
再販売することを意識しているかどうかまでは汲み取れませんが、中古品に抵抗がある年代のイメージだったので意外です。このような動きをふまえて、新たなサービスの登場とともに新たな消費モデルが定義されてきています。
メルカリ、三菱総合研究所が定義したシェアリングサービス普及後の消費モデル「SAUSE(ソース)」。
株式会社ホットリンクが提唱している、先にSNSで検索することを前提とした「ULSSAS(ウルサス)」。
このように新たなサービスやツールの普及による消費者の購買行動への影響は大きく、今後は変化していくサイクルの間隔も短くなってくるのではないかと思います。
新しい消費行動プロセスをほかのビジネスに活かしてみたら……
そして、こういった新しい消費モデルが提唱されれば、提供する側としては活かさない手はありません。
「SAUSE(ソース)」でいえば、また浸透していない世代までにも、購入して利用するだけを前提にした訴求から、「再販売」を前提にした訴求方法に変えてみたら、今までのビジネスに新たな切り口が生まれるのではないでしょうか。
たとえばターゲットが40代向けの商品で高額ではないモノを再販前提にして訴求してみたら、20代の若者が購入するようになったなど、購買層に変化があるかもしれません。
年代で出し分けできるコンテンツではメインコピーを変えて、20代、60代には再販売することを強調して訴求するということもありかもしれません。
また所有せずに「一時利用する」というプロセス。もう利用中だという方も多いかと思います。シェアリングサービスもかなり増えてきていますよね。今は若い世代向けのシェアリングサービスが中心な印象ですが、メルカリの調査結果から見ても今後はシニア世代向けも増えていきそうです。
ブランドバッグや洋服のシェアリングサービスからはじまり、最近は、美容家電やらカメラ、傘をシェアするサービスも出てきています。電動キックボードのシェアリングサービスも今後日本に上陸するそう。
所有することがあまり重要視されなくなりつつある今は、「一時利用する」という視点も軽視できません。これもまた既存ビジネスの新たな切り口を検討するときに使えそうです。
モノを所有しないという選択。フリマアプリの出現で変わってきた消費意識。新たなサービスの出現により変化する消費行動プロセス。引き続き世代別の動きとともにウォッチしていきたいと思います。
追記:化粧品の二次流通市場がもたらす消費喚起効果は年間205億円??!
記事を公開してから時間が経過し、ますますメルカリをはじめとするCtoCビジネスや、シェアリングエコノミーも拡がりをみせていますね。
私も化粧品購入前にメルカリのアプリをチェックしていましたが、その化粧品についての興味深い数値が、リリース情報(2021年10月)であがっていましたので簡単に読み解いていきたいと思います。調査結果では、一次流通、二次流通という表現がされていましたが、分かりやすさを優先して、新品・中古という表現に書き換えている点はご了承ください。
このデータをみて中古市場、フリマに参加している人の化粧品・コスメの購入金額が高い!とも読めますが、私個人的には『化粧品/コスメにも流行の感度が高いお洒落さんは、限られた予算のなかからコスメも沢山買いたいから、フリマやメルカリの活用も上手だよねぇ』と感じております。
リリース情報のなかで、
消費喚起効果の内訳をみると、二次流通での購入による消費喚起効果が52億円、出品による消費喚起効果が153億円となっている点です。調査範囲は異なりますが、2020年調査(アンケートは2019年12月に実施)※5では「購入」行動はマイナスの影響を与えていたので、それが2年弱でプラスに転じたといえます。つまり、これまで代替関係にあったものが、二次流通市場が成長する中で、むしろ一次流通市場を拡大するようになったといえます。
メルカリ、「化粧品/コスメの二次流通市場」に関する共同調査より
とのコメントがあるように、新品の化粧品が高いから安い中古品を買っているのではなく、『新商品を試したい!どんな発色が分からないし、使ってみて合わないならメルカリで売れば良い』という気軽な気持ちで試して売れるという環境が、使ったことのない商品をお試しで購入するトライアル消費を加速し、新商品、新品の化粧品の市場の拡大にも影響を与えているようです。
コロナの影響で化粧品のサンプルが使えない、百貨店に行きにくいという現状もありますが、この辺りのノリは個人的には姉妹や母娘間のシェアの延長線上にあるようにも感じます。つまり他人が使った中古の化粧品ではなく、先に新商品を入手した人からメルカリで譲ってもらう、『私にも1口食べさせて!』みたいなノリで、気になる商品を手に入れているように思うのです。そしてそれは、自分が新品で買った化粧品も使い切るまでは使用せずに、『これは良い商品なんだけど、私には少し合わなかったから、似合う人にどうぞ!』という気持ちでの出品にも通じます。
サービスとそれを利用する消費者の気持ちを読み取りながら、引き続きウォッチしていきますね。
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