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『デジタルリスキリング入門』著者に聞く! ビジネスパーソンとリスキリング

関心を持ちながら、実際にできている人が多くなさそうなのが「リスキリング」です。本業を抱えながら学び直しの時間を確保することは、難しいものです。「一歩踏み出したい」というビジネスパーソンやマーケターに向けて、リスキリングのコツや助言について、前回に続いて今回も『デジタルリスキリング入門』(技術評論社刊)の著者高橋宣成さんを招き、話をうかがっています。 

目次

 長所、短所を意識したリスキリングはアリ? 

田代

田代

前回、リスキリングは決してプログラミングのような高いハードルを課す必要がない、という話をしました。また、成果につながりやすく学習コストが少ない「小さな積み重ね」の重要性にも触れましたね。

高橋


引き続き、さまざまな意見交換の中から、みなさんにリスキリングへのきっかけをつかんでいただけると嬉しいです。

田代

田代

今回もリスキリングについて、もう少し別の角度から「どう始めるといいか」について考えてみます。例えば、自分の長所や短所をリスキリングと重ねた場合です。 

“短所=苦手なことを埋めるためのリスキリング”となると、つらさが重なり、しんどくて続かないのではないでしょうか? かといって、自分が長所だと思うことを伸ばす場合、すでに多くの人が自分以上に得意な状態なら、自分が長所だと思っていることで他人より抜きん出るのも、また難しいと言えます。「向き不向き」を軸に、リスキリングを考えるというのは良いことなのでしょうか?

高橋

これは、前回も触れた「何者かになることを目指すリスキリングは失敗しやすい」という話に関連します。長所や短所を念頭に置くと、どこかで何かしらのロールモデルを描きがちにならないでしょうか? ロールモデルに比べて、今の自分は秀でているかという差分で判断する進め方は、あまり得策でないと考えます。 

田代

田代


ほう。自身の長所・短所を軸に据えて考えるのは避けたほうがいい、ということですね? 

高橋

はい、リスキリングとは相性がよくないと思っています。先々がどうなるかわからない世の中ですから、今との差を埋めていくような戦い方は合わないと思っています。自分にとって新しいことを生み出したい、チャレンジしたいというスタンスで、知らない世界に飛び込んでいく意識を優先したほうが、リスキリングとの相性がいいでしょう。 

「好き嫌い」から始めるのはアリ? 

田代

田代


では、「好き嫌い」を起点にする考え方だと、いかがでしょうか。 

高橋

「長所か短所か」と「好きか嫌いか」は、似た切り口ですが、判断は変わると思っています。好き嫌いは、自分に関わることですから、その声は無視できません。例えば、デジタルをまったく使いたくない人なら、無理やり取り組むくらいならデジタル以外で力を発揮するスキルを磨く方がよさそうです。プラスの状態からさらにプラスが加わるようなイメージを目指すと、リスキリングは続きやすいでしょう。 

別の例で考えてみると、たまたまデジタルに力を入れてこなかった人が、いくつかのキーボードのショートカットを覚えたおかげで、Excelなどの作業が飛躍的に向上したとします。これは、その人にとって大きな一歩ですよね。では、やらずにいたことは短所になるのか。もしくは、嫌いだったからやってこなかったのでしょうか?  

田代

田代

なるほど、どちらも違う場合がありますよね。それに他者との比較となれば、「ショートカットを使える人は、他にも大勢いるし……」となってしまうけれど、ショートカットを覚えたことで新たな時間が生み出されて、その時間を使って「次は何をするか?」という考え方ができると、「次へ次へ」とつながります。 

高橋

「今日より明日」と、仕事がどんどんはかどるとモチベーションも高まるでしょう。やはり、身近なところから課題を見つけて、課題に対した動き(リスキリング)ができると、日々の業務にいい循環を生んでくれると思います。 

身近な学びを続ける
リスキリングは、身近なところから見つけた課題に対して行う方が、継続しやすいでしょう

マーケターにとってのリスキリングとは? 

田代

田代

ここでは「マーケターにとってのリスキリング」についても、ぜひ意見交換しておきたいです。特に若手のマーケターであれば、自分が少しでも気になることや興味を持ったことなら「まずは何でもやってみる」ことが大事なのだと思うのですが、いかがでしょう? 

高橋

おっしゃる通りです。若いみなさんには、まだまだたくさんの時間があります。仕事観点で言うなら、マーケターとして「現在自分に求められているスキル」を見極めていけると、学びの対象を見つけやすいでしょう。 

田代

田代

日頃の業務をきっかけにして、関連した分野で興味を覚えたことをやってみる。例えば、Webサイトの運営や制作に携わるマーケターなら、Google Analyticsなどのアクセス解析を学習してみる、さらに学問的に踏み込んで統計学を学ぶ、GAS(Google Apps Script)を習得して日常業務の自動化に挑むのもいいでしょう。もしくは、上長や上の役職に対してうまく説明できるようにロジカルシンキングを学ぶ、プレゼンテーションスキルを磨くといった考え方もできます。 

高橋

自分のキャリアをどうしていきたいかを突き詰めながら、遠くの夢を見ることはどんどんやってほしいですね。思い浮かべていく中で、最初の一歩を探して、どんどんトライしてほしい。「ちょっと違うかな」となったら、変更すればいいのですから。 

田代

田代

他にも、自らができるようにならずとも、仕事現場で専門的な人たちと話ができる状態にはなりたい、というアプローチもありますね。こうした話が日頃から誰かとできるだけでも、違ってきそうです。 

高橋

他者の話を聞くと、思考のストレッチ体験ができるので、さまざまな人たちとの対話は意義があります。今だと1on1が、組織内での機会になるかもしれませんが、同じ会社だと上下関係があったり、その関係性に思考も引きずられがちです。 

田代

田代


うーん、なかなか難しいところですよね。

高橋

例えば、所属する組織とはまったく関係ない人たち、年齢や属性、所属も違う人たちと話をする機会が持てると、より考え方がほぐれやすく、新たな発見が得られやすいと思っています。僕も、「ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会」というコミュニティを主宰している立場ですので、強く実感することです。 

リスキリングがまさしくそうで、懸命に取り組んでいる人たちに囲まれていると、それだけで刺激となります。ビジネスパーソンの多くは、学びにおいて会社以外でのコミュニケーションをあまりとらない傾向はありますが、こういう場にこそ鉱脈があると思っています。 

マネジメント層にこそリスキリングを実践してほしい 

高橋

僕からは最後に、マネジメント層のみなさんにも一言お伝えしたいです。現場で実務に携わる人たちだけでなく、マネジメント層のみなさんにも、リスキリングを始めてほしいです。例えば、マネジメント業務にもデジタル活用が有効である場面が多々あります。ぜひご自身も活用してほしいです。 

田代

田代


残業時間を減らすのに困っている管理職は少なくありません。デジタル活用が有効に機能する場面は多いはずです。 

高橋

マネジメント層のデジタル理解が進むと、チームでデジタル活用の話になっても支障が出ません。意思決定の材料としてデジタルの知識が必須ですから。実際によくあるのは、「うちの上司、デジタルが全然ダメ」となって、デジタル活用の提案がそもそもできない(だから、提案しない)という状況です。 

田代

田代


耳が痛い、とはなりたくないところです(苦笑)。

マネジメント層こそリスキリングを
マネジメント層こそ率先してリスキリングに取り組めると、社内への浸透が早まりそうです

高橋

「あの人に説明するのは、無理解だし面倒だ」となると、せっかく提案が浮かんでも提案しなくなり、提案に向けた学びもしなくなり、組織としてどんどん望ましくない状態へと陥りかねません。マネジメント層が率先してリスキリングに取り組むと、会社やチーム全体にプラスの雰囲気が醸成され、行き渡りやすくなり、組織力やチーム力の底上げにつながります。率先してやってほしいです。

田代

田代


2回にわたって、このたびもありがとうございます!

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株式会社ジェネシスコミュニケーション

ジェネシスのマーケティングプロフェッショナルが編集を担当。独自の視点で厳選した実践的ナレッジをお届けいたします。

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