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「行動デザイン」を学ぶ 第28回:「カテゴリーらしさ」とは? 「ブランドらしさ」とは?

前回まで、「カテゴリー化」という認知の仕組みを何回かに分けて紹介した。自分が関わるビジネスや企業・サービスのブランドが、どのようなカテゴリーに属するかを規定することは、顧客にビジネスを理解してもらい、関心を持ってもらうために極めて大事な活動である。今回は、さらに「カテゴリーらしさ」と「ブランドらしさ」の関係について考えてみたい。

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目次

人は、カテゴリーやブランドを通じて理解する

前回までの連載で、人は「カテゴリー化」というプロセスを通じて物事を分類し、この世界を理解しようとすることを解説してきた。

その時、「一口にカテゴリー」と言っても、すぐ頭に浮かぶ「分類学的カテゴリー(例えば、調味料は和風、洋風、中華風、などに分かれ、和風はさらに味噌、醤油、だし、などに分かれる etc.)だけでなく、カテゴリーの中心に「代表性」と「典型性」(つまり「カテゴリーらしさ」)を持った具体例(ブランド)が君臨している「グレード化カテゴリー」や、目的に応じて記憶の中から召喚されて集合する「目的に導かれたカテゴリー」もある、という話を覚えているだろうか(前回の連載で取り上げた「アドホック・カテゴリー」も、「目的に導かれたカテゴリー」の極端な事例である)。

みなさんの顧客は、複数のサービス(ブランド)や企業(ブランド)を天秤にかけて選択をする。その時、もっともよく考慮されるのは、そのブランドがそのサービス領域の代表なのか、端っこなのか、というところだろう。知名度ランキング、売上げシェアなどの指標で顧客が判断しているのは、実はそれぞれのブランドのカテゴリー代表性やカテゴリー典型性の度合いなのだ。

例えば、日本語入力ソフトにも表計算ソフトウェアにも複数のブランドが存在するが、現実的には「Word(ワード)」や「Excel(エクセル)」というブランドがカテゴリー代表であり、「●●といえば?」で真っ先に想起される点で、これらが強い「典型性」を持っていると言える。

人は「ブランドのマジック」に魅入られがち

一方で、みなさんが提供するサービスは、残念ながらみなさんが思うほど、世界にオンリーワンなものではなく、似たようなサービスが複数存在するのが一般的な状況だろう(世界で唯一であることは素晴らしいことだが、逆にレアすぎて世の中には理解されないことも多い)。

そこで、ブランディングによっていかに自社のサービス、あるいは企業がユニークで、他の類似のサービスとは異なるものであるかを顧客の脳裏に刷り込む活動が重要になってくる。ブランドは「差異」の象徴なので、逆に「ブランドAと大きく違うように見えるブランドBには、きっとAにはない製品的特徴があるのだろう」と人は考えてしまうのだ。これがいわゆる「ブランドのマジック」である

製造レベル、あるいは消費者の知覚品質レベルではほとんど差がない製品でも、ブランドとして比較すると大きく差があると感じてしまうのだ。例えば、一流のソムリエでもワインのラベルを隠したブラインド・テイスティングで、その銘柄を的中させることはほとんど無理だという。銘柄ワインであるほど、使っているぶどうの品種、地域の風土、伝統的製法からくる「その地域ワインの典型性」(カテゴリーらしさ)を兼ね備えているから、ブランド間の香りや味の差が小さくなるからだ。

ラベルがない状態でブランドを認知出来るのか?
異なるブランドとして比較するから、見極められる。そうでないと、果たして……

しかし、ソムリエではない素人のわれわれでも、ワインのラベルを見ながらテイスティングすれば、2つのブランドの違いについてそれらしい薀蓄(うんちく)を述べることは、いとも容易である。だから、ほとんどの製品・サービスに大きな品質・性能差がない今日的状況では、顧客の頭の中に「差異」を作り出すブランディングが何よりも重要になる

 ブランドとは「らしさ」であり、「差異の体系」である

もちろん、感覚要素(ラベルの色や、ネーミングの語感、パッケージの形状など)で競合品と差を作ることはマストだ。それらが実際には品質・性能の差に由来する差ではなかったとしても、感覚要素で差異を識別できれば、その差異が品質・性能イメージの違いを作り出すからだ。例えば、プロ野球の赤ヘル軍団(広島東洋カープのこと)は、赤ヘルをかぶっているから最強に思えるのだ。

ブランドやブランディングについて指南している書籍やWebサイトを見ると、「ブランドらしさ」の構築が重要だと提唱されている。「ブランドとは、“らしさ”である」という明快な主張(※)もみられる。筆者の師匠である田中洋先生も「ブランドとは差異の体系である」としているので、競合ブランドとの違い、つまり独自性がブランドの核心ということになるのだろう。

ちなみに、「らしさ」を英訳すると「ユニークネス」「アイデンティティ」あるいは「キャラクター」といった単語が出てくる。どれも日本語の「らしさ」を完全には言い当てていないようにも感じるが、「らしさ」を構成する主な要素がこれらの概念であることがわかる。自社ブランドが一貫性を持ち(アイデンティティ)、そのキャラクターが際立っていて、かつ他に類のない独自の存在(ユニークネス)ならば、そのブランドは「ブランドらしさ」を兼ね備えていると言えよう。

※……『超実践! ブランドマネジメント入門 愛される会社・サービスをつくる10のステップ』
(上條憲二著/ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)

「カテゴリ」と「ブランド」との関係性は?

では、今まで話してきた「カテゴリー代表性(あるいは典型性)」、つまり「カテゴリーらしさ」と「ブランドらしさ」は、どのような関係になるのだろうか。

実はこれらの関係は、ブランド論でいわれる「POD」と「POP」の議論をベースにしている。1つのブランドの特徴の中には、そのブランドが他のブランドと異なるものと感じられる点=「POD(Point of difference:相違点)」と、他と同じに見える点=「POP(Point of Parity:同類点)」とが混在している。それらを無自覚に混在したままではいけない。

競合ブランドとの位置取りの中で、どこまで、またどのような要素によって「POD」(相違点)を際立たせるか、あるいは逆にあのブランドと同類だと感じさせるような「POP」(同類点)をどのように作り出すかは、 ポジショニング戦略、そしてブランド戦略全体にかかわる重要なテーマになる 。

次回は・・・

ブランドやブランディングについてのテキストは多いが、「カテゴリーらしさ」と「ブランドらしさ」の関係について書いているものが見当たらない。そこで本連載でこの関係に焦点を当て、具体例を交えながら解説したい。


國田

國田 圭作(くにた けいさく)

嘉悦大学経営経済学部教授、前・博報堂行動デザイン研究所所長、セカンドクリエーション代表。博報堂時代は大手自動車メーカーをはじめ、食品、飲料、化粧品、家電などのマーケティング、商品開発、流通開発などを多数手がける。
著書に『幸せの新しいものさし』(PHP研究所)『「行動デザイン」の教科書』(すばる舎)


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