【セミナーレポート】経営視点から見るこれからのマーケティング~デジタル環境の高度化がもたらす消費者行動・心理の変化を理解し、適切なコミュニケーションを通じて収益増をもたらす戦略とは?~
2017年1月20日、日本システムウエア様、フロンテッジ様とジェネシスコミュニケーションの3社共催セミナー <経営視点から見るこれからのマーケティング ~デジタル環境の高度化がもたらす消費者行動・心理の変化を理解し、適切なコミュニケーションを通じて収益増をもたらす戦略とは?~> を開催いたしました。
当記事では、各社のセッション概要をお伝えします。
なお、3社のセッション終了後には、セミナーに参加された皆様一人ひとりに、事業概要と自社が抱える課題についてお話しいただきました。セミナーに参加するだけでなく、当セミナーを通じた参加者同士のビジネスマッチングの機会として役立てていただきたいとの狙いになります。
■カスタマージャーニーから考えるマーケティングサイクルにおける顧客接点の在り方(株式会社フロンテッジ 浜内雄人氏)
■ライブチャットやAIがもたらす「人間化(ヒューマニゼーション)」の潮流 ~消費者行動・心理の機微を捉えるデジタルマーケティングのポイント~(株式会社ジェネシスコミュニケーション 松尾順)
■市場成熟に伴い、EC企業ニーズが変化(日本システムウエア株式会社 長谷川雅芳氏)
カスタマージャーニーから考えるマーケティングサイクルにおける顧客接点の在り方
浜内氏は冒頭、私たちを取り巻く情報やサービスが驚異的なスピードでパーソナライズされてきていることを指摘した。
これは、消費者の情報活用においてスマートフォンへの急激なシフトが起こっていることに加えて、iPhoneユーザーであれば、「Siri」に呼びかけるだけで様々な用事をまるで執事のようにこなしてくれるテクノロジーの進化、また様々なキュレーションメディアの登場により、自分にカスタマイズされた情報が入手しやすくなったことなどによってもたらされている変化である。また、ツイッター、フェイスブック、LINEはじめソーシャルメディアの利用者も増大しており、一般人が大統領とツイッターで直接対話するといったことが可能になっている。
浜内氏はさらに、こうしたデジタルデバイス、オンラインの様々なツールやソーシャルメディアを使うことが当たり前のZ世代(1990年代半ば~2010年生まれ)は、「デジタル・ネイティブの時代」と呼ばれ、世界に20億人、米国ではすでに最大勢力の世代となっていると述べ、彼らの特徴として、テキストよりも動画や画像によるコミュニケーションを多用すること、クリエイティブ志向が強く、自分のテイストが取り入れられるカスタマイズを好むことなどを示した。
このような消費者の世代交代を踏まえ、浜内氏は、機能やスペック面の差別化ではモノが売れない今、消費者を生活者としてとらえ、モノに生活上の価値を与える「コト=体験」の創出及び管理が、企業にとって重要なマーケティング課題になっていることを強調。適切なタイミングで適切なメッセージを顧客に届ける「顧客視点」のコミュニケーションを実現するために「カスタマージャーニー」の作成を通じて、顧客化までの購買プロセスやタッチポイントを理解することが有効だと述べた。
続いて浜内氏は、カスタマージャーニーを考える上で重要なことを詳述した上で、カスタマージャーニーを活用するメリットは以下の3点であると指摘した。
・理想と現実のギャップを可視化することで、課題とアクションの優先度を立てやすい
・コンテンツ企画、サービス開発、広告展開などありとあらゆる施策の羅針盤になる
・顧客目線で施策が打てるため、結果的に投資対効果が高い
最後に浜内氏は、魅力的な「顧客体験」を提供することが企業競争の源泉となっていることから、カスタマージャーニーを考えることが必要なアプローチであることを強調してセッションを締めくくった。
ライブチャットやAIがもたらす「人間化(ヒューマニゼーション)」の潮流 ~消費者行動・心理の機微を捉えるデジタルマーケティングのポイント~
松尾はまず、セッションのキーワードとして「MOW(Moment Of Wow)」を示した。
「MOW」、すなわち「Wowの瞬間」とは、顧客に対して「Wow!」と感じてもらえるような体験を提供できる機会を逃さないということである。ジェネシスでは、顧客が「Wow!」と思わず感じてしまう体験のことを「Wowエクスペリエンス」と呼んでおり、Wowエクスペリエンスの種類には、「楽しい」「わくわく!」「感動した!」「ほっこり」などがあると解説。これらは究極的には顧客が「幸せ」と感じるような体験だと述べた。
そして、Wowエクスペリエンスを提供することが重要になった理由について、これまでの「利便性」という便益価値の提供だけでは差別化が困難であり、さらに顧客に「ハピネス」という情緒価値を提供すること、そのためには高いおもてなし力(High Hospitality)が必要であるからと説いた。
そもそも、人は自分のことを「聞いてほしい」「わかってほしい」「大切にしてほしい」といった根源的な欲求を持っていることに加えて、脳のエネルギー消費量を抑えるために、できるだけ頭を使わない傾向があることを示し、顧客自身が無数の商品や情報を検索するという、従来の「セルフサービス化」を目指したWebサイトやネットサービスの限界を指摘。
近年では、ネットの向こう側に存在する生身のスタッフとリアルタイムにやりとりができるライブチャットが台頭しており、顧客と対話しながら、最適な情報や商品を提示するサービスが当たり前になっている。
こうしたライブチャットのようなサービスにAIが導入されることで、AIと人の連携プレイがますます進化し、人間的な、すなわちヒューマンなサービスが、コストを抑えつつ提供されていると述べ、これを「人間化=ヒューマニゼーション」と呼んだ。
最後に、松尾は商品(モノ)自体よりもサービスが重視されるサービス化社会となっていること、および、「人は感情で動く」という古代から変わらない人間心理を考慮すべきであると述べた。つまり、企業は、最安でも最高でもなく、「最愛」すなわちお客様に最も愛される企業を目指すべきであるとし、そのためにはヒューマンな要素をデジタルマーケティングに組み込み、おもてなし力を高めることが重要であると強調してセッションを終えた。
市場成熟に伴い、EC企業ニーズが変化
日本システムウエア、通称NSWは1966年設立の老舗SIerであり、2000年には自社EC構築パッケージ「LIMEC」を発表、ECサイト構築を主体とするネットビジネス事業では15年以上の実績がある。長谷川氏は、こうしたNSWの長年のECサイト構築実績を踏まえ、近年のECに対する企業ニーズの変化について様々な視点から解説した。
長谷川氏はまず、小売業、製造業、通販の3つの業界における課題を示した。小売業の場合は、リアル店舗の売り上げ不振が顕著になっている一方で、訪日観光客の増加による「インバウンド需要」が増加していることから、オムニチャネル化やグローバルECに取り組むことが求められているという。製造業の場合、国内市場の縮小に加えて、既存の販売チャネルが機能しなくなっていることから、B2B2Cへの参入やアジア越境ECを検討しているところが増えている。また、通販業界では、メインユーザーのカタログ離れが起きているため、CRMの強化とともに、EC/スマホ対応が喫緊の課題となっている。
次いで、長谷川氏はNSWが対応した様々な企業のRFP(提案依頼書)を示しながら、企業ニーズの変化を受け、NSWがクライアントの要望をどのように要求仕様に落とし込んでいったかを解説した。また、CRMとオムニチャネルの取り組みについては、システム開発だけでなく、経営戦略視点での組織体制の見直しなども必要であることを指摘しつつ、いくつかのオムニチャネル化の事例を紹介した。
最後に、長谷川氏はグローバルECについて現状や課題を解説し、NSWでは、ECによる海外進出の3段階、すなわち「スタートアップ(アーリーステージ)」「成長・拡大期(ミドルステージ)」「変革期(レイターステージ)」のそれぞれの段階で様々なソリューションを提供していることを述べてセッションを終えた。
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