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検証!!シンカリオンにみる「巻き込みマーケティング」

新年度を迎え、新たな生活が始まりました。慣れないお弁当づくりのために、無理やり目をこじ開けて朝から頑張ってキッチンに立っているわたしです。こんにちは。
今回は、子どもとアニメイベントに行った経験から垣間見えた、ターゲットの周辺にいる人たちを巻き込んでいくマーケティングについて考えたいと思います。

目次

シンカリオンのイベントに行ってきました

新幹線変形ロボ シンカリオン、ご存じですか?簡単に説明すると、小学生たちが運転士となり、新幹線がロボットに変身して敵に立ち向かっていく、というアニメです。6歳の息子と一緒に、筆者は雪の降る寒い日に都内で開催されたイベントへ行ってきました。

しかし、子ども向けのイベントかと思いきや、会場に到着してみたら大人だらけ!子どもの割合は1%以下(注:筆者目測)という超絶アウェイ。そこには、単なるシンカリオンファンではなく、さまざまな分野に深い興味・関心を持ちその道を突き詰めているオトナたち(=○○オタな人々)が集まっていたのです。

イベントには、このような属性の人々がいました。

<圧倒的多数>
・声優オタ
・鉄オタ
・シンカリオンのキャラオタ
<ごく少数>
・純粋にシンカリオンが大好きな子どもたち(と、その親)
※以上、筆者が現場で判断した感触より

このように、シンカリオンはいろいろな人を巻き込んで、毎週土曜日の朝7時から30分 、当初1年間と予定されていた放送期間を延長し、2019年4月以降も番組が継続されています。

オトナも巻き込む、シンカリオンのテクニック

実は、シンカリオンのおもちゃ(プラレールがロボットに変身するもの)は、放送開始の3年ほど前の2015年から発売されていました。マクドナルドのハッピーセットでプラレールやトミカのおもちゃをもらえる際、期間限定でDVDを配布することがありますが、そのDVDにもシンカリオンの歌に合わせたアニメーションが入るなど、子どもたちの人気はすでに獲得していました。

アニメ化にあたり、第一線で活躍する豪華声優陣を起用したのは、プラレール大好きな子どもたちの親世代以外のオトナを取り込むことも製作者の視野に入っていたことは推測できます。「鉄分」多めなオトナたちは、「鉄道関連のアニメが始まる!」となると歓喜したことでしょう。

ゆっくり眠りたい土曜だというのに、わたしは必ず朝7時前に起床、どんなイベントがあろうとも欠かさずシンカリオンを見るようになってしまいました。わたしは、鉄分多めでもなければ声優さんに詳しいわけでもない。なのにどうしてシンカリオンに見事に巻き込まれたのか…。

それは、子どもにつきあって一緒に観るであろうオトナが好みそうなコンテンツや仕掛けが随所に散りばめられているからです。

たとえば、初音ミクがシンカリオンの運転手として登場、エヴァンゲリオンのキャラクターが登場、といったように、シンカリオンのメインターゲットとなる子どもたちが知らないキャラクターを、オトナに向けて仕掛けてきます。
その中でも突出してオトナに大人気なのは、JR東海の昔のテレビCMのパロディ。シンガーソングライター山下達郎さんの「クリスマスイブ」が流れ、女優の牧瀬里穂さんの出演で人気を博した「クリスマス・エクスプレス」や、佐野元春さんの「Someday」が流れる「ファイト!エクスプレス」など、シンカリオンの登場キャラでリメイク。懐かしくて震えそうなコンテンツをときどき突っ込み、そのたびに土曜の朝のTwitterタイムラインは大賑わいです。

お見事?! 鉄オタ・声優オタではないオトナが巻き込まれていく

不定期にそういう仕掛けをやられると、鉄オタ・声優オタ属性のないわたしにも、「今度は何をやってくれるかな?」とワクワクする→毎週観る→大好きになる→好きなものに対しては財布の紐も多少緩みがち→シンカリオングッズやおもちゃが増える、という図式ができあがり、まんまとシンカリオンに夢中。土曜の朝、早起きするのも苦痛ではなくなりました。

我が家の男児は、シンカリオンのほかにウルトラマンや仮面ライダー、スーパー戦隊シリーズなどひととおり観ていますが、それらのグッズ・おもちゃはあまり増えません。なぜなら、わたしがあまりそれらに対してときめかないからです。

自分(親)があまり興味の持てないキャラクターグッズやおもちゃを買うよりも、「これなら子どもも自分も好きだしいいな」と思えるものには、比較的前向きにお金を出せるのではないでしょうか?シンカリオンは、うまくオトナを巻き込むことで、子ども向けアニメの領域を軽々と超え、いまの人気に繋がっていると言えるでしょう。

マーケティングの基本である「刺激を仕掛けて、続けて、行動を促す」を、シンカリオンはうまく継続させているのではないでしょうか。

「隠れターゲット」を巻き込む利点

このように、真のターゲットの周囲や、彼らとは少し違った世界には「隠れターゲット」が潜んでいることがわかります。そして、「隠れターゲット」こそが資金源だったり意思決定者だったりすることは非常に多いはずです。「隠れターゲット」に刺激を与えてうまくいった例を見てみましょう。

・ミニバン

ファミリーに大人気のミニバン。パパが運転することが多いご家庭でも、パパの意思でミニバンを購入しているご家庭は少ないのではないでしょうか?。ミニバンが本当に欲しいのは、荷物をたくさん積める、チャイルドシートを設置しても余裕のあるスペース、といった観点でクルマを見ているママが圧倒的でしょう。そしてママは「大きなクルマはちょっと…」と言いながら後部座席が定位置になんてことも…。

だから、ミニバンのアピールポイントはメインの運転手となるパパではなく、ママに向けたものが多く見られます。

・Jリーグ

Jリーグの各チームが本拠地周辺の地域に向けた活動を行っており、その活動の多くは子どもたちに向けたものです。

関東近郊のチームについて具体的にあげてみても、2018年度にJ1王者となった川崎フロンターレでは、2009年から川崎市内の小学6年生を対象に「算数ドリル」を作成し、配布しています。また、川崎浴場組合コラボして銭湯の魅力を発信したり、NHK Eテレの番組「みいつけた!」に登場する「オフロスキー」というお風呂が好きなキャラクターと共演したりと、非常に積極的な活動を行っています。
2017年度にアジア王者となった浦和レッズでは、さいたま市内の幼稚園、保育園に向けて「レッズキッズサッカー」を開催。浦和レッズの子ども向けサッカースクールのコーチ陣が、幼稚園・保育園を訪れ、サッカーの楽しさを教えてくれています。

こうした活動を通じてクラブが狙っているのは、新しいサッカー好き、サッカーの裾野の開拓です。ターゲットは新しくサッカーが好きになりそうな子どもたちの資金源である両親や祖父母と言えます。子どもたちがサッカーや各チームに興味を持ち、「サッカーみたい!」「サッカーやりたい!」と言えば、「子どもが言うなら連れて行こうか…」と、スタジアムに足を運ぶご家庭も増えるかもしれません。家族連れでの来場が増えることで、複数人分のチケット収入が得られるわけですから、クラブにとってはとても嬉しい増収です。また、選手に憧れた子どもたちが、将来Jリーガーとなりチームの一員となるかもしれません。地元生え抜きの選手が入団するとなると、地元サポーターの応援にも熱が入るでしょう。

自社発信の情報で隠れターゲットを巻き込む方法

貴社で取り扱う製品やサービスについて、「隠れターゲット」を探してみましょう。メインターゲットを取り巻く人は誰か、メインとなる用途のほかに必要とされるシーンはどこか、といったように視野を広げてみると見えてくることも。

・ターゲットを取り巻く、家族向けコンテンツ

利用する本人はもちろんですが、利用を決定するにあたり家族の意思決定が採用される要因となるサービスに関しては、ご家族に向けたコンテンツを用意するとよいでしょう。

たとえば、介護施設。利用するご本人が調査・検討し、見つけてこられるケースもありますが、そういった場合でも、ご家族の安心を得ることは重要な決定要因となります。ご家族にも安心してご利用いただけるよう、利用者のご家族からコメントをいただいたり、施設からご家族へのメッセージを発信したり、などが考えられます。

介護施設だけではなく、ご家族が隠れターゲットになっているサービスは他にもあるはずです。実際の利用者を取り巻くステークホルダーを改めて確認してみましょう。

・違う利用シーンも想定して、アウトドア用品

アウトドア用品を購入する圧倒的多数はキャンプをする人々です。一方で、アウトドア用品は、防災グッズとしても非常に役立ちます。一般家庭における備えとしてももちろんですが、収納に優れたアウトドアグッズは、学校や自治体といった、多くの人々を抱える環境での備えとしても役立ちます。

このように、実際の利用シーンとは少し違った世界にも視野を広げてみると、まったく違う分野に大きなターゲットが潜んでいる場合もあります。

さまざまな属性を巻き込んでみましょう

自社で扱う製品・サービスをいつもとは違う視点から見てみましょう。これまで利用者と考えていた人々の影には、落とすべき本丸が潜んでいるかもしれません。隠れターゲットを取り込むことで、顧客の幅も広がります。自社での取り組みも幅を広げる必要がありますので、取り込んだあとの施策も用意しておきましょう。せっかく取り込んだ顧客をみすみす逃すのはもったいないですからね。

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株式会社ジェネシスコミュニケーション

ジェネシスのマーケティングプロフェッショナルが編集を担当。独自の視点で厳選した実践的ナレッジをお届けいたします。

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