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安達裕哉さんインタビュー Vol.2 「傾聴」のススメ

国内ビジネス書籍部門のベストセラーであり、今も重版を続ける(累計発行部数60万部超えの)ビジネス書『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者、安達裕哉さんへのインタビューシリーズの第二弾! 前回は、書籍のタイトルにちなんで「頭のいい人」とはどういう人を指すのかを取り上げました。今回は、相手から「頭のいい人」=「この人は自分の役に立つ人」と思ってもらうために、どういった行動で応えるといいかについて話を進行。安達さんは「傾聴」の重要性を解説しています。コンテンツの最後には、「マーケの強化書」ユーザーのために、書籍制作の裏話も特別(?)公開です。

目次

相手の役に立つアウトプットとは?

田代

前回は「頭のいい人」の意味や定義について、話を進めていきました。「頭のよさ」とは、自分で判断するものではなく、相手から相対的に判断されるものである。頭のいい人とは「相手にとって役に立つ人である」という話をうかがいました。

安達


はい、おっしゃる通りです。

田代

ここからは、ビジネスシーンを思い浮かべながら相手に「頭のよさ」が伝わるにはどうすべきか? 言い換えるなら「相手の役に立つ」ためには、どう対応すべきかを考えたいです。そこで本書『頭のいい人が話す前に考えていること』では、読む・書く・聞くといった行為(=アウトプット)の重要性に触れていらっしゃいます。その中でもアウトプットにフォーカスをあてて話を進めたいです。

安達


まず「どうアウトプットするといいのか」を、「相手に刺さる言葉を使えるようになるためには、どうするといいか?」に言い換えてみると、考えやすくなると思います。

田代


ああ、なるほど。

安達

さらに言い換えると、「相手の役に立つことを言えるには、どうするといいか?」になるわけです。実は、あの書籍の狙いとして、前半では「頭のいい人」とはどういう人を指すのかを論理的に説明し(「7つの黄金法則」としてまとめました)、後半では逆に「頭のいい人になるには、どうしたらいいか」を説明したかったのです(「5つの道具」としてまとめています)。


前半:7つの黄金法則

  • その1 とにかく反応するな
  • その2 頭のよさは、他人が決める
  • その3 人はちゃんと考えてくれてる人を信頼する
  • その4 人と闘うな、課題と闘え
  • その5 伝わらないのは、話し方ではなく考えが足りないせい
  • その6 知識はだれかのために使って初めて知性となる
  • その7 承認欲求を満たす側に回れ

後半:5つの道具

  • その1 「客観視」の思考法
  • その2 「整理」の思考法
  • その3 「傾聴」の思考法
  • その4 「質問」の思考法
  • その5 「言語化」の思考法

出典:『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)


田代


書籍では後半の「5つの道具」のことになりますね。

安達

はい。先ほど田代さんからご説明があった通り、読む・書く・聞くも含んだ5つの行為(アウトプット)のことです。これら5つの中でも、めちゃくちゃ重要なアウトプットが1つあります。それは、圧倒的に「傾聴」です

「傾聴」が極めて大切な理由

田代


「傾聴」と聞くと、「熱心に話を聞くことだ」と理解している人が多そうですよね。

安達

そうなんです。「相手を受け入れて、相手の話を最後まで聞きましょう」や「聞いている時は、相槌を打つといいですよ」とか(苦笑)。私が考える「傾聴」の真意は、聞くだけでは十分ではないのです。傾聴には本来、もっと別の目的を含んでいるからです。

例えば、コンサルティング会社の新入社員に「お客様の話を聞いてきて」と言えば、さぞかし熱心に聞いてくると思います。その結果、「熱心に聞いてきた」だけで終わってしまう人が出てきてしまう。

田代


なるほど(笑)。

安達

要するに、人間は自分が認識できたことことしか相手の言うことを聞き取れないわけです。「傾聴」とは、(相手の言っていることを)理解すること、なんです。じゃあ、なぜ聞くだけだとダメなのか? 相手は、思っていることのすべてを言葉にするわけではないからです。言われた言葉の真意も「理解」する必要があります。

田代


新人社員でなくても耳が痛くなりますね。

安達

そもそも「言葉にすることがうまくない人」っていますよね? 言われた言葉「だけ」で解釈しても、相手の正確な理解なんてできないのです

先ほどの続きをしましょう。「熱心に聞いてきました!」と言うコンサルティング会社の新人社員に「どんな話をしたの?」と聞いたら、相手の経営者が「今期は絶好調です!」と話してくれたとします。ここで、「絶好調」について深掘りしないコンサルタントが多いわけです(苦笑)。

田代


つまり、絶好調の「中身」がわからない。

安達

「絶好調」とは、売上が過去最高を記録したことを指して言っているのか? 売上ではなく利益のことなのか。仮に利益だったとして、本業の利益が好調なのか? それとも本業は低調だけれど新規事業が想定外に成果を出したのか? 深掘りしていけば、自分で勝手にパッと浮かんだ絶好調の内容とは違う、相手の経営者が伝えたかった絶好調の中身が明らかになってきます。

田代


相手の真意をつかむために、相手に一声を入れられるかと言うことですね。

安達


相手が言いたいことを正確に聞くためには、必要に応じて合いの手を入れられるか。改めて「傾聴」とは、基本的に「理解すること」に重点が置かれている行為なのです

安達さんがインタビュー時に提供した資料より。傾聴が相手を理解するための第一歩です。
「マーケの強化書」編集部が図版化して公開

安達


ここまでを整理すると、傾聴すると相手を理解できます。相手を理解できると、相手の思考が読めるようになる。すると、相手が話をしてほしいことが何かを考えられるようになります

人は指摘を受けないと治らない

安達


新入社員にありがちなのが、今話してきたような「聞いているのに、聞いていなかった」現象です。

田代

それで思ったのが、この問題は駆け出しの新入社員の問題だけではないということです。割と中堅クラスの社員というか働くビジネスパーソン誰にでも当てはまりそうに思って、聞いていました。中堅はなまじ仕事経験がありますから、聞いてきてはいるけれど、結局「自分の中の考えに置き換えて」上司に報告といったケースもあります。そうなると、いよいよ根が深いな、もう治せないところまできているぞ、とも思うのです。

安達

これはとても大事なご指摘ですね。人はちゃんと指摘されないと治りません。はっきり言われないと、人は気づきにくい。自分への疑いを習慣づけられていない人には、難しいわけです。指摘を受ける環境に身を置いている若手のうちに、(上司からの)指摘によって気づけるかどうか。自分が果たして相手の話をちゃんと聞けているのか? 指摘を受けることが少なくなる中堅という立場であれば、きちんとセルフチェックができない限り、厳しいでしょう。

田代


手遅れにならないためには、若手のうちに指摘を受けておけるか、ですね。

怒鳴られるのは嫌ですが、成長への期待や信頼がないと叱ってもらえません
指摘を受けている時はいい気分ではないですよね?(もちろん、パワハラはいけません!) でも言われているうちに、自らの欠点に気づけるかは後々のビジネス人生に大きくかかわってくる大事なことです。

書籍の裏話その1:何を読めばいい?

田代


安達さんには、今回のインタビューシリーズを通じて書籍『頭のいい人が話す前に考えていること』にまつわる話をたくさんうかがっています。せっかくですので、いくつか裏話もお聞きしたいのですが。

安達


公開できるかな? おまかせいたします(笑)。

田代

今回はおすすめ本についてです。本書の中にも書かれていましたが、読書を勧めている点です。また安達さんは、書籍関連のインタビューの中でも「小説を読むと、抽象的な主題をいかに言語化しているかを学ぶことができる」といった話もされています。そこで、「マーケの強化書」ユーザーに向けて、いくつかおすすめ本をご紹介いただきたいです。

安達

みなさんの中には、ビジネス書をよく読む人が多いのかもしれません。ビジネス書は悪くありませんが、ビジネス書だけでは得られる語彙には限りが出てきます。その点からも、(ビジネス書では得られない語彙と向き合える)小説を読むことを強くお勧めしています。

私はSFが好きなもので、ここではSF小説からいくつか挙げてみます。最近のSFだと、やはり『三体』シリーズは外せませんね。もしくは、ちょっと古いですが好きなのが『死者の代弁者』、これは傑作です。『エンダーのゲーム』というSF作品の続編にあたるので、ご興味があれば『エンダーのゲーム』から読むといいかもしれません。国内からも1作品挙げておくと、安部公房の『第四間氷期』は面白かったです

『三体』劉 慈欣
大森 望、光吉さくら、ワン・チャイ=訳/立原透耶=監修
(ハヤカワ文庫SF刊)

『死者の代弁者〔新訳版〕(上・下)』
オースン・スコット・カード
中原尚哉=訳
(ハヤカワ文庫SF刊)

『第四間氷期』
安部公房(新潮文庫刊)

安達


ここに挙げたものに限らず、SFの名作と呼ばれる作品はどれもおすすめです。気になった作品があれば、一度手に取って読んでみてほしいですね。

田代


小説の中でもとりわけSFなのは、好き以外にも何か理由があるのでしょうか?

安達

SFには、会社経営している私の立場、つまり起業家の特性に近しいものがあるのではないかと思っています。起業家は誇大妄想的なところがあって(笑)、みんなが納得する、納得させられる夢を描く立場です。抱いた夢を描かなければいけない。SFも、ある意味での夢を描いていると言えます。夢を描くだけでなく、「本当に実現するとどうなるのか」という想像力を働かせて、言語化した結晶がSF小説とも言い換えられます。

ビジネス書ばかり読むと語彙が偏るので、語彙力を高めたいために小説を読むことも勧める理由の1つです。それだけでなく、想像力が発揮された(SF)小説を読むことと、ビジネスで成功することには共通点があると思っています。

田代


「マーケの強化書」では、年に一度、おすすめの書籍を紹介していますが、ここで挙げたラインナップも大いに参考にしていただきたいですね。

参考:マーケティング関連おすすめ書籍【2023年版】

次回は・・・

ビジネス上のコミュニケーションに悩んでいる人は、日頃、話しやすい楽な相手にしかコミュニケーションをとっていませんか? 安達さんが、コミュニケーション力を鍛える方策を伝授?! それはズバリ「上司飲み」です。その真意とは?

『頭のいい人が話す前に考えていること』

安達 裕哉著

出版社 ‏ : ‎ ダイヤモンド社
発売日 ‏ : ‎ 2023/4/19
ソフトカバー ‏ : ‎ 338ページ
ISBN ‏ : ‎ 978-4478116692

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株式会社ジェネシスコミュニケーション

ジェネシスのマーケティングプロフェッショナルが編集を担当。独自の視点で厳選した実践的ナレッジをお届けいたします。

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