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バックオフィスのDXに関する事例解説「デジタル・トランスフォーメーション入門」#10

自社で実際にDXを推進するにあたって、前回までの3回で人事部門法務部門経理部門などのバックオフィスに関する部門を取り上げてきました。今回は、これらバックオフィスに関連するDXの導入事例について解説します。

目次

他部門と比べて弱い? バックオフィス部門のDX推進

バックオフィスのDX推進は、多くの企業にとっての課題です。例えば、2020年6月に行われた、アイティメディア(株)の「アフターコロナのバックオフィス業務に関する読者調査」(N=423)によると、テレワークを実施した企業の割合は「90.4%」。その中で、バックオフィス業務担当者のテレワークの割合となると「74.4%」で、他部門に比べるとバックオフィス部門担当者が出社している状況を浮き彫りにしています。

こうした状況を背景に、同調査では、バックオフィス部門に関するDXを推進するためのテクノロジーやソリューションに対して4割以上の企業が「以前と比べて、投資額を増やしたい」とも回答しています。

参考:新型コロナ対応を支えるバックオフィス部門がDXをけん引
~アフターコロナのバックオフィス業務に関する読者調査~(アイティメディア)

過去3回の連載でも触れてきた通り、定型業務を自動化し業務効率を改善できると(=バックオフィスにおけるDX推進)、経営に直結する「より高い付加価値を生み出す業務」にリソースを集中しやすくなります。

人事部門のDX推進事例

ここからはバックオフィスにおけるDX推進の成功事例を、部門ごとで見ていきましょう。まずは人事部門の事例です。

世界最大のスーパーマーケットチェーン、アメリカのWalmart(ウォルマート)は、多額のテクノロジー投資を推進し、イノベーションを続ける企業としても有名です。

テクノロジーを取り入れていく中で、従来の有人のキャッシャーからセルフサービスタイプのキャッシャーに変更し、その業務にあたっていた従業員を買い物客一人ひとりに対応する「パーソナルショッパー」として育成しています。

着目したいのが、育成方法です。VR(仮想現実)のヘッドセットを利用し、何百人にもおよぶ従業員の行動に基づき想定シナリオを作り上げ、そのシナリオに沿って買い物客や他の従業員にどのように対応するかを、VR空間を通じてトレーニング・評価を行っています。

参考:Oculus x Walmart YouTubeの動画へリンクします

結果として、従来のトレーニングに比べて従業員の満足度が30%上昇し、テストでのスコアも70%上昇。さらに、従来より10%〜15%高い知識保持率も記録しているようです。

また、同様のVRトレーニングシステムは、顧客がインターネットで買った品物を店舗で受け取るための保管機(ピックアップタワー)の操作トレーニングにも取り入れられています。従来は、人間の指導員を店舗に派遣し模擬トレーニングに丸1日かかっていましたが、移動不要でトレーニング時間をわずか15分まで短縮することに成功しています。

出典:
In the footsteps of trailblazers: How Walmart embraces Immersive Learning by Strivr testimonial
How VR is Transforming the Way We Train Associates by Walmart

法務部門のDX推進事例

次に法務部門の事例です。

日本を代表する化粧品メーカー資生堂のリーガル・ガバナンス部は、資生堂グループの各事業・機能のビジネスパートナーとしてリーガルサービスを提供する部門です。

一般的に法務部門は、日々の業務の中で参照する紙の法令集や書籍などは法令改正が行われるたびに最新版に買い替える必要があります。また、テキストをコピーできず、すべて手作業でデータを入力する必要がありました。

こうした従来のアナログな作業(契約作成や契約書審査業務)の効率化を図って、リーガル・ガバナンス部は契約書レビュー支援および条文検索ソフトウェアを導入。契約書の自動レビューを開始したわけです。

その結果、特に新規契約などにおける契約書の審査時間について、大幅な短縮に成功しました。また、ソフトウェアの条文検索機能で目的の契約条文を短時間で見つけやすくなり、条文の書き方に「悩む」時間の削減にもつなげています。

参考:「法務のプロに求められる判断」に比重を置くために―資生堂がLegalForceを導入した理由
LegalForce(リーガルフォース)- AI契約審査プラットフォーム

経理部門のDX推進事例

最後に経理部門の事例です。

中小企業向けのバックオフィスサービスなどを展開する、大阪・吹田市に本社を置くエフアンドエムは、テクノロジーを導入してDX推進。給与計算の担当者がわずか2人にもかかわらず、約500人の基本的な給与・労務管理を可能にしました。

その実態は、本社と子会社の2社について、それぞれの企業ごとに社員・アルバイトを分けて、月に合計4回の給与計算を行う必要があったようです。これらの作業を効率化するために、クラウドの給与計算サービスを導入。おかげで、給与計算とチェックの同時進行が可能となり、1カ月あたりの給与計算処理時間の半減に成功したそうです。

参考:『株式会社 エフアンドエム』ピー・シー・エー株式会社 導入事例

DX推進と言っても、先進的なVRを駆使した事例があれば、クラウド導入を含めて、さまざまなアプローチがあります。経済産業省が指摘する「2025年の壁」(※)を控える中で、重要なのは、それぞれの企業の規模や課題にあわせた対応です。

※2025年の壁……1990年代から始まったIT化によって複雑化したシステムがブラックボックス化すること。詳しくは連載「DX入門」第1回や経済産業省「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」を参照。


野澤 智朝(のざわ ともお)
現役マーケター。「ニテンイチリュウ」運営者。デジタルクリエイティブ、デジタルマーケティングに関するメディアで連載を担当してきたほか、各種記事の寄稿多数。


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株式会社ジェネシスコミュニケーション

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