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現場の声を探る 第1回 制作サイドの実務との向き合い方

時代とともにメディアや施策の数が増え、結果は数値化され評価の対象となります。各企業のデジタル担当者の多忙ぶりは、私たちマーケティング支援会社の立場にもヒシヒシと伝わります。そこで頼りになるのが、外部パートナー。みなさんは、パートナーとの関係性は良好でしょうか? ここでは、さまざまなデジタル施策や動画制作などを手がける株式会社グラスプ アット ジ エアーで代表取締役を務める南方祐紀さんの協力を得て、外部パートナーにまつわる現実や本音に迫ります。

目次

コロナ禍を経て、現場に漂う実感

田代

はじめに、現在(2023年8月)の状況の質問をさせてください。コロナ禍を経て、制作サイドの現場に変化はあったでしょうか? 南方さんの会社はさまざまな領域を手がけられているので、制作現場を一例にするといかがでしょうか?

南方

弊社の場合は、いわゆるコロナのせいで「単価が下がった」みたいなことは起きていません。展示会やイベントが開催されなくなったことを受け印刷系の案件の縮小はありましたが、その分コーポレートサイトのリニューアルなどWebサイト案件が増えました。営業活動やPR、広報など、デジタル環境を整えていなかったそれぞれの役割について、「この機会に整備したい」というご相談が今も続いています。

ただし、コロナ禍の前から感じる傾向が、シビアさです

田代


シビアさと言いますと、コストであるとか結果であるとかへの説明でしょうか。そういうのをまとめて「おまかせします」みたいな案件はあるような気がします。

南方

おっしゃる通りです。ご相談いただくお客様の多くが、見積りの各項目について「何のための作業なのか」「必要な作業なのか」「見積もりの費用が本当にかかるのか」などを追求して、よく理解した上で発注したいのかなという感覚が以前より増していますね。

田代

例えば、BtoBならWebサイトを通じてコンバージョン(資料請求、問い合わせなど)を獲得しなければならない。そうした使命を前に、クライアントの多くからは費用対効果の話が中心に展開されがちだったりしますね。

南方

費用を出したくないというより、窓口となる担当者のみなさんが、社内でより権限を持つ人に根拠のある説明をしたいということでしょうか。上手に説明できないと、その部分が丸々カットになる恐れもありますからね。それは、現場に携わる我々としても避けてほしい展開ですし。

発注主が“直接”制作会社に依頼する背景

田代


僕たちの会社は、クライアントのマーケティング施策などを含めてプロジェクトに参画する機会が多いので、クライアントから直接依頼がある案件がほとんどだったりします。お話をうかがっていると、南方さんの会社もそうしたケースが多そうですね。

南方

以前は、広告代理店などを経由した案件と直接クライアントと取り引きする案件で、おおよそ半々でしたが、今は8割ほどが直接クライアントと折衝しています。時代の流れもあるし、弊社が意図して変えてきたという背景もあります。

僕たちとしては、作るだけで終わる会社ではなく、Webサイトで言えば効果測定ができるからこそ、しっかりと成果にコミットできます。例えば、Webサイト制作後にアクセス解析に関するレポートを作成し、公開後の経過をクライアントと共有できるところまでも含めて、携わるようにしています。

田代


制作会社が直接取引する話は、他でもよく聞きます。裏返すと、制作に関わってこられた代理店にはいよいよ厳しい時代ですね。

南方

全般的に、お客様側が直接制作サイドとつながって、自社で主導して進めた方が、自分たちの意図通りになりやすいと気づき出しているのかなと感じますね。お客様は、限られた予算内で狙い通りに作りたい。もちろん、仲介役がいるからこそ実現できるならいいのです。ただし、これまで必ずしもそうでなかったところを中心に、「自社主導で作りたい」と考えるご担当者さんがますます増えそうです。

田代

たしかに、経験上つらいパターンは、代理店など仲介役の立場の方々がやろうとしていることがクライアントには「響いていないのかも?」となってしまうケースですね。制作サイドができるのは、せいぜい内部で作戦会議を開いては口を酸っぱくして、仲介役に「そうじゃないぞ!」と言い続けるしかない(苦笑)。クライアントさんがいる会議の場で後ろから刺すようなことはできませんし……。

制作パートナーは、現場の何に悩む?

南方

代理店などを経由した案件では、仲介役だけとやり取りしていれば、矛盾が出てきても割り切って作り続けるしかありません。僕たちにとって一番つらいのが、先ほどの話にもあった、お客様も見えている立場で代理店側の“外した”意向に遭遇した時です。立場上、僕たちは代理店の求めに応じる必要がある。でも応じれば、発注主の狙いからますますズレる……。

制作する立場としては、クライアントからのNGが出るとわかっていながら、仲介役の意向で制作しなければならないとしたら……、つらいです

田代


こうした場合、南方さんの会社ではどうされてきましたか?

南方

そうですね(笑)、例えばですが、捨て案を含めた複数の選択肢を示すような防御策を取ります。捨て案としているのが、元々の指示された内容をそのまま作成したものです。可能性を探っていきながら、「おそらく、こちらではないか」という代替案を用意して、建設的に前進する道を模索します。見せた方が相手も納得しやすいので。

田代

デザイン含めて施策もそうですが、本当に手段が多岐にわたる現代では、あらゆることを的確に判断するのは難しいものです。これはクライアントさんも代理店も制作サイドも同じで、万能なオールラウンダーは多くないのかなと。なので、まずは何を目的にするから、どこにフォーカスをあてるのか、提案の中でどこは変えられる部分なのかそういった細かい説明に加えて合意形成をとっていくことは大事ですね。

地方の現場で起きていること。首都圏との違いは?

田代


南方さんの会社は本社を置く東京の他に、岐阜にもオフィスを置いています。ここまで話をしてきた現場の実感みたいなことは、地方の案件だといかがでしょうか。

南方

弊社がかかわる範囲で言うなら、首都圏で出てきた傾向に対して、やや間が合ってから地方の案件にも同様の傾向が出てくる印象を持っています。

弊社は、岐阜の他に茨城県水戸市にも子会社があって、僕も取締役の1人として参画しています。岐阜に限らず地方案件を扱う機会が年々増えた立場から申すと、たしかに首都圏と比べると予算や規模感は大きな差はあります。ただし、地方案件では発注元の社長さんなど意思決定者と直接やり取りする機会が結構あったりします

つまり、案件の座組みに権限を持つ方と直接仕事を進めやすいので、やりがいや手応えも感じやすく、ビジネスとして大変なこともあるけれど、今後への大きなチャンスも感じられています。

田代


なるほど。そうかもしれません。ただ「収益とかコスト」が過ぎると、ちょっと難しそうな印象です。

南方

はい。僕たちの場合、僕自身が生まれ育った岐阜というつながりがあって、子会社も代表が水戸市の出身です。そうした背景を持ちながら、地方に何かしらの貢献をしたい気持ちが活動の源だったりします。

首都圏の場合、案件数が多いし単価も高いけれど、プレイヤーもものすごく多く、案件からあぶれてしまいます。地方は、地方にありながら大きいビジネスも存在しますし、責任者というか社長さん自らが直接話し合いに出てくる現場が珍しくありません。意図を汲んで仕事がしやすかったり、弊社の価値をダイレクトに感じてもらえます。

田代


地方を拠点にするみなさんが何かをお願いしたい時、こうした制作側の立場が受け止めている考え方を、ミスマッチにならないためにも大きな参考にしてほしいです

南方

リモート対応がしやすい現代では、地方のクライアントが、首都圏に拠点がある相手をパートナー候補にしやすくなりました。選択肢を広げて考えられるメリットとともに、本当に各地方の実情を理解してくれる相手かどうかも意識して、選んでいただけたらと思います。

次回は・・・

長年付き合いがあって信頼できるパートナーは心強いですが、毎回その相手に相談できるとは限りません。できれば、相談できる候補が複数いると、より盤石です。次回は、パートナーを開拓する(新規で頼れる制作パートナーを探す)にはどうするといいかについて、話し合います。

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株式会社ジェネシスコミュニケーション

ジェネシスのマーケティングプロフェッショナルが編集を担当。独自の視点で厳選した実践的ナレッジをお届けいたします。

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