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DXとUX、CXの違いは?「デジタル・トランスフォーメーション入門」

前回は、経済産業省のDX推進ガイドラインをもとに、DX(デジタル・トランスフォーメーション)について解説しました。今回は、よく耳にするDXと似た言葉のUX(ユーザー・エクスペリエンス)やCX(カスタマー・エクスペリエンス)についても踏まえながら、UXやCXが企業のDXにどのような役割を果たすのかを解説します。

目次

DX、UX、CXの違いを整理する

最初にDX、UX、CXそれぞれの違いを整理します。DX(デジタル・トランスフォーメーション)は、前回詳しく説明した通りです。端的に記すと「デジタル技術の導入によって、既存のビジネスのやり方を根本的に変革し、よりよい価値を顧客にもたらすこと」です。

次にUX(ユーザー・エクスペリエンス)についてです。UXを語る際に、よく混同されるのがUI(ユーザー・インターフェイス)ですが、UIとはデザインやブランド要素、タイポグラフィーなど、ユーザーが直接触れるもの(=インターフェイス)です。対してUXは、対象となるユーザーに提供される体験・経験(=エクスペリエンス)を意味します。 つまりUXとUIは不可分で、UXの一部がUIで、テクノロジーの導入成功には両者がともに重要かつ不可欠です。

UXとCXとの違いや関連性を整理する

さらにCX(カスタマー・エクスペリエンス)についてです。UXとCXは同じだと考える人をたまに見受けますが、UXとCXはそれぞれ異なる概念です。以下の図で整理しましょう。

UXとCXの概念をまとめたイメージ図

UXとCXの概念をまとめたイメージです。CXはUXよりもっと広範な概念と捉えるべきです

先述の通り、UXはあるサービスや製品を通じての直接的なユーザー体験のことです。一方でCXは、UXとともにUX以外の価格や営業体制、サポートの対応の良し悪し、リテンション(既存顧客との継続)や他者に勧めたいかどうかなど、ユーザーが企業に対する感じ方や企業の総合的な関係性を表す言葉です。

となると、CXを高めるためにはUXはもちろん、サービスや商品戦略、セールス、サポート、技術、マーケティングなど、さまざまな部署や専門性を横断した戦略や行動が必要となり、企業の組織を横断した顧客中心の戦略が必要不可欠です。その戦略に基づいて顧客の要望や動向をトラッキングし、企業が想定しているCXと、実際のCXの差を埋めていくことが求められます。

DXとCXの関連性について

UXとCXの関連性を整理したところで、次にCXとDXとの関連性を考えましょう。
アメリカのCXコンサルティング会社Walker(ウォーカー)の調査によると(※1)、2020年末までには「CXはブランドの差別化要素として、価格および製品そのものを追い抜く」とされています。
※1 CUSTOMERS 2020: A PROGRESS REPORT

同じくアメリカの調査会社Gartner(ガートナー)の調査によると(※2)、81%の企業が「今後はCXをベースとした競合環境になっていく」と考えています。
※2 Key Findings From the Gartner Customer Experience Survey

また、イギリスのコンサルティング会社PwC(プライスウォーターハウスクーパース)の調査によると(※3)、「よりよいCXに対しては最大16%のプレミアム価格を支払ってもいい」と考えており、さらに「DXにおける最も重要なポイントの一つであるデータの資産化という意味でも、63%のユーザーがよりよいCXを提供する企業に自らの情報を共有したい」と考え、「88%のユーザーがより信頼できる企業に自分の情報を共有したい」と考えています。
※3 Experience is everything : Here’s how to get it right

これらを踏まえると、従来の自社と他社との差別化要因は「サービスや商品の機能や価格」でしたが、今は「CX自体の差」がマーケットでのサービス・商品の勝敗を分ける状況なのです。そして、CXにとって重要な組織を横断した戦略や行動、部署ごとの部分最適ではなくビジネスとしての全体最適が重要という側面は、前回でも触れた通りDXの成功においても必要不可欠です。

DXとCXは両輪となって機能すべき

ここまでを踏まえたところで、最後にDXとCXを整理します。

DXへの取り組みを通じて、大幅なプロセスや組織変革を達成し、それに応じてCXを向上させることで、ユーザーによりよい価値を届けることができます。つまり、DXおよびCXが両輪となることで、ユーザーに対する新しい価値提供を推進できるのです。

DXとCXのバリューチェーン概念イメージ図

DXとCXは、顧客にとって商品やサービスをさまざまな形で連鎖的に提供する(バリューチェーン)上で、両輪で支える概念と捉えると考えやすいでしょう

改めてUX、CX、DXは、似て非なる言葉であり、マーケティングに取り組む上でそれぞれ欠かせない要素として理解すべきです。

次回は・・・

DXを進める上で出てくる課題や留意点について取り上げます。DXに取り組み、いよいよ導入しようとなった際に、ありがちな問題点やつまずく箇所、気をつけることなどを整理します。連載3回目も公開中


野澤 智朝(のざわ ともお)
現役マーケター。「ニテンイチリュウ」運営者。デジタルクリエイティブ、デジタルマーケティングに関するメディアで連載を担当してきたほか、各種記事の寄稿多数。


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